フレンドテロリスト

有箱

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 帝の家までの階段が妙に長く感じる。心の底から真実を願っているのに、どこかではまだ知るのを否定している部分がある。
 これでまた、誰かを失ってしまうことになるだろう。“最愛の友人”としての誰かが消えることに。思い出が全て濁り、苦いものとして刻まれることにも。

 白都は俯きながら、一歩一歩確かに地を踏みしめた。御面と遭遇した頃は、正体を暴けるだなんて微塵も思っていなかった。
 だが今、事は終わりへと向かっている――多分。

 白都は凍えたままの指先を伸ばし、呼び鈴を押す。家の中で鳴る、チャイムの音が微かに耳に届いた。
 どきどきと鼓動が鳴っている。息を殺しているからか、よく聞こえる。
 無音の中で鼓動だけが聞こえ、うるさいくらいだ。

 ――それから数秒、白都は不意に違和感を覚えた。
 緊張して心臓が早鐘を打つのは可笑しくない。深夜に空気が静かなのも普通だ。

「……帝?」

 白都は、もしかしてと思い、取っ手に手をかけていた。施錠が解かれており、キィと薄く扉が動く。
 警戒を促している状態では有り得ないと思ったが、帝の対応法は変わっていないらしい。
 訪問を約束している時、鍵を開けてくれているとの習慣は――。

「……えっ……?」

 勢いよく扉を開け放った先、飛び込んだ光景に白都は目を疑う。
 廊下で帝が倒れていたのだ。それも右横腹に血を滲ませて。襟元は乱れ、首に深い引っ掻き傷も付いている。

「みか、ど……帝! 帝……!」

 我を取り戻した白都は、靴のまま足を踏み入れ帝に駆け寄った。そうして肌に触れた瞬間、気付く。
 ――――体が冷たくなっていることに。

「……みか、帝……起きて……そうだ救急車……」

 目の前の現実が受け容れられない。受け容れたくない。
 動揺したまま、白都は百十九番を押し救急車を要請した。舌を縺れさせながらも、必死に助けを呼んだ。
 電話を切ってからも、現実逃避を行動に反映させ、心臓マッサージや人工呼吸を繰り返した。

 しかし、帝が息を吹き返すことはなかった。救急隊員がやってきて、その場で死亡が確認された。
 目の前が真っ白になり、現場で泣き崩れた。

***

 明らかな事件の気配があった為、時差で警察官がやってきた。その場で事情聴取を受けたが、白都は何も分からないの一点張りを貫いた。
 放心しながらも“御面の件だけは絶対に口にしてはならない”と本能が口を噤ませる。

 帝が死んだのは自分の所為だ。確信できる。自分がいたから、彼に頼ったからこうなってしまった。
 御面に背けばどうなるか突きつけられ、白都は抵抗の気持ちをすっかり無くしてしまった。
 だが、一つ疑問が残る。

 帝は犯人が分かっていたのに、確信にまで至っていたのに、どうして死ななければならなかったのだろう。殺されなければならなかったのだろう。
 帝の当てが外れたということなのだろうか。それとも、弱みを握られていたのだろうか。
 仮に突然押し入られたとして、抵抗の余地は無かったのだろうか。

 なんにせよ、もう帝は戻らない。大切な友人は、一番大切な友人は戻らないんだ。
 白都は、予期しなかった出来事に打ちひしがれ、深い深い痛苦を味わった。
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