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白都は命令を凝視したまま、口を強く抑えていた。
今、目の前に、否定できない真実がある。いつしか可能性の中から消し去っていた答えがある。
確かに、全員に現場不在証明があった。絶対に御面になれない要素が存在していた。
その時点で疑うべきだったのに、最後まで自分は友を信じられなかった。
和月も御面では無かったのだ。御面は視野から外れていた誰かだったのだ。
近しい人間しか知らない情報を取得し、友人の一人だと信じ込ませた巧妙な策略家が存在するのだ。
見破れずに、疑ってしまった。
悔恨が満ち、これ以上ない深さにまで落ちてゆく。
せめて、出来ることは。残された時間、和月に対して出来ることは――。
***
≪……もしもし≫
聞こえてきた和月の声は小さく、寸前まで眠っていたのだと思われた。
「……もしもし相澤さん。急に変なこと言いますけど落ち着いて聞いて下さい」
白都は最後の最後、和月だけは救おうと決意していた。とは言え、現段階では行動を促すくらいしか出来ないが。
≪……え、どうしたの?≫
「……今から打ち明けることは全部本当のことです。どうか疑わないで、そしてお願いを聞いて下さい」
絶句する和月の承諾を待たずして、白都はこれまでの事情を全て暴露する。
時間を気にし、早口で、要点を選びながら。
御面という存在に、色々な命令を言い渡されていたこと。実行しなければ罰が下り、苦しめられていたこと。人質として友人達や家族が標的にされていたこと。
そして、穂積を刺してしまったことも、今直面していることも全て。
「……相澤さん、逃げて下さい……出来るだけ遠くに、誰も来ない所に……そうすれば殺されずに済みます……」
≪…………それじゃあ白都くんは……?≫
白都は自分の末路を悟っていた。
御面がどういった力の持ち主か分からない。しかし、殺す機会なんてどこにでも転がっているだろう。警察がやってくる前に不法侵入でもされて、そこらに転がる道具を武器に体を切り刻まれるかもしれない。
「……家族に全部打ち明けて……それからは……」
唇を噛み、想像だけで湧き上がる怖気を殺す。本当は逃げ出したい。とことんまで逃げたい。
けれど、その先にあるのもまた、同じだと気付いてしまった。
≪……じゃあ、白都くんも一緒に逃げよう≫
「えっ?」
≪今すぐ家に行くから、下に降りてきてて≫
言い残すと、和月は電話を切ってしまった。真っ暗になった画面を茫然と見詰める。
和月の差し出してくれた救いは、白都にとって最後の砦に思えた。自然と嬉し涙が頬を伝う。
携帯電話を持ってゆくべきか悩んだが、家族に連絡を取る必要があった為、持って行くことにした。
連絡を取り次第、破壊すれば問題無いだろう。それ以外の持ち物は、逃亡に必要ないとして用意しなかった。
***
一階でソワソワしながら待っていると、黒い車が目の前に止まった。運転席の扉が開き、和月が顔を見せる。
「乗って!」
白都は頷くと、助手席に回り車に乗り込んだ。
「行くよ、白都くん」
「はい……!」
発進した車は、アパートから遠ざかり知らない町へと向かった。
今、目の前に、否定できない真実がある。いつしか可能性の中から消し去っていた答えがある。
確かに、全員に現場不在証明があった。絶対に御面になれない要素が存在していた。
その時点で疑うべきだったのに、最後まで自分は友を信じられなかった。
和月も御面では無かったのだ。御面は視野から外れていた誰かだったのだ。
近しい人間しか知らない情報を取得し、友人の一人だと信じ込ませた巧妙な策略家が存在するのだ。
見破れずに、疑ってしまった。
悔恨が満ち、これ以上ない深さにまで落ちてゆく。
せめて、出来ることは。残された時間、和月に対して出来ることは――。
***
≪……もしもし≫
聞こえてきた和月の声は小さく、寸前まで眠っていたのだと思われた。
「……もしもし相澤さん。急に変なこと言いますけど落ち着いて聞いて下さい」
白都は最後の最後、和月だけは救おうと決意していた。とは言え、現段階では行動を促すくらいしか出来ないが。
≪……え、どうしたの?≫
「……今から打ち明けることは全部本当のことです。どうか疑わないで、そしてお願いを聞いて下さい」
絶句する和月の承諾を待たずして、白都はこれまでの事情を全て暴露する。
時間を気にし、早口で、要点を選びながら。
御面という存在に、色々な命令を言い渡されていたこと。実行しなければ罰が下り、苦しめられていたこと。人質として友人達や家族が標的にされていたこと。
そして、穂積を刺してしまったことも、今直面していることも全て。
「……相澤さん、逃げて下さい……出来るだけ遠くに、誰も来ない所に……そうすれば殺されずに済みます……」
≪…………それじゃあ白都くんは……?≫
白都は自分の末路を悟っていた。
御面がどういった力の持ち主か分からない。しかし、殺す機会なんてどこにでも転がっているだろう。警察がやってくる前に不法侵入でもされて、そこらに転がる道具を武器に体を切り刻まれるかもしれない。
「……家族に全部打ち明けて……それからは……」
唇を噛み、想像だけで湧き上がる怖気を殺す。本当は逃げ出したい。とことんまで逃げたい。
けれど、その先にあるのもまた、同じだと気付いてしまった。
≪……じゃあ、白都くんも一緒に逃げよう≫
「えっ?」
≪今すぐ家に行くから、下に降りてきてて≫
言い残すと、和月は電話を切ってしまった。真っ暗になった画面を茫然と見詰める。
和月の差し出してくれた救いは、白都にとって最後の砦に思えた。自然と嬉し涙が頬を伝う。
携帯電話を持ってゆくべきか悩んだが、家族に連絡を取る必要があった為、持って行くことにした。
連絡を取り次第、破壊すれば問題無いだろう。それ以外の持ち物は、逃亡に必要ないとして用意しなかった。
***
一階でソワソワしながら待っていると、黒い車が目の前に止まった。運転席の扉が開き、和月が顔を見せる。
「乗って!」
白都は頷くと、助手席に回り車に乗り込んだ。
「行くよ、白都くん」
「はい……!」
発進した車は、アパートから遠ざかり知らない町へと向かった。
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