4 / 11
優しく儚いご主人様(2)
しおりを挟む
時々、私も悪い夢を見ます。幼き日の夢です。
それは必ず、別室で眠る私の耳に、物音が聞こえるところから始まりました。
覚えのない大きな音に誘われ、私は居間に向かいます。そこで私は、両親の亡骸を見るのです。血を流して重なる姿は、私の脳に焼き付きました。
私は両親が大好きでした。ですので、失った悲しみや絶望は、今でさえ私の心の臓を揺さぶります。
共にいたら、私も殺されていたのかもしれない。そんな恐怖も一緒に襲ってきました。
二つの感情に覆い被られれば、目覚める頃には夏日のようです。髪も衣服も肌に張り付き、増した重力で数分動けなくなりました。
風日向さまが拾って下さらなければ、きっと私は復讐心に焼かれていたでしょう。
もう怒っていないと言えば嘘になります。しかし今は復讐心でなく、熱に苦しむ風日向さまへの同情が生まれるのです。
「今日も良いお薬作ろう……」
*
「篝ちゃん、風日向さま先程眠られたから、お薬後で持っていってくれる?」
世話係さんに引き留められた時は、一瞬喉が絞まりました。それほど悲しげな顔をしていらっしゃったのです。
最近よく見るお顔ではあるのですが、慣れられそうにはありません。
風日向さまが、お亡くなりになる時が来る――考えたくないのに、勝手に頭に浮かんできます。
そして、まだ訪れていないにも関わらず、孤独に涙ぐみそうになるのです。
お屋敷の方々は皆お優しいですが、私の居場所は風日向さまの側にしかないのです。
それは必ず、別室で眠る私の耳に、物音が聞こえるところから始まりました。
覚えのない大きな音に誘われ、私は居間に向かいます。そこで私は、両親の亡骸を見るのです。血を流して重なる姿は、私の脳に焼き付きました。
私は両親が大好きでした。ですので、失った悲しみや絶望は、今でさえ私の心の臓を揺さぶります。
共にいたら、私も殺されていたのかもしれない。そんな恐怖も一緒に襲ってきました。
二つの感情に覆い被られれば、目覚める頃には夏日のようです。髪も衣服も肌に張り付き、増した重力で数分動けなくなりました。
風日向さまが拾って下さらなければ、きっと私は復讐心に焼かれていたでしょう。
もう怒っていないと言えば嘘になります。しかし今は復讐心でなく、熱に苦しむ風日向さまへの同情が生まれるのです。
「今日も良いお薬作ろう……」
*
「篝ちゃん、風日向さま先程眠られたから、お薬後で持っていってくれる?」
世話係さんに引き留められた時は、一瞬喉が絞まりました。それほど悲しげな顔をしていらっしゃったのです。
最近よく見るお顔ではあるのですが、慣れられそうにはありません。
風日向さまが、お亡くなりになる時が来る――考えたくないのに、勝手に頭に浮かんできます。
そして、まだ訪れていないにも関わらず、孤独に涙ぐみそうになるのです。
お屋敷の方々は皆お優しいですが、私の居場所は風日向さまの側にしかないのです。
0
あなたにおすすめの小説
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
私の夫は妹の元婚約者
彼方
恋愛
私の夫ミラーは、かつて妹マリッサの婚約者だった。
そんなミラーとの日々は穏やかで、幸せなもののはずだった。
けれどマリッサは、どこか意味ありげな態度で私に言葉を投げかけてくる。
「ミラーさんには、もっと活発な女性の方が合うんじゃない?」
挑発ともとれるその言動に、心がざわつく。けれど私も負けていられない。
最近、彼女が婚約者以外の男性と一緒にいたことをそっと伝えると、マリッサは少しだけ表情を揺らした。
それでもお互い、最後には笑顔を見せ合った。
まるで何もなかったかのように。
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
雪の日に
藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。
親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。
大学卒業を控えた冬。
私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ――
※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる