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最終話
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あれから数年、存在消去ボタンはブームを終え、今や殆ど名を聞かなくなってしまった。しかし、人々の記憶から薄れた今も、あの装置は稼動しているのかもしれない。
誰かが居なくなっている気がする。けれど、それが錯覚かどうかすら分からない。
以前葉月が語った感覚が、あの一件以降理解出来るようになった。結局、実証されず世間から消えてしまったが、僕はボタンが本物であると信じている。
因みに、存在消去ボタンを題材に書いた本は、選考を通過せず書籍化すらされなかった。完成時、既に流行が廃れ始めていた事が原因の一つだと思われる。
それと、やはり文才の問題もあるだろう。
当然、酷く落ち込み落胆した。筆を握り続けるべきか、担当に提案されたように安定した生活を手繰るか幾度と無く迷った。それを葉月に打ち明けたら、
「私は、一生懸命書いている司佐くんが好きだよ」
と、迷い無く言い放って見せた。不安定な収入でも構わない、と付け加えて。
僕は売れない物書きだ。何度も挑み、破れ、それでもまだ物語を書き続けている。
それもどれも彼女のお陰だ。それと、存在抹消ボタンのお陰でもあるかもしれない。あの一件を通じて得た物は、後々思うと大きかった。
「次はどんな話書いてるの?」
狭い部屋で、溢れ返る本を避け歩いてきた葉月が、覗き込む形で原稿用紙を見た。手に持っている珈琲の香りが心地良い。
「もう少し進んだら内容教えるよ、だからそれまで秘密」
「えー、気になるー! でも次のお話も楽しみだな。完結したら見せてね」
「辛口評価お願いしますよ、葉月先生」
「えー、出来るかなー。司佐くんの書く話、全部好きになる自信あるからなー」
零れ落ちた優しさに、堪えきれない笑みが零れた。笑顔が連鎖し、葉月も控え目な笑声をあげる。
「ありがとう」
この先何があるかは分からない。けれど、何があっても歩いてゆく。葉月と共に、歩いてゆく。
誰かが居なくなっている気がする。けれど、それが錯覚かどうかすら分からない。
以前葉月が語った感覚が、あの一件以降理解出来るようになった。結局、実証されず世間から消えてしまったが、僕はボタンが本物であると信じている。
因みに、存在消去ボタンを題材に書いた本は、選考を通過せず書籍化すらされなかった。完成時、既に流行が廃れ始めていた事が原因の一つだと思われる。
それと、やはり文才の問題もあるだろう。
当然、酷く落ち込み落胆した。筆を握り続けるべきか、担当に提案されたように安定した生活を手繰るか幾度と無く迷った。それを葉月に打ち明けたら、
「私は、一生懸命書いている司佐くんが好きだよ」
と、迷い無く言い放って見せた。不安定な収入でも構わない、と付け加えて。
僕は売れない物書きだ。何度も挑み、破れ、それでもまだ物語を書き続けている。
それもどれも彼女のお陰だ。それと、存在抹消ボタンのお陰でもあるかもしれない。あの一件を通じて得た物は、後々思うと大きかった。
「次はどんな話書いてるの?」
狭い部屋で、溢れ返る本を避け歩いてきた葉月が、覗き込む形で原稿用紙を見た。手に持っている珈琲の香りが心地良い。
「もう少し進んだら内容教えるよ、だからそれまで秘密」
「えー、気になるー! でも次のお話も楽しみだな。完結したら見せてね」
「辛口評価お願いしますよ、葉月先生」
「えー、出来るかなー。司佐くんの書く話、全部好きになる自信あるからなー」
零れ落ちた優しさに、堪えきれない笑みが零れた。笑顔が連鎖し、葉月も控え目な笑声をあげる。
「ありがとう」
この先何があるかは分からない。けれど、何があっても歩いてゆく。葉月と共に、歩いてゆく。
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