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第二十六話

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 ――――お茶会は大成功だ。
 あの後、ヌタの呼びかけもあり、数匹の動物たちがオオカミ少年と友だちになってくれた。
 みんなと友だちになる事はできなかったが、数匹の友だちを作ってあげることは出来た。
 それだけで、赤ずきんは大喜びだった。

「嬉しそうね、赤ずきん」
「嬉しいわよ、おばあさんもとっても嬉しそうね」

 いつもみたいにお家でお茶をのみながら、互いに顔を見合わせてふふふと笑う。
 目の前のローズミルクティーの甘い香りを嗅ぎながら、赤ずきんはおばあさんのしてくれた昔話を思い出していた。

「おばあさん、あの話ってどうなったの?」
「…あの話って、オオカミの話?」
「うん、おばあさんのために悪いことしちゃったってオオカミの話。そのオオカミってその後どうなったの?」

 赤ずきんは、少し気になっていた。
 今までぶきみの森でみたオオカミは、あのオオカミ少年一匹だけだ。
 それにそのオオカミ少年も、仲間の話はしなかった。

「さぁ、それは分からないのよ、ずっと昔の話だからねぇ…。本当にどうなったのかしらね…?」

 おばあさんは、悲しげに笑った。
 赤ずきんは、悲しく笑うおばあさんの気持ちが何と無く分かってしまって、話はそれで止めにした。



 オオカミ少年は、森にいた。星の光が幾つも、キラキラと地上を照らしてくれる場所だ。
 お茶会でも使った切り株の椅子に座って、夜の空を見つめる。

「オオカミー、まだここに居たの?」

 空から降りてきたのは、カナだった。頭にぽふっと降り立つ。

「うん、星きれいだなーって思って」
「もしかして見たこと無かったの?」
「ううん、見たことはあった」

 けれど、こんなに広い場所で、こんなにきれいな星空を見たのは初めてだった。
 いつもは生い茂った木にじゃまされて、よく見えなかったのだ。

「これも赤ずきんのお陰だね~」

 オオカミは、癖であるひとりごとをぽつりと零す。

「ちゃんとお礼言った?」

 だがカナが答えたため、それは会話になった。
 オオカミ少年は声が聞こえたことに驚いて、瞳をまん丸にきらめかせてから嬉しそうに笑った。

 赤ずきんが、一人ぼっちを退治してくれた。
 素直になって良かった。本当に良かった。

「じゃあ、私は巣に戻るね」
「うん、またねー」

 カナを見送るとオオカミ少年は、切り数を下りて寝転がり、また星空を見上げ始めた。

「そう言えば、今日は赤ずきんに会わなかったなー」

 オオカミ少年は今日一日、新しい友だちに連れられて色々な場所を見て回っていた。
 だからか、赤ずきんの姿はチラッとさえ見ていない。

「………ちょっと、さみしいなぁ…」

 勝手に口から零れた言葉に、オオカミ少年は首をかしげていた。
 ずっと欲しかった友だちが出来たのに、なんだかまだぽっかりと心に穴があいているみたいだ。

 けれど、どうすれば埋まるのか全然分からない。
 オオカミ少年はふしぎな気持ちに、うーんと困った鳴き声をあげた。



 赤ずきんも、窓から星を見つめていた。ベッドにもぐり灯りを消して見ると、輝きが増して見える。
 今頃あの子、楽しくやっているかしら。

 どうか、ずっと仲良くしていけますように。
 赤ずきんはキラキラとまたたく星々に、そっとお願い事をした。
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