どこかの誰か、最高の最期に感謝します

有箱

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残酷な世界に殺される

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 独房に戻った時、僕は呆然としていた。以前から想定はしており、シュミレーションまでしていたのに。
 
 ――僕は、死刑になる。
 
 今日、それを知った。とは言え、誰かから知らされた訳でも伝え聞いたわけでもない。この国独自のシステムが、勝手に悟らせただけだ。
 
 この国には、死刑囚による臓器提供システムがある。ただ処刑するより、価値があるとして導入された。死刑方法の一つであるため、健康体なら強制的にこの方法で処刑される。
 内容はシンプルで、心臓を初めとする健康な臓器を摘出し、それによって死をもたらすのだ。

 臓器を受ける側も、犯罪者の臓器を使えば、手術費用が安くなるとのメリットがある。ゆえに、金欠が理由で手術できなかった多くの人間がシステムに頼ることとなった。
 無論、犯罪者のものなど使いたくもないとの意見も多いが。
 
 僕は今日、命令で精密な検査を受けた。結果はどうあれ、この時点で死刑は確実だ。

 生まれ落ちてたったの二十五年、結局僕は、狭い世界に閉じ込められたまま死んで行く。綺麗なものも温かいものも、何一つ知らずに。残酷な世界に殺される。
 
  ああ、やっぱり神なんていなかった。



 自らの悪行に対して、激しく後悔はしている。犯した罪を思うと、時々息苦しくなるほどには。

 僕の罪状は殺人だ。それも無差別殺人である。衝動的な殺意は、罪のない何人もの人間を地獄へ突き落とした。
 理由がなかった訳ではないが、口にしたところで肯定など得られないちっぽけなものだろう。

 それでも、そんな悪人でも、死にたくないと思うのはいけないことなのだろうか。

 ――なんて、許されないに決まっている。罪人は罪人らしく恐怖を胸に死ね。きっと、それが世間の声だ。
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