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二ヶ月目③

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 衝突の瞬間、アンメルは恐怖を纏った。プログラムも疑ったが、それなら驚愕を見せるのでは、と考えたのだ。僕が設計士だったらそうする。
 極めつけは、彼女に触れた時である。跳ねる鼓動が、胸の中にはあった。

「えっと……私はロボットですよ?」
「誰にも言わないから教えてほしい」
「ロボット……です」

 動揺が目に見える。言葉を見失う様子は、もう欠陥でなく個性としか捉えられなかった。
 彼女はロボットではなく人間だ。

 熱い眼差しに観念したのだろう。アンメルは視線を床へと落とした。反射で光る瞳が、特別な光沢を見せる。

「ま、前は……体を売る……お仕事をしていまして……でもお客さんに暴力を受けて……怖くて続けられなくなってしまったんです」

 引っ掛かり気味の声が、二ヶ月半分の努力を教えた。いや、それ以上か。

 アンメルはワンピースの裾を持ちあげる。露出した足には無数の痣があった。裾の向こうにも、まだ続いていそうだ。

「でも、私の家貧しいから働かなきゃいけなくて……だけど体は見せられないし、表情も上手く作れないので仕事がなくて……そんな時に社長様に買って頂きました。あ、あの、本当に言わないで下さいね。知られてしまったらどうなるか分からないので……」
「もちろん言わないよ」
 表情や声色、空気感――発する全てに焦りを乗せ、アンメルは連ねる。
 数秒で語りきれてしまう生き様には、どれほどの苦悩が詰まっているのだろうか。心の理解はできなかったが、景色を見ると胸が痛んだ。

「……あ、あのさ、僕が君に会う仕事を探すってのはどう? アンメルは料理も掃除も出来るし良い仕事があると思うんだ」

 彼女を救いたい。境遇で諦めを持ってほしくない。幸せを浮かべる姿が見たい。そう願ってしまう。

「素敵ですね。でも、一生働くと誓いましたので。気になさらないで下さい」
「そんな、だって僕は……!」

 声が詰まった。首を絞められたように、続きが阻まれる。

 アンメルが好きだ。愛してる。だから助けたいんだ。本気で幸福になって欲しいんだ。

 なんて、無力な僕に心を渡す資格などない。一体何の為の事業なのか、と底知れない悔しさに叩かれた。

「……ごめん、なんでもない」
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