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大親友:辻 晴一
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そんなこんなで全てを知っている俺は、この時期、常に緊張している。親友である晴一の探求が一番痛いかもしれない。
正直な話、晴一には真実を知って欲しかった。変に捜索されて気まずくなるなら、知った上で手を引いて欲しかった。
だが、近しい人物だからこそ、一番怖くもある。だから、可能なら無関心でいて欲しいのだ。
「琴葉さん素顔晒して配信してくんねーかな。でもそしたら見てる他校の奴が押しかけるか」
「何言ってんだ。てかさ、はおこが琴葉さんじゃなくて、イメージと全く違う人間だったらどうするよ」
「イメージと違う琴葉さん?」
芸人の如くツッコミたい気持ちを堪え、冷静に対処する。晴一が正体を琴葉だと思っているのはまだ良い。無論、それは他の人間にも適応する。
問題は、その先だ。
「じゃなくて……例えばマフラーの下が不細工とか実はマッチョとか、声が限りなく低いとか?」
琴葉とはおこが結びつくことで、俺の秘密も確実にバレることになる。それが問題なのだ。
そんなことになったら──考えるだけでゾッとする。
だから、どうにか目を逸らして欲しかった。
「うーん、それはちょっとなぁ……」
「だろ? イメージ壊さない為にも、知らない方が良いんじゃない?」
上手くいったと喜ぶや否や、晴一の目が訝しさを醸した。
「……渡さ、なんか知ってる?」
「えっ、いや。そんな訳ねぇじゃん」
「ふーん」
もしや、不味い方向に導いてしまったのだろうか。後悔先に立たず。ただ必死に平静を装った。
*
毎年、どうにか乗りきっている大捜索だが、今年はやたらとハプニングが多いように感じる。
今日もまた、噂という種が教室に巻かれていた。しかも、新たなやつだ。
「わ、本当だ! 言われてみれば、ネイルして貰ってる人、手大きいね!?」
「女にも見えるし、男にも見えるね。角度の所為とかあると思う?」
「どうだろー」
相方、男か女か疑惑である。よくそこに注目したもんだ、と一周回って感心すら覚え……いや、ないわ。
「でもさー、男だったらちょっと引かない? 多分、彼氏が撮影に付き合ってるとかだろうけどさ」
「引くー。普通の男がキラキラネイルとかしてたら嫌だよね」
女子たちの心無い言葉に、胸を突かれる。いや、分からなくはない。それでも、俺以外にいるかもしれない、数%の女子系男子の為にもやめてほしい。
「別にどっちでも良くね?」
悶々した思考に、飛び込んできたのは晴一の声だ。後ろから現れ、語った女子たちを遠巻きに睨んでいる。珍しく同意見だ。
「晴一のことだから、女子が良いとか言うかと思った」
「まぁ、そうだけどな! でも、好きなら否定する権利もないって言うか?」
一応、意見という物を持っていたのか、晴一は曖昧ながらも言葉を連ねる。完全否定ではないことに、小さな救いを覚えたのは内緒だ。
もしかしたら、彼なら全てを容認してくれるのではないだろうか。
「……やっぱ晴一も男がネイルとか引く? まぁ、ピンと来なければメイク道具持ってるとかでも良いや」
話題に便乗しましたと言う体で、探りを入れてみる。晴一は、やや戸惑った顔つきで考え始めた。
「うーん……えっと、まぁ、好きなら良いんじゃね?」
言いながら纏めている感が、晴一らしい。肯定と否定が見え隠れした回答に、嬉しさと悲しさが浮かんだ。
正直な話、晴一には真実を知って欲しかった。変に捜索されて気まずくなるなら、知った上で手を引いて欲しかった。
だが、近しい人物だからこそ、一番怖くもある。だから、可能なら無関心でいて欲しいのだ。
「琴葉さん素顔晒して配信してくんねーかな。でもそしたら見てる他校の奴が押しかけるか」
「何言ってんだ。てかさ、はおこが琴葉さんじゃなくて、イメージと全く違う人間だったらどうするよ」
「イメージと違う琴葉さん?」
芸人の如くツッコミたい気持ちを堪え、冷静に対処する。晴一が正体を琴葉だと思っているのはまだ良い。無論、それは他の人間にも適応する。
問題は、その先だ。
「じゃなくて……例えばマフラーの下が不細工とか実はマッチョとか、声が限りなく低いとか?」
琴葉とはおこが結びつくことで、俺の秘密も確実にバレることになる。それが問題なのだ。
そんなことになったら──考えるだけでゾッとする。
だから、どうにか目を逸らして欲しかった。
「うーん、それはちょっとなぁ……」
「だろ? イメージ壊さない為にも、知らない方が良いんじゃない?」
上手くいったと喜ぶや否や、晴一の目が訝しさを醸した。
「……渡さ、なんか知ってる?」
「えっ、いや。そんな訳ねぇじゃん」
「ふーん」
もしや、不味い方向に導いてしまったのだろうか。後悔先に立たず。ただ必死に平静を装った。
*
毎年、どうにか乗りきっている大捜索だが、今年はやたらとハプニングが多いように感じる。
今日もまた、噂という種が教室に巻かれていた。しかも、新たなやつだ。
「わ、本当だ! 言われてみれば、ネイルして貰ってる人、手大きいね!?」
「女にも見えるし、男にも見えるね。角度の所為とかあると思う?」
「どうだろー」
相方、男か女か疑惑である。よくそこに注目したもんだ、と一周回って感心すら覚え……いや、ないわ。
「でもさー、男だったらちょっと引かない? 多分、彼氏が撮影に付き合ってるとかだろうけどさ」
「引くー。普通の男がキラキラネイルとかしてたら嫌だよね」
女子たちの心無い言葉に、胸を突かれる。いや、分からなくはない。それでも、俺以外にいるかもしれない、数%の女子系男子の為にもやめてほしい。
「別にどっちでも良くね?」
悶々した思考に、飛び込んできたのは晴一の声だ。後ろから現れ、語った女子たちを遠巻きに睨んでいる。珍しく同意見だ。
「晴一のことだから、女子が良いとか言うかと思った」
「まぁ、そうだけどな! でも、好きなら否定する権利もないって言うか?」
一応、意見という物を持っていたのか、晴一は曖昧ながらも言葉を連ねる。完全否定ではないことに、小さな救いを覚えたのは内緒だ。
もしかしたら、彼なら全てを容認してくれるのではないだろうか。
「……やっぱ晴一も男がネイルとか引く? まぁ、ピンと来なければメイク道具持ってるとかでも良いや」
話題に便乗しましたと言う体で、探りを入れてみる。晴一は、やや戸惑った顔つきで考え始めた。
「うーん……えっと、まぁ、好きなら良いんじゃね?」
言いながら纏めている感が、晴一らしい。肯定と否定が見え隠れした回答に、嬉しさと悲しさが浮かんだ。
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