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冷たすぎる冬の朝に【1/3】
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すっかり眠り込んでいたらしい。私を起こしたのは、エフでもジルでもなく、重みと寒気だった。積まれた防寒着も、すっかり力を無くしている。
これが低温の痛さなのか、全身も酷く痛んだ。体をほぐせる空間はなく、すぐには起き上がれない。増えた薪と火を眺めながら、呆としてしまった。
それにしても寒い。あまりにも寒すぎる。二人の名を呼ぼうとして、どこかから声が響いてきた。
「しっかり朝になったな。行けるか、ジル」
声は重みを含んでいる。続くジルの声も、どこか苦しそうだった。
「……うん、行こう。前から決めてたことだ、怖くないよ」
掴めない会話に混乱してしまう。ただ、良くない何かがあるとだけは、はっきり察知できた。高揚とは違う胸の高鳴りが、自然と動作を無音に近づける。だが。
「アジュには悪いけど、仕方がないことだからな」
自分にも深い関わりがあると知り、ギアが上がる。計画一つないまま声の方へ走った。少し動いただけで息が上がる。
「ど、どうしたの……どこに行くの……」
夢見た朝は、すっかり砕け散っていた。銀世界に立った二人は、冷たく私を直視していた。
「起きてしまったか……まぁ、火があっても寒いからな。調子はどうだ? 体、辛いだろ」
確かめられ、唖然とする。確かに体は冷え切っており、その上で熱く燃えている。軋むような痛みもあるし、好調とは言えない。
「すぐ分かることだから言っておく。アジュは今から人質だ」
「えっ」
「分からないって顔してるな。お気楽なことだ」
言葉の表面だけは、悩まずとも読み解けた。しかし、親友の豹変が飲み込めず、思案が先に進まない。エフは呆れた様子で声を重ねた。
これが低温の痛さなのか、全身も酷く痛んだ。体をほぐせる空間はなく、すぐには起き上がれない。増えた薪と火を眺めながら、呆としてしまった。
それにしても寒い。あまりにも寒すぎる。二人の名を呼ぼうとして、どこかから声が響いてきた。
「しっかり朝になったな。行けるか、ジル」
声は重みを含んでいる。続くジルの声も、どこか苦しそうだった。
「……うん、行こう。前から決めてたことだ、怖くないよ」
掴めない会話に混乱してしまう。ただ、良くない何かがあるとだけは、はっきり察知できた。高揚とは違う胸の高鳴りが、自然と動作を無音に近づける。だが。
「アジュには悪いけど、仕方がないことだからな」
自分にも深い関わりがあると知り、ギアが上がる。計画一つないまま声の方へ走った。少し動いただけで息が上がる。
「ど、どうしたの……どこに行くの……」
夢見た朝は、すっかり砕け散っていた。銀世界に立った二人は、冷たく私を直視していた。
「起きてしまったか……まぁ、火があっても寒いからな。調子はどうだ? 体、辛いだろ」
確かめられ、唖然とする。確かに体は冷え切っており、その上で熱く燃えている。軋むような痛みもあるし、好調とは言えない。
「すぐ分かることだから言っておく。アジュは今から人質だ」
「えっ」
「分からないって顔してるな。お気楽なことだ」
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