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12/24,25
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次の日、雨は上がっていた。起床時まだ空は暗く、また明け方に目を覚ましてしまったのだと理解した。
まだふわふわとする頭を、枕から上げる。
気分転換にと少し窓を開けてみたが、空気は冷たく、直ぐに閉めてしまった。だが、お陰で目は冷めた。
鈴夜は無意識に携帯を開き、検索ツールを出した。その画面は、クリスマスイブだからか、少し賑わしくデザインされていた。
鈴夜は検索欄に、また¨CHS事件¨と打ち込んだ。
勿論、サイトには絶対に触れなかった。
この世界は残酷だ。そして不平等だ。
淑瑠が来るまでの間、テレビを見ながら考えていた。
やはり朝の番組はニュースが多い。それも心苦しくなるニュースばかりだ。
遠い場所で起こった筈のそれらにも、鈴夜は胸を痛めていた。被害者の心情を考える度、苦しくなった。
チャンネルを変えれば、クリスマスを題材にしたリポート番組も姿を現す。番組では、オススメのレストランや、スポット等を紹介していた。
キラキラしたざわめきや空気に数多くの人々が喜ぶ傍らで、どこかの誰かが泣いているのだと、苦しんでいるのだと考えると世界は残酷だと思えた。
誰かはクリスマスツリーを見る事さえ出来ずに消えてしまって、誰かはプレゼントの内容に期待や不満を揺らす。そんな現実。
鈴夜は真っ暗な心の中で、ただ煌びやかな遠い世界を見ていた。
その日は何も無く、ただただ平坦な一日が終わった。
あえて変化を挙げるなら、淑瑠が雰囲気だけでもとミニツリーを持ってきて、食卓机の真ん中に配置した位だろうか。
【12.25】
次の日も、大して大きなニュースが取り上げられる事無く、時間は経過して行った。
夜の9時頃、歩が現れた。本日は土曜だというのに、随分と遅い時間だ。
因みに淑瑠は、リビングに居る。インターホンにて歩だと分かり、鈴夜自ら対応に当たった。
歩に会って直ぐさま、慰められた日を思い出した。今更だが、恥ずかしい事をしてしまったと思う。
「メリークリスマス!鈴夜くん。はい」
手には、コンビニで購入したショートケーキがあった。2個入り1パックになっている物を一つ差し出す。
恐らく、淑瑠の分も含まれているのだろう。鈴夜は無意識に微笑んだ。
「…ありがとうございます」
「体調はどうかな?」
相変わらず、歩の笑顔は崩れない。
時刻からしても、きっと今日も遅くまで何か用事があって、その後に寄ってくれたのだと推測できる。
だが、疲れた顔一つ浮かべず、雰囲気さえも作らず、歩は唯々楽しそうな笑顔を浮かべる。
「大丈夫です」
「良かった…にしても今日も寒いなー、油断をして風邪引かないようにな」
そして相変わらず、人の事しか考えない。
「折原さんもですよ」
「あぁ、そうだな、気をつけよう」
この間の事と言いこの雰囲気といい、違う部分も多く存在するが、淑瑠とよく似ている。
頭を撫でてくれる行為も、世間一般的には珍しい行為なのに、二人は当たり前のようにおこなって見せるのだ。
鈴夜は二人の事を、尊敬に値する凄い人だと思った。
まだふわふわとする頭を、枕から上げる。
気分転換にと少し窓を開けてみたが、空気は冷たく、直ぐに閉めてしまった。だが、お陰で目は冷めた。
鈴夜は無意識に携帯を開き、検索ツールを出した。その画面は、クリスマスイブだからか、少し賑わしくデザインされていた。
鈴夜は検索欄に、また¨CHS事件¨と打ち込んだ。
勿論、サイトには絶対に触れなかった。
この世界は残酷だ。そして不平等だ。
淑瑠が来るまでの間、テレビを見ながら考えていた。
やはり朝の番組はニュースが多い。それも心苦しくなるニュースばかりだ。
遠い場所で起こった筈のそれらにも、鈴夜は胸を痛めていた。被害者の心情を考える度、苦しくなった。
チャンネルを変えれば、クリスマスを題材にしたリポート番組も姿を現す。番組では、オススメのレストランや、スポット等を紹介していた。
キラキラしたざわめきや空気に数多くの人々が喜ぶ傍らで、どこかの誰かが泣いているのだと、苦しんでいるのだと考えると世界は残酷だと思えた。
誰かはクリスマスツリーを見る事さえ出来ずに消えてしまって、誰かはプレゼントの内容に期待や不満を揺らす。そんな現実。
鈴夜は真っ暗な心の中で、ただ煌びやかな遠い世界を見ていた。
その日は何も無く、ただただ平坦な一日が終わった。
あえて変化を挙げるなら、淑瑠が雰囲気だけでもとミニツリーを持ってきて、食卓机の真ん中に配置した位だろうか。
【12.25】
次の日も、大して大きなニュースが取り上げられる事無く、時間は経過して行った。
夜の9時頃、歩が現れた。本日は土曜だというのに、随分と遅い時間だ。
因みに淑瑠は、リビングに居る。インターホンにて歩だと分かり、鈴夜自ら対応に当たった。
歩に会って直ぐさま、慰められた日を思い出した。今更だが、恥ずかしい事をしてしまったと思う。
「メリークリスマス!鈴夜くん。はい」
手には、コンビニで購入したショートケーキがあった。2個入り1パックになっている物を一つ差し出す。
恐らく、淑瑠の分も含まれているのだろう。鈴夜は無意識に微笑んだ。
「…ありがとうございます」
「体調はどうかな?」
相変わらず、歩の笑顔は崩れない。
時刻からしても、きっと今日も遅くまで何か用事があって、その後に寄ってくれたのだと推測できる。
だが、疲れた顔一つ浮かべず、雰囲気さえも作らず、歩は唯々楽しそうな笑顔を浮かべる。
「大丈夫です」
「良かった…にしても今日も寒いなー、油断をして風邪引かないようにな」
そして相変わらず、人の事しか考えない。
「折原さんもですよ」
「あぁ、そうだな、気をつけよう」
この間の事と言いこの雰囲気といい、違う部分も多く存在するが、淑瑠とよく似ている。
頭を撫でてくれる行為も、世間一般的には珍しい行為なのに、二人は当たり前のようにおこなって見せるのだ。
鈴夜は二人の事を、尊敬に値する凄い人だと思った。
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