9 / 9
ダークヒーローの遺言3
しおりを挟む
あの判断が正しかったのか、今でも分からない。恐らく答えは一生出ないだろう。
明人と夏樹、両方とも救う手だてがあったのではと、今でも戻れない時間に囚われている。
そしてもう一つ、あの日から続いている迷いもある。それは、真実を夏樹に告げるか否かについてだ。
後日夏樹に聞いた話から、あの時は聞こえなかった会話の全貌が明らかになった。明人の遺した台詞の意味も、その時になってはっきりと理解した。
衝撃の内容だった割に、夏樹から怒りは見えなかった。かと言って、許している様子もない。
ただただ、明人の存在に触れないよう振る舞っている様子だけが見てとれた。
夏樹の感情がどこに向いていようと、二人が嘘の出来事のせいで仲違いしたことに変わりはない。それを補正するか否か迷っているのだ。
いや、メリットを比較しても、告白した方が良いとは思う。
だが、告げられた言葉が――最後の最後、命を振り絞ってまで遺した遺言が――隠し通せとの一言だったのだ。言える訳がなかった。
いつか、答えが出る日は来るだろうか。透明な結末を想像しては、深い迷いの海でもがく。
だが、これはきっと俺に課せられた罰だ。夏樹と明人を、悩ませ苦しませた分の罰なのだ。
「兄さん、今年は山に行くのなんてどうかな」
笑顔で俺を見る夏樹の前、ひっそりと遺言を抱く。
明人と夏樹、両方とも救う手だてがあったのではと、今でも戻れない時間に囚われている。
そしてもう一つ、あの日から続いている迷いもある。それは、真実を夏樹に告げるか否かについてだ。
後日夏樹に聞いた話から、あの時は聞こえなかった会話の全貌が明らかになった。明人の遺した台詞の意味も、その時になってはっきりと理解した。
衝撃の内容だった割に、夏樹から怒りは見えなかった。かと言って、許している様子もない。
ただただ、明人の存在に触れないよう振る舞っている様子だけが見てとれた。
夏樹の感情がどこに向いていようと、二人が嘘の出来事のせいで仲違いしたことに変わりはない。それを補正するか否か迷っているのだ。
いや、メリットを比較しても、告白した方が良いとは思う。
だが、告げられた言葉が――最後の最後、命を振り絞ってまで遺した遺言が――隠し通せとの一言だったのだ。言える訳がなかった。
いつか、答えが出る日は来るだろうか。透明な結末を想像しては、深い迷いの海でもがく。
だが、これはきっと俺に課せられた罰だ。夏樹と明人を、悩ませ苦しませた分の罰なのだ。
「兄さん、今年は山に行くのなんてどうかな」
笑顔で俺を見る夏樹の前、ひっそりと遺言を抱く。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
この作品の感想を投稿する
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる