フレンドテロリスト

有箱

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 夜七時五十五分、帝はある場所に向かっていた。忠告を破るのは心苦しいが、このまま拱いていても状況は悪くなるだけだろう。

 今宵は天が味方しているのか、暗くて月明かりさえも力を及ぼさない。目の前に続いている真っ暗な道を、夜目だけを駆使して歩いてゆく。
 そう、今歩いている場所は裏道だった。白都が危害を加えられた場所だ。
 電話が来てから緊急性を感じ、突き止めるため昨日今日と相次いで来ている。
 ポケットには、録音機と化した携帯と、武器代わりの大きなカッターナイフ、鋭い鋏などを潜ませている。
 迎え撃ち、返り討ちにしてやろうといった魂胆だ。これだけ暗く、しかも仮面を装着していれば、見間違えることはないだろうし。

 背後を窺わず、前だけ見てゆっくり歩いていると、予想通りヘリウムガスの効いた不気味な声がした。

***

 その頃、白都はロッカールームで着替えていた。後ろでは和月が、持参した飲み物を飲んでいる。

「……大丈夫? 顔色悪いけど」
「あぁ、はい……ちょっと足痛いだけです」
「……そう。ごめんね、休ませてあげられなくて……」
「……いえ、寧ろこんな状態でも使ってもらえるなんて感謝ですよ」

 欠勤を望む反面、借金返済額を取得するため働かなければとは思っていた。だからこれは事実だ。

「……ねぇ、白都くんにとってはさ……友だちってどういう存在?」

 突然切り出された問いに、白都は和月を振り向き見たが、ロッカーの関係で背を向けており顔は見えなかった。

「……急にどうしたんですか?」

 置かれている状況に、どこと無く重なる問いが疑いを上昇させる。
 そんなはずは無いのに、とまた嫌気が差した。

「……いや、大した理由は無いんだけど……」
「……大事ですよ? 相澤さんは……?」
「……俺はそうだなぁ……よく分からないや。人って難しいもんね」

 曖昧な割にあっさりとした回答を落として、和月は更衣室を去った。
 去り際残した気を付けてね”の言葉が、普段より際立って耳に残った。

***

 いつどこで、どのタイミングで御面が現れるのか。今日はどんな言葉を吐き、何をされるのか。
 竦む足で、一歩ずつ家へと近付いてゆく。
 だが、裏道へは近付く事さえ出来なくなっており、白都は自然と表通りへと向かっていた。

 逃亡したと見做されたらどうしよう。との重圧を抱きながらも、むざむざと命を危険に晒すなど出来るわけがない。
 ――だが、白都の葛藤を他所に、その日御面が現れることは無かった。
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