5 / 10
二ヶ月目①
しおりを挟む
「お休みなさいませ、フォア様」
「アンメルもおやすみ」
整えられたベッドで、眠る夜にも慣れた。仮眠体質の体、食事への認識、物音への嫌悪――など、アンメルによって修正されたものは数知れない。生活水準の向上が充実感まで高めると、知ってはいても信じていなかった。
膝を折り壁に寄り掛かるアンメルは、静かに目蓋を閉じている。豆電球の仄かなオレンジが、無防備な様相を艶っぽく見せた。
何夜も共にして、誤解しそうに美しい体が気にならない訳がない。特に、感情を自覚してからは葛藤が酷くなった。
僕はアンメルが好きだ。人に抱く好意を抱いている。しかし、彼女はロボットだ。ぬいぐるみや食器に恋するのと何ら変わらない。
いや、外面だけ見れば普通かもしれないが。なんて、駄目なものは駄目でしょ。
気を紛らせようと、スマホを立ち上げる。開いたのは、サービスの公式ページだった。商品紹介、個体の特徴、料金一覧など定番の項目が並んでいる。僕はその中から、料金一覧を開いていた。
知ってはいたが、やはり高額だ。今の経済力では彼女をレンタルなんてできない――永遠になんて更に。
思考をひっくり返すどころか、飲まれていることに気づく。遮断すべく、サイトを閉じたところで声がした。
「眠れませんか?」
「あっ、起こした? ごめんね!」
「……なんで謝るんですか?」
「あっ、ううーん、なんでだろうね?」
我ながら不器用な返答に、穴を探してしまう。しかし、あるはずもない――と思いきや画面が切り替わった。同時に着信音が響きだす。
宛先は叔母だった。思わず、声なき『ナイス!』を叫んでしまう。
「あっ、叔母さん!? 連絡……え?」
聞こえてきた声は、あっさり思考を乗っ取った。
「アンメルもおやすみ」
整えられたベッドで、眠る夜にも慣れた。仮眠体質の体、食事への認識、物音への嫌悪――など、アンメルによって修正されたものは数知れない。生活水準の向上が充実感まで高めると、知ってはいても信じていなかった。
膝を折り壁に寄り掛かるアンメルは、静かに目蓋を閉じている。豆電球の仄かなオレンジが、無防備な様相を艶っぽく見せた。
何夜も共にして、誤解しそうに美しい体が気にならない訳がない。特に、感情を自覚してからは葛藤が酷くなった。
僕はアンメルが好きだ。人に抱く好意を抱いている。しかし、彼女はロボットだ。ぬいぐるみや食器に恋するのと何ら変わらない。
いや、外面だけ見れば普通かもしれないが。なんて、駄目なものは駄目でしょ。
気を紛らせようと、スマホを立ち上げる。開いたのは、サービスの公式ページだった。商品紹介、個体の特徴、料金一覧など定番の項目が並んでいる。僕はその中から、料金一覧を開いていた。
知ってはいたが、やはり高額だ。今の経済力では彼女をレンタルなんてできない――永遠になんて更に。
思考をひっくり返すどころか、飲まれていることに気づく。遮断すべく、サイトを閉じたところで声がした。
「眠れませんか?」
「あっ、起こした? ごめんね!」
「……なんで謝るんですか?」
「あっ、ううーん、なんでだろうね?」
我ながら不器用な返答に、穴を探してしまう。しかし、あるはずもない――と思いきや画面が切り替わった。同時に着信音が響きだす。
宛先は叔母だった。思わず、声なき『ナイス!』を叫んでしまう。
「あっ、叔母さん!? 連絡……え?」
聞こえてきた声は、あっさり思考を乗っ取った。
0
あなたにおすすめの小説
繰り返す夜と嘘 〜【実録】既婚の僕と後輩の彼女、あの夜のキスから始まった13年の秘密〜
まさき
恋愛
結婚して半年の僕と、同じ職場の彼女。
出会った頃は、ただの先輩と新入社員だった。
互いに意識しながらも、
数年間、距離を保ち続けた。
ただ見つめるだけの関係。
けれど――
ある夏の夜。
納涼会の帰り道。
僕が彼女の手を握った瞬間、
すべてが変わった。
これは恋でも、友情でもない。
けれど理性では止められない、
名前のない関係。
13年続いた秘密。
誓約書。
そして、5年の沈黙。
これは――
実際にあった「夜」の記録。
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
秘められた薫り
La Mistral
恋愛
エブリスタにて、トレンド#恋愛で最高位
55位を獲得した作品です。
「愛しているよ」という夫の言葉が、今の美咲には虚しい空気にしか聞こえない。
欠けていたのは、理性を焼き尽くすような衝動。
クライアントの慎吾と交わす視線。ビジネスという仮面の下で共有される、剥き出しの欲望。
指先が触れる。名前を呼ばれる。ただそれだけで、美咲の積み上げてきた「良き妻」としての世界は音を立てて崩れ去る。
完璧なアリバイ、塗り固めた嘘。
夫の隣で微笑みながら、心は別の男の指先を求めている。
一度知ってしまった濃厚な「薫り」は、もう彼女を元の場所へは戻してくれない。
守るべき家庭と、抗えない本能。
二つの世界の境界線で、美咲が選ぶ「最後の一線」とは――。
欲望の熱に浮かされた女の、美しくも残酷な堕落の記録。
完璧な政略結婚のはずでしたが、宰相閣下の“私の妻”扱いが甘すぎます
星乃和花
恋愛
政略結婚のはずでした。
家同士の利も、立場の釣り合いも、全部きちんと整った、完璧に合理的な結婚。
……なのに、夫となった冷徹宰相は、なぜか人前で私を「最高の妻」と紹介し、暮らしを完璧に整え、他人に近づかれると不機嫌になってしまいます。
“天使”と噂される穏やかな令嬢フィオナもまた、
そんな不器用な優しさに少しずつ心をほどかれて――。
これは、条件で選ばれたはずの夫婦が、
いつの間にかお互いを“ただ一人”として欲しくなるまでの、甘くてやさしい政略結婚物語。
(毎日21:50更新ー全8話)
白椿の咲く日~ひそかな恋、遠い日の思いは
紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに異母姉の稚子(わかこ)と会う。
真由子の母の雪江は、大学教授であり著名な歌人の水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。
婚約者の諒人(りょうと)のことなど、真由子は稚子と色々語り合ううち、庭の白椿の木は真由子がなついていた異母兄、靖之が植えたものだと知る。
白椿の木をめぐっての、ひそかな大人の恋物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる