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辻都はおこの真実
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怖すぎる。晴一の思考が、不透明すぎて不安しかない。俺は、何かヘマでもしただろうか。正体に辿り着かれた可能性は否めない。
「なぁ渡。俺に隠してることない?」
玄関に入り次第、直球で投げられ言葉を失う。
きっと彼は、ある程度悟った上、確認を取ろうとしているのだろう。演技じゃ消せない冷や汗が流れる。
「は、晴一が気にするようなことはないけど?」
「俺、渡がネイル好きって知ってるけど。それを隠してた訳じゃなくて?」
硬直──からの絶句。脳の処理が追いつかない。
「……えぇ!?」
数秒後、ようやく理解した。徐々に詰められると思っていた矢先、核心を突かれ驚愕してしまっていた。
しかし、さすが晴一とでも言うべきか。手順というものをお忘れのようだ。
「少し前に、はおこちゃんのことで詰め寄ったら、琴葉さんが教えてくれた」
「詰め寄ったのかよ。てか、琴葉教えたのか」
「なんか、晴一くんには知ってて欲しいからーって言われちゃった!」
しかも、ここでピースサインである。上手なウインクまでつけられ、付いていけない。
「俺、別に渡がネイル好きでも良いよ。堂々としろとは言えないけど、俺には隠さなくていいし」
そう言われても、秘密を簡単に打ち明けられないのが人間だ。
「でさ、渡が動画に関わってて、バレたくないから二人で隠してるのは聞いたんだけどさ。あとの重要な所は渡から聞いてって言われた。これ渡されて」
だが、結局は無茶ぶりらしい。
渡されたのは、はおこのトレードマークであるマフラーだった。こんなの、答えを出しているのに等しいじゃないか。
帰ったら、琴葉に散々文句を言ってやろう。
「……否定されたら悲しくなるんだけど?」
「するかよ。親友だろ。言い辛いなら俺から秘密言うわ」
「えっ、あんの!?」
「俺もメイクするの好き。可愛いの」
「マジで!?」
「今からやろうか? それか先、写真見る?」
肯定する前に、スマホのギャラリーが開かれる。そこには、キラキラメイクで変貌した晴一がいた。だが、面影は完全に彼そのものである。
「……やっぱお前凄いわ、そんなサラッと」
自撮りを残している時点で尊敬だが、俺が晴一の立場でもバラしたくはない趣味だ。いや、同じようなものだが。
「渡だから言ったに決まってんだろ。で、秘密教えてくれんの?」
「ここで教えないとか無しだろ?」
でも、もう吹っ切れた。晴一なら、きっと大丈夫だ。
受け取ったマフラーを、慣れた手つきで巻く。ポイントは、口元を上手く隠すこと──。
「俺が、はおこだよ」
*
辻 渡、十六歳。男だけどネイルが好き。しかも、キラキラなやつ。それに、ガッツリメイクだって好きだ。無論、ゲイではない。
両親は、そんな俺を否定した。家族の中で、受け入れてくれたのは琴葉だけだった。
だから二人の時だけ、買って貰った道具で思う存分ネイルした。琴葉の爪にも施した所、大いに喜んでくれた。
因みに、男だと言われていた指の持ち主は琴葉だ。
技術も認めてくれて、もっと多くの人に見て貰いたいから、あと夢の為に編集技術を上げたいからとの理由を上げられ、配信を勧められた。
迷いはあったが、俺自身技術がどこまで通用するのか興味があり、承諾した。
「見てもらう為には顔出し必須だよ! 顎出さなきゃ絶対バレない! メイクそれくらい凄いから!」
と言う強烈な推しに負け、苦肉の策ではあったが女装を選んだ。あの勢いを一瞬足りとも忘れたことは無い。
因みに、マフラーをしただけでは“はおこ”にはならず、晴一にはまず笑われた。だから、今度撮影に呼んでやろうと思う。
最初は抵抗があった配信も、始めてしまえば楽しいものだ。認められるのが嬉しくて、俺は続けた。
話題になりだした頃、止めようと話をしたこともあったが、琴葉は譲らなかった。
「改めて聞くけどさ、何で止めさせてくれなかったの?」
これでもかと文句を言ったあと、昔話をしながらぶつける。あの時は、理由一つ教えてくれなかった。
「だって、やってる時の渡、楽しそうなんだもん。そんなに好きなこと、止めさせたくないじゃん」
だが、正当な理由あってのことだったらしい。からかわれるのが見えた為、感謝は胸の内に留めた。
「明日、空いてる?」
「変わらず暇人だけど」
「じゃあ決定!」
秘密厳守は変わらない。校内では、気を抜くことすら出来ないだろう。
それでも、気持ちが少し軽くなったのは、晴一が受け止めてくれたからだ。琴葉が変わらず引っ張ってくれるからだ。
*
完璧なメイクをし、手袋を装着。そして最後に、ゴツイ顎をマフラーで隠す。
今から俺は“辻都はおこ”だ。
機材の調整を行う琴葉の傍ら、別の懐かしい記憶が蘇った。
「にしてもさ、今思い出しても笑えるよな。名前の由来。覚えてる?」
