26 / 122
10月14日
しおりを挟む
[10月14日、金曜日]
長かった地獄も、残す所あと2日になった。しかしその二日が長いのだ。それに、明ければまた、規則正しく日々は繰り返される。
月裏は電車に揺られながら、考えていた。
車両の中は空っぽで、人の姿はあまり見えない。昼間はこの電車も乗客を満員にして走っているらしいが、想像できない位すっからかんな車内しか見た事がない。
――――世界は狭い。
そんな在り来りな結論を見出した所で、駅に電車が停車した。
譲葉との時間に、変化は無い。月裏は前以上に笑顔を意識し、様子を窺ってはいるのだが、譲葉は変化を見せない。
元々、やってきた頃から表情が乏しく覚悟はしていたが、一度変化を見てしまうとどこか寂しくなる。
どう頑張れば譲葉は報われ、心を許そうと考えてくれるのだろう。
月裏は短い休憩時間を駆使し、必死に考えた。
しかし帰宅しても、あるのは平凡すぎる光景だ。簡単に想像できて、しかも違わない光景。
「…譲葉君、欲しい物とか有ったら言ってね?」
月裏は休憩中に導いた、一つ目の答えを早速口にしてみた。
まず身辺が満たされないと、生活に充実感は抱けないとの答えに至ったのだ。
かといい、譲葉の欲する物がよく分からず、直接尋ねるしか方法が思いつかなかった。
譲葉はと言うと、少し困っているように見える。
本当に欲が無く、欲しい物が思いつかず困っているのか、遠慮しているだけなのか、掴めない状態では補足の言葉は思いつかない。
しかし若者が、何も欲していないなどとは考えにくいだろう。
「……分かった」
「今日も遅くまで起きててくれてありがとう、おやすみ」
月裏は敢えて、質問を与えたままで話を区切った。
「おやすみ、月裏さん」
譲葉は何時も通りの背中で、変わらない速度で、遠ざかっていった。
長かった地獄も、残す所あと2日になった。しかしその二日が長いのだ。それに、明ければまた、規則正しく日々は繰り返される。
月裏は電車に揺られながら、考えていた。
車両の中は空っぽで、人の姿はあまり見えない。昼間はこの電車も乗客を満員にして走っているらしいが、想像できない位すっからかんな車内しか見た事がない。
――――世界は狭い。
そんな在り来りな結論を見出した所で、駅に電車が停車した。
譲葉との時間に、変化は無い。月裏は前以上に笑顔を意識し、様子を窺ってはいるのだが、譲葉は変化を見せない。
元々、やってきた頃から表情が乏しく覚悟はしていたが、一度変化を見てしまうとどこか寂しくなる。
どう頑張れば譲葉は報われ、心を許そうと考えてくれるのだろう。
月裏は短い休憩時間を駆使し、必死に考えた。
しかし帰宅しても、あるのは平凡すぎる光景だ。簡単に想像できて、しかも違わない光景。
「…譲葉君、欲しい物とか有ったら言ってね?」
月裏は休憩中に導いた、一つ目の答えを早速口にしてみた。
まず身辺が満たされないと、生活に充実感は抱けないとの答えに至ったのだ。
かといい、譲葉の欲する物がよく分からず、直接尋ねるしか方法が思いつかなかった。
譲葉はと言うと、少し困っているように見える。
本当に欲が無く、欲しい物が思いつかず困っているのか、遠慮しているだけなのか、掴めない状態では補足の言葉は思いつかない。
しかし若者が、何も欲していないなどとは考えにくいだろう。
「……分かった」
「今日も遅くまで起きててくれてありがとう、おやすみ」
月裏は敢えて、質問を与えたままで話を区切った。
「おやすみ、月裏さん」
譲葉は何時も通りの背中で、変わらない速度で、遠ざかっていった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる