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第二十六話
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――――お茶会は大成功だ。
あの後、ヌタの呼びかけもあり、数匹の動物たちがオオカミ少年と友だちになってくれた。
みんなと友だちになる事はできなかったが、数匹の友だちを作ってあげることは出来た。
それだけで、赤ずきんは大喜びだった。
「嬉しそうね、赤ずきん」
「嬉しいわよ、おばあさんもとっても嬉しそうね」
いつもみたいにお家でお茶をのみながら、互いに顔を見合わせてふふふと笑う。
目の前のローズミルクティーの甘い香りを嗅ぎながら、赤ずきんはおばあさんのしてくれた昔話を思い出していた。
「おばあさん、あの話ってどうなったの?」
「…あの話って、オオカミの話?」
「うん、おばあさんのために悪いことしちゃったってオオカミの話。そのオオカミってその後どうなったの?」
赤ずきんは、少し気になっていた。
今までぶきみの森でみたオオカミは、あのオオカミ少年一匹だけだ。
それにそのオオカミ少年も、仲間の話はしなかった。
「さぁ、それは分からないのよ、ずっと昔の話だからねぇ…。本当にどうなったのかしらね…?」
おばあさんは、悲しげに笑った。
赤ずきんは、悲しく笑うおばあさんの気持ちが何と無く分かってしまって、話はそれで止めにした。
◇
オオカミ少年は、森にいた。星の光が幾つも、キラキラと地上を照らしてくれる場所だ。
お茶会でも使った切り株の椅子に座って、夜の空を見つめる。
「オオカミー、まだここに居たの?」
空から降りてきたのは、カナだった。頭にぽふっと降り立つ。
「うん、星きれいだなーって思って」
「もしかして見たこと無かったの?」
「ううん、見たことはあった」
けれど、こんなに広い場所で、こんなにきれいな星空を見たのは初めてだった。
いつもは生い茂った木にじゃまされて、よく見えなかったのだ。
「これも赤ずきんのお陰だね~」
オオカミは、癖であるひとりごとをぽつりと零す。
「ちゃんとお礼言った?」
だがカナが答えたため、それは会話になった。
オオカミ少年は声が聞こえたことに驚いて、瞳をまん丸にきらめかせてから嬉しそうに笑った。
赤ずきんが、一人ぼっちを退治してくれた。
素直になって良かった。本当に良かった。
「じゃあ、私は巣に戻るね」
「うん、またねー」
カナを見送るとオオカミ少年は、切り数を下りて寝転がり、また星空を見上げ始めた。
「そう言えば、今日は赤ずきんに会わなかったなー」
オオカミ少年は今日一日、新しい友だちに連れられて色々な場所を見て回っていた。
だからか、赤ずきんの姿はチラッとさえ見ていない。
「………ちょっと、さみしいなぁ…」
勝手に口から零れた言葉に、オオカミ少年は首をかしげていた。
ずっと欲しかった友だちが出来たのに、なんだかまだぽっかりと心に穴があいているみたいだ。
けれど、どうすれば埋まるのか全然分からない。
オオカミ少年はふしぎな気持ちに、うーんと困った鳴き声をあげた。
◇
赤ずきんも、窓から星を見つめていた。ベッドにもぐり灯りを消して見ると、輝きが増して見える。
今頃あの子、楽しくやっているかしら。
どうか、ずっと仲良くしていけますように。
赤ずきんはキラキラとまたたく星々に、そっとお願い事をした。
あの後、ヌタの呼びかけもあり、数匹の動物たちがオオカミ少年と友だちになってくれた。
みんなと友だちになる事はできなかったが、数匹の友だちを作ってあげることは出来た。
それだけで、赤ずきんは大喜びだった。
「嬉しそうね、赤ずきん」
「嬉しいわよ、おばあさんもとっても嬉しそうね」
いつもみたいにお家でお茶をのみながら、互いに顔を見合わせてふふふと笑う。
目の前のローズミルクティーの甘い香りを嗅ぎながら、赤ずきんはおばあさんのしてくれた昔話を思い出していた。
「おばあさん、あの話ってどうなったの?」
「…あの話って、オオカミの話?」
「うん、おばあさんのために悪いことしちゃったってオオカミの話。そのオオカミってその後どうなったの?」
赤ずきんは、少し気になっていた。
今までぶきみの森でみたオオカミは、あのオオカミ少年一匹だけだ。
それにそのオオカミ少年も、仲間の話はしなかった。
「さぁ、それは分からないのよ、ずっと昔の話だからねぇ…。本当にどうなったのかしらね…?」
おばあさんは、悲しげに笑った。
赤ずきんは、悲しく笑うおばあさんの気持ちが何と無く分かってしまって、話はそれで止めにした。
◇
オオカミ少年は、森にいた。星の光が幾つも、キラキラと地上を照らしてくれる場所だ。
お茶会でも使った切り株の椅子に座って、夜の空を見つめる。
「オオカミー、まだここに居たの?」
空から降りてきたのは、カナだった。頭にぽふっと降り立つ。
「うん、星きれいだなーって思って」
「もしかして見たこと無かったの?」
「ううん、見たことはあった」
けれど、こんなに広い場所で、こんなにきれいな星空を見たのは初めてだった。
いつもは生い茂った木にじゃまされて、よく見えなかったのだ。
「これも赤ずきんのお陰だね~」
オオカミは、癖であるひとりごとをぽつりと零す。
「ちゃんとお礼言った?」
だがカナが答えたため、それは会話になった。
オオカミ少年は声が聞こえたことに驚いて、瞳をまん丸にきらめかせてから嬉しそうに笑った。
赤ずきんが、一人ぼっちを退治してくれた。
素直になって良かった。本当に良かった。
「じゃあ、私は巣に戻るね」
「うん、またねー」
カナを見送るとオオカミ少年は、切り数を下りて寝転がり、また星空を見上げ始めた。
「そう言えば、今日は赤ずきんに会わなかったなー」
オオカミ少年は今日一日、新しい友だちに連れられて色々な場所を見て回っていた。
だからか、赤ずきんの姿はチラッとさえ見ていない。
「………ちょっと、さみしいなぁ…」
勝手に口から零れた言葉に、オオカミ少年は首をかしげていた。
ずっと欲しかった友だちが出来たのに、なんだかまだぽっかりと心に穴があいているみたいだ。
けれど、どうすれば埋まるのか全然分からない。
オオカミ少年はふしぎな気持ちに、うーんと困った鳴き声をあげた。
◇
赤ずきんも、窓から星を見つめていた。ベッドにもぐり灯りを消して見ると、輝きが増して見える。
今頃あの子、楽しくやっているかしら。
どうか、ずっと仲良くしていけますように。
赤ずきんはキラキラとまたたく星々に、そっとお願い事をした。
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