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第十一章調査員派遣
第十一章第一節(時計の間)
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第十一章
一
十一月理事会は十六日午後四時から、パリのフランス外務省「時計の間」で開催された。傍聴席を占めたのは新聞記者と各国外交団のみで、ジュネーブの議場とはガラリと趣を変えた。
この間、英国に政権交代があったため、同国代表はレディングからジョン・サイモン新外相へと変わっている。また米国は、「オブザーバー」を参加させなかった半面、チャールズ・ドーズ駐英大使をパリへ赴かせ、第三者的立場から日華両当事国代表や理事会幹部との政治協議に当たらせた。
理事会の顔ぶれも一新した。
内政の都合で十月の理事会を欠席したスペインのレルー外相が戻って来た代わりに、イタリアのグランジ外相は外遊を理由に出席せず、次席のヴィットリオ・シャロイヤ上院議員が代表に持ち上がった。今回の議事の重要性に鑑み、ドイツも外務次官のフォン・ビューロー博士を出席させるなど本腰を入れてきた。
となれば当然、当事国の日本側もテコ入れを図らない訳にはいかない。ロンドンから松平恒雄大使が、ローマからは吉田茂大使がそれぞれ出張してきて芳澤との三位一体で理事会へ臨んだ。
「余は両国代表の発言が、現在の事態を終結させるための提案にのみ限定されるよう切望する」
初日の公開理事会はブリアン議長の開会宣言が行われたのみで、わずか二十一分で閉会した。日華代表が公開の場で互いに敵愾心を煽ることのないよう、両当事国による冒頭の発言を議長が封印したのだった。
何の成果も上げられなかった十月理事会の反省を踏まえ、理事会幹部は今回の議事運営を極力公開の場から切り離そうとした。その分、舞台裏の個別交渉や「十二カ国会議」と呼ばれる秘密(非公開)理事会を通じて解決の糸口を見出そうとした。
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十一月理事会は十六日午後四時から、パリのフランス外務省「時計の間」で開催された。傍聴席を占めたのは新聞記者と各国外交団のみで、ジュネーブの議場とはガラリと趣を変えた。
この間、英国に政権交代があったため、同国代表はレディングからジョン・サイモン新外相へと変わっている。また米国は、「オブザーバー」を参加させなかった半面、チャールズ・ドーズ駐英大使をパリへ赴かせ、第三者的立場から日華両当事国代表や理事会幹部との政治協議に当たらせた。
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内政の都合で十月の理事会を欠席したスペインのレルー外相が戻って来た代わりに、イタリアのグランジ外相は外遊を理由に出席せず、次席のヴィットリオ・シャロイヤ上院議員が代表に持ち上がった。今回の議事の重要性に鑑み、ドイツも外務次官のフォン・ビューロー博士を出席させるなど本腰を入れてきた。
となれば当然、当事国の日本側もテコ入れを図らない訳にはいかない。ロンドンから松平恒雄大使が、ローマからは吉田茂大使がそれぞれ出張してきて芳澤との三位一体で理事会へ臨んだ。
「余は両国代表の発言が、現在の事態を終結させるための提案にのみ限定されるよう切望する」
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何の成果も上げられなかった十月理事会の反省を踏まえ、理事会幹部は今回の議事運営を極力公開の場から切り離そうとした。その分、舞台裏の個別交渉や「十二カ国会議」と呼ばれる秘密(非公開)理事会を通じて解決の糸口を見出そうとした。
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