風紋(Sand Ripples)~あの頃だってそうだった~

宗像紫雲

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第十五章リース=ロスの幣制改革

第十五章第十七節(バーンビー使節団2)

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                 十七

 バーンビー使節団はフランシス・バーンビー卿を団長に、チャールズ・セリグマン卿、ジュリアン・ピゴット将軍、ガイ・ローコック氏の四人からなり、満洲国顧問のアーサー・エドワーズが随行した。

 詳細な旅程には自信がないのだが、シベリア鉄道を経由して十月十日に新京へ入り、その後三週間にわたって満洲と日本各地を歴訪したようだ。十月二十三日には日本経済聯盟会の幹部らと会談し、「日英両国の商工業に重要な利害関係のある諸問題について意見を交換し、妥当なる解決を期するために東京およびロンドンにそれぞれ委員会を設置する」ことで合意した。

 同使節団は単なる民間の“利権屋”とは異なり、日英協調の復活へ向けた足掛かりをつくりたいという外交的意義を担って極東へ来た。そうは言っても“手ぶら”で帰ったのでは面目が立たない。
 それ故、団長のバーンビー卿は幾度も「何か具体的な成果を得られないものか」と懇願した。日本側も彼らの面子めんつつぶす訳にはいかないからと、折しも買収交渉中だった東支鉄道の設備替えにかかる一部を英国から調達してはどうかなど、種々の検討を重ねた。

 しかし、円の対ポンド為替が円安基調にある。例えば鉄道のレールを購入するとして、日本製ならば一トン百円のところ、英国製は一トン百五十七円かかる。これではとても採算が合わないから、期待通りの“手土産”を持たせることはできなかった。
 唯一、使節団が解散し各々貴国の途についた後も、ピゴット将軍のみが単身上海へ渡り三菱商事と鉄材二万トンの先物予約を取り付けた。

 結果から言えばバーンビー使節団はほとんど“空振り”に終った。
 それでも使節団は視察の結果を報告書にまとめ、議会へ提出した。大筋で対満洲投資の有望性を説くなど、日英親善の使節団という役割を全うした。

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