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第十七話
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目覚めは、とても不快だった。今も手に残る、数々の思い出したくもない感覚と、音と声とが鮮明に蘇ってくる。
あの時、大切な人を殺してしまった悔しさと、その命を無駄にしてしまった罪悪感とが胸を締め付けた。
でも、プリアの望みは叶えたんだ。きっとそれで良かったんだ。
リガの望みも、叶えるべきだったのかな。
「最近ずっとお疲れですね」
グロードから声をかけてきた事が意外で、シュガは少しだけ黙り込んでしまった。
「…そう見えますか、駄目ですね」
「いいえ」
言いたい事が伝わらなかったからなのか、グロードが少し落ち込んだように見えた。気がするだけかもしれないが。
「…この力は…私は無力だと時々思うのです。こんな力、あってもなくても同じだったのではないかと…」
なぜ自分は、こんな弱音をグロードに零しているのだろうか。自分でも分からない。
ただ、空っぽの筒から抜けてゆくように言葉が溢れた。
「貴方は無力ではありません、その力も実際人を治しています」
優しさは納得に至らず、シュガはただ微笑み返した。
グロードの真剣な眼差しが、今日はとても鋭く見えた。
それから、また何日かしても、状態は一向に変化を見せなかった。戦況も、リガとの関係も。
知った病院が相次いで襲撃にあったというのに、この病院には全く襲われる気配が無い。その為か、また一段と雰囲気が緩和された気がする。
シックも、暗い事は言わずお茶目に笑っているし、レイギアも前と全く変わらず棘を放ちに来る。
そうだ、まだ何もないから、良いじゃないか。シュガは数日の内にそんな結論を出していた。
あの時、大切な人を殺してしまった悔しさと、その命を無駄にしてしまった罪悪感とが胸を締め付けた。
でも、プリアの望みは叶えたんだ。きっとそれで良かったんだ。
リガの望みも、叶えるべきだったのかな。
「最近ずっとお疲れですね」
グロードから声をかけてきた事が意外で、シュガは少しだけ黙り込んでしまった。
「…そう見えますか、駄目ですね」
「いいえ」
言いたい事が伝わらなかったからなのか、グロードが少し落ち込んだように見えた。気がするだけかもしれないが。
「…この力は…私は無力だと時々思うのです。こんな力、あってもなくても同じだったのではないかと…」
なぜ自分は、こんな弱音をグロードに零しているのだろうか。自分でも分からない。
ただ、空っぽの筒から抜けてゆくように言葉が溢れた。
「貴方は無力ではありません、その力も実際人を治しています」
優しさは納得に至らず、シュガはただ微笑み返した。
グロードの真剣な眼差しが、今日はとても鋭く見えた。
それから、また何日かしても、状態は一向に変化を見せなかった。戦況も、リガとの関係も。
知った病院が相次いで襲撃にあったというのに、この病院には全く襲われる気配が無い。その為か、また一段と雰囲気が緩和された気がする。
シックも、暗い事は言わずお茶目に笑っているし、レイギアも前と全く変わらず棘を放ちに来る。
そうだ、まだ何もないから、良いじゃないか。シュガは数日の内にそんな結論を出していた。
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