「そりゃ覚えてるよ。大分悩んだからねー」
真剣な目付きの琴葉とは裏腹に、俺は思い出し笑いする。
「今考えてもすげぇ発想だわ。“辻都はおこ”を並び替えると“実は男”なんてね」
「なぁ渡。俺に隠してることない?」
玄関に入り次第、直球で投げられ言葉を失う。
きっと彼は、ある程度悟った上、確認を取ろうとしているのだろう。演技じゃ消せない冷や汗が流れる。
「は、晴一が気にするようなことはないけど?」
「俺、渡がネイル好きって知ってるけど。それを隠してた訳じゃなくて?」
硬直──からの絶句。脳の処理が追いつかない。
「……えぇ!?」
数秒後、ようやく理解した。徐々に詰められると思っていた矢先、核心を突かれ驚愕してしまっていた。
しかし、さすが晴一とでも言うべきか。手順というものをお忘れのようだ。
「少し前に、はおこちゃんのことで詰め寄ったら、琴葉さんが教えてくれた」
「詰め寄ったのかよ。てか、琴葉教えたのか」
「なんか、晴一くんには知ってて欲しいからーって言われちゃった!」
しかも、ここでピースサインである。上手なウインクまでつけられ、付いていけない。
「俺、別に渡がネイル好きでも良いよ。堂々としろとは言えないけど、俺には隠さなくていいし」
そう言われても、秘密を簡単に打ち明けられないのが人間だ。
「でさ、渡が動画に関わってて、バレたくないから二人で隠してるのは聞いたんだけどさ。あとの重要な所は渡から聞いてって言われた。これ渡されて」
だが、結局は無茶ぶりらしい。
渡されたのは、はおこのトレードマークであるマフラーだった。こんなの、答えを出しているのに等しいじゃないか。
帰ったら、琴葉に散々文句を言ってやろう。
「……否定されたら悲しくなるんだけど?」
「するかよ。親友だろ。言い辛いなら俺から秘密言うわ」
「えっ、あんの!?」
「俺もメイクするの好き。可愛いの」
「マジで!?」
「今からやろうか? それか先、写真見る?」
肯定する前に、スマホのギャラリーが開かれる。そこには、キラキラメイクで変貌した晴一がいた。だが、面影は完全に彼そのものである。
「……やっぱお前凄いわ、そんなサラッと」
自撮りを残している時点で尊敬だが、俺が晴一の立場でもバラしたくはない趣味だ。いや、同じようなものだが。
「渡だから言ったに決まってんだろ。で、秘密教えてくれんの?」
「ここで教えないとか無しだろ?」
でも、もう吹っ切れた。晴一なら、きっと大丈夫だ。
受け取ったマフラーを、慣れた手つきで巻く。ポイントは、口元を上手く隠すこと──。
「俺が、はおこだよ」
*
辻 渡、十六歳。男だけどネイルが好き。しかも、キラキラなやつ。それに、ガッツリメイクだって好きだ。無論、ゲイではない。
両親は、そんな俺を否定した。家族の中で、受け入れてくれたのは琴葉だけだった。
だから二人の時だけ、買って貰った道具で思う存分ネイルした。琴葉の爪にも施した所、大いに喜んでくれた。
因みに、男だと言われていた指の持ち主は琴葉だ。
技術も認めてくれて、もっと多くの人に見て貰いたいから、あと夢の為に編集技術を上げたいからとの理由を上げられ、配信を勧められた。
迷いはあったが、俺自身技術がどこまで通用するのか興味があり、承諾した。
「見てもらう為には顔出し必須だよ! 顎出さなきゃ絶対バレない! メイクそれくらい凄いから!」
と言う強烈な推しに負け、苦肉の策ではあったが女装を選んだ。あの勢いを一瞬足りとも忘れたことは無い。
因みに、マフラーをしただけでは“はおこ”にはならず、晴一にはまず笑われた。だから、今度撮影に呼んでやろうと思う。
最初は抵抗があった配信も、始めてしまえば楽しいものだ。認められるのが嬉しくて、俺は続けた。
話題になりだした頃、止めようと話をしたこともあったが、琴葉は譲らなかった。
「改めて聞くけどさ、何で止めさせてくれなかったの?」
これでもかと文句を言ったあと、昔話をしながらぶつける。あの時は、理由一つ教えてくれなかった。
「だって、やってる時の渡、楽しそうなんだもん。そんなに好きなこと、止めさせたくないじゃん」
だが、正当な理由あってのことだったらしい。からかわれるのが見えた為、感謝は胸の内に留めた。
「明日、空いてる?」
「変わらず暇人だけど」
「じゃあ決定!」
秘密厳守は変わらない。校内では、気を抜くことすら出来ないだろう。
それでも、気持ちが少し軽くなったのは、晴一が受け止めてくれたからだ。琴葉が変わらず引っ張ってくれるからだ。
*
完璧なメイクをし、手袋を装着。そして最後に、ゴツイ顎をマフラーで隠す。
今から俺は“辻都はおこ”だ。
機材の調整を行う琴葉の傍ら、別の懐かしい記憶が蘇った。
「にしてもさ、今思い出しても笑えるよな。名前の由来。覚えてる?」
「そりゃ覚えてるよ。大分悩んだからねー」
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