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有箱

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最終日①

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 普段より一時間早く電源を落とす。センサーでもあるかのように、料理を携えたアンメルが現れた。

 最後くらい自由に過ごして――そう提案したが、アンメルは受け取らなかった。彼女が望んだのは、職務の全うだった。
 温かな香りが体に染みる。パソコンを下ろした机には、埃など一切なかった。

「三ヶ月間、大変お世話になりました」
「僕の方がだよ。……寂しいな」

 溶け込んだ日々も今日で終わる。明日からは以前の生活に戻る。
 いや、戻れやしない。きっと僕は、向かいの机や背後に、何度も面影を見るだろう。寂しさと共に。

「私もです