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それから私は、何度かタイムワープした。
過去か未来かはランダムで、運命が変わると針が一つ分戻ること。どちらも、三年の月日を挟んでワープしていること。
後は、回数を重ねる度、繋がれる時間が短くなることも分かった。
ある日は、今後起こる大失敗を事前に尋ねておき、回避に努めた。逆に、両親との大喧嘩を忠告し、避けるよう頼んだ時もあった。
また、ある日は貯金を極力残すよう勧めた。勉強も頑張るよう促した。
時々は、アカネの為に未来を先読みした事もあった。
そんなこんなで過去と未来を行き来し、私の運命は大きく変わった。
*
「親さん説得できそうなんだって? あ、ヒロからLIMEだ」
新しい彼氏をゲットしたアカネが言う。運命を操作したなんて知ったら驚くだろうな。
「うん、ほぼ承諾貰ったみたいなもん」
進路についても、様々な忠告や薦めを施した結果、驚くほど簡単に話が通るようになった。まだ完全に許されてはいないが、それも時間が解決するだろう。
今、季節は冬だ。願書も提出し、入試日を待っている状態である。だから、親との勝負には勝ったも同然だった。
壊れた時計が、こんな幸運をつれて来るとは思ってもみなかった。
*
目の前には、あの時計がある。しかし、長針は十二の右隣を差している。時刻にして、三時一分――そう、ラストにまで迫っていた。
親を納得させるとの目的は果たした。あとは合格するだけだ。
だから、結果にもよるが、不合格だった場合、試験範囲を教えてしまうことに最後の一回を使う積もりだ。それで、無事に合格してハッピーという計算である。
緊張と高揚感を胸に、試験日を待った。
試験日が過ぎ、更に一週間ほどが過ぎた。高校から届いた合否通知を前に、深呼吸する。
私の横には、すっかり折れた両親がおり、固唾を飲んで見守っていた。
鋏を通し、封筒を開封。逸る心と裏腹に、ゆっくりと引き出す。
「やったぁ!」
そこには〝合格〟の文字があった。タイムワープしなくても、最後は自分の力で掴み取れたのだ。
「おめでとう、イチカ」
左右から、祝詞が聞こえてきた。完全に認められたと知り、嬉しさ相まって涙が溢れる。
きっと、時計が壊れたのは、私に夢を掴ませる為だったんだ。その為に、神さまが特別な力をくれたんだ。
――ラスト、どう使おうかな。
*
「――きて、起きて、イチカ起きて!」
どこからか、声が聞こえた。
眠気と戦い目を開ける。すると、未来の私がいた。現実での目覚めと酷似していたことで、絶句してしまった。
「やっと起きた……時間がないの。聞いて」
未来の私は、険しい顔付きでこちらを覗き込んでいる。泣き腫らした後のように、瞳が腫れていた。
「え、何。今何時。てか、こういうパターンもあるの」
時計を見ると、時刻はやはり三時を指していた。
「大切なこと言うよ」
「急だね!?」
「絶対のお願い」
未来の私は、明らかに焦っていた。今までにない様子は、緊急事態を悟らせる。
「……分かった、聞く」
目的は達成しているし、最後くらい耳を傾けるのも良いだろう――と思ったのも束の間、
「美容学校に進学しないで。立ち直れないような絶望的な出来事が起こってしまうから。お願い、無くすにはそうするしかないの!」
「えっ、何が起こるの!?」
「それは――」
重要な部分を待たずして、夢は幕を閉じた。
そのまま目覚めた私は、ただ茫然とした。
過去か未来かはランダムで、運命が変わると針が一つ分戻ること。どちらも、三年の月日を挟んでワープしていること。
後は、回数を重ねる度、繋がれる時間が短くなることも分かった。
ある日は、今後起こる大失敗を事前に尋ねておき、回避に努めた。逆に、両親との大喧嘩を忠告し、避けるよう頼んだ時もあった。
また、ある日は貯金を極力残すよう勧めた。勉強も頑張るよう促した。
時々は、アカネの為に未来を先読みした事もあった。
そんなこんなで過去と未来を行き来し、私の運命は大きく変わった。
*
「親さん説得できそうなんだって? あ、ヒロからLIMEだ」
新しい彼氏をゲットしたアカネが言う。運命を操作したなんて知ったら驚くだろうな。
「うん、ほぼ承諾貰ったみたいなもん」
進路についても、様々な忠告や薦めを施した結果、驚くほど簡単に話が通るようになった。まだ完全に許されてはいないが、それも時間が解決するだろう。
今、季節は冬だ。願書も提出し、入試日を待っている状態である。だから、親との勝負には勝ったも同然だった。
壊れた時計が、こんな幸運をつれて来るとは思ってもみなかった。
*
目の前には、あの時計がある。しかし、長針は十二の右隣を差している。時刻にして、三時一分――そう、ラストにまで迫っていた。
親を納得させるとの目的は果たした。あとは合格するだけだ。
だから、結果にもよるが、不合格だった場合、試験範囲を教えてしまうことに最後の一回を使う積もりだ。それで、無事に合格してハッピーという計算である。
緊張と高揚感を胸に、試験日を待った。
試験日が過ぎ、更に一週間ほどが過ぎた。高校から届いた合否通知を前に、深呼吸する。
私の横には、すっかり折れた両親がおり、固唾を飲んで見守っていた。
鋏を通し、封筒を開封。逸る心と裏腹に、ゆっくりと引き出す。
「やったぁ!」
そこには〝合格〟の文字があった。タイムワープしなくても、最後は自分の力で掴み取れたのだ。
「おめでとう、イチカ」
左右から、祝詞が聞こえてきた。完全に認められたと知り、嬉しさ相まって涙が溢れる。
きっと、時計が壊れたのは、私に夢を掴ませる為だったんだ。その為に、神さまが特別な力をくれたんだ。
――ラスト、どう使おうかな。
*
「――きて、起きて、イチカ起きて!」
どこからか、声が聞こえた。
眠気と戦い目を開ける。すると、未来の私がいた。現実での目覚めと酷似していたことで、絶句してしまった。
「やっと起きた……時間がないの。聞いて」
未来の私は、険しい顔付きでこちらを覗き込んでいる。泣き腫らした後のように、瞳が腫れていた。
「え、何。今何時。てか、こういうパターンもあるの」
時計を見ると、時刻はやはり三時を指していた。
「大切なこと言うよ」
「急だね!?」
「絶対のお願い」
未来の私は、明らかに焦っていた。今までにない様子は、緊急事態を悟らせる。
「……分かった、聞く」
目的は達成しているし、最後くらい耳を傾けるのも良いだろう――と思ったのも束の間、
「美容学校に進学しないで。立ち直れないような絶望的な出来事が起こってしまうから。お願い、無くすにはそうするしかないの!」
「えっ、何が起こるの!?」
「それは――」
重要な部分を待たずして、夢は幕を閉じた。
そのまま目覚めた私は、ただ茫然とした。
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