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有箱

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一ヶ月目

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 彼女が家に来て、早一ヶ月が経った。始めは不自然だった暮らしも、すっかり馴染んできている。
 しかし、馴染むほどに終わりも見てしまい、寂しくもなった。その理由は、快適な暮らしが損なわれるから――だけではない。

「そうですか、叔母さまに」
「うん。アンメルと会えたのも叔母さんのお陰なんだ。両親が生きてた頃は結構会っててさ。最近は連絡すらあまり出来てないんだけどね。うん、今日も美味しい」

 約十年前、繋がりであった両親が亡くなって以降、叔母とは距離がある。理由は単純に、叔母の実息が僕を目の敵にしているからだ。
 他人の子を可愛がるのが許せなかったのだろう。養子縁組の話も出たが、速攻消えた。という経緯があり、今は金銭だけの繋がりになりつつある。

「一人の時間が多かったから、アンメルが来てくれて楽しいよ」

 なんてロボットに言っても仕方ないよな――頭では冷静になれたつもりでも、心が線引きを拒否した。
 決して人として見てはいない。しかし、本物の心がそこにあるのではないか、と疑ってしまった。いや、望んでいるのかもしれない。

「……それは良かったです。私もフォア様が優しい方で安心しています」
「はは、ロボットでも優しいとか思うんだね」

 彼女の美しさやリアルさに触れる度、心を陣取る感情を拒んできた。しかし、逃げ惑っている時点で肯定になると気付いてもいた。ただ認めたくないだけで。

「……酷い扱いをされる方もおりますので」

 発言の中に、生身の体を見る。いけないと振り切ろうとしたが、妄想は勝手に歩いてゆく。ふと、その感触が気になった。
 手の平に触れたことはある。その時も、体温を錯覚させる温度に惑いそうになった。

「そ、それは大変だったね」

 暴走を、作り笑いで抑止する。言葉の意味が分からなかったのか、アンメルは返答を失っていた。
 ゆえに、ロボット的にはそうでもないのかな? なんて可笑しな括りをしてしまった。
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