2 / 11
ご主人様に全て捧ぐ(2)
しおりを挟む
日が昇る前に起き、植物採取するところから一日は始まります。
「おはよう、篝」
「ご主人様、おはようございます! お早いですね」
隣に寄ると、風日向さまは小さく笑って下さいました。表情から滲む調子の良さに、私の頬も緩みます。
このように、調子のよい日はよく庭に来て下さるのです。
以前、風日向さまも、庭を気に入っていると仰って下さいました。季節と共に、色を変える姿がお好きなのだそうです。
実際に植物を見つめる瞳は、優しく穏やかで羨んでしまうほどでした。
「目が覚めてしまってね。相変わらず綺麗な庭だ」
「でしょう。綺麗な上、万能な植物ばかりなのです」
「篝は植物が好き?」
「好きです。ただ観賞よりも薬として好きなのかもしれません」
「そっか」
私に向いていた瞳が、苦さを持って微笑みます。微笑を目に、以前して下さった話を思い出しました。
「……お薬は苦手だと仰ってましたものね」
「うん、小さい頃からどうにもね。お薬の時間ですよーって言われると逃げたくなったよ」
今の私の技量では、どうしても苦い薬しか作れません。どうにかして飲みやすいお薬をと試行錯誤するのですが、中々上手く行かないのです。
どんな出来でも、風日向さまは飲み干して下さるのですが。
風日向さまが楽になる助けになれたなら。そう思っておりました。
「おはよう、篝」
「ご主人様、おはようございます! お早いですね」
隣に寄ると、風日向さまは小さく笑って下さいました。表情から滲む調子の良さに、私の頬も緩みます。
このように、調子のよい日はよく庭に来て下さるのです。
以前、風日向さまも、庭を気に入っていると仰って下さいました。季節と共に、色を変える姿がお好きなのだそうです。
実際に植物を見つめる瞳は、優しく穏やかで羨んでしまうほどでした。
「目が覚めてしまってね。相変わらず綺麗な庭だ」
「でしょう。綺麗な上、万能な植物ばかりなのです」
「篝は植物が好き?」
「好きです。ただ観賞よりも薬として好きなのかもしれません」
「そっか」
私に向いていた瞳が、苦さを持って微笑みます。微笑を目に、以前して下さった話を思い出しました。
「……お薬は苦手だと仰ってましたものね」
「うん、小さい頃からどうにもね。お薬の時間ですよーって言われると逃げたくなったよ」
今の私の技量では、どうしても苦い薬しか作れません。どうにかして飲みやすいお薬をと試行錯誤するのですが、中々上手く行かないのです。
どんな出来でも、風日向さまは飲み干して下さるのですが。
風日向さまが楽になる助けになれたなら。そう思っておりました。
0
あなたにおすすめの小説
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
私の夫は妹の元婚約者
彼方
恋愛
私の夫ミラーは、かつて妹マリッサの婚約者だった。
そんなミラーとの日々は穏やかで、幸せなもののはずだった。
けれどマリッサは、どこか意味ありげな態度で私に言葉を投げかけてくる。
「ミラーさんには、もっと活発な女性の方が合うんじゃない?」
挑発ともとれるその言動に、心がざわつく。けれど私も負けていられない。
最近、彼女が婚約者以外の男性と一緒にいたことをそっと伝えると、マリッサは少しだけ表情を揺らした。
それでもお互い、最後には笑顔を見せ合った。
まるで何もなかったかのように。
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
雪の日に
藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。
親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。
大学卒業を控えた冬。
私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ――
※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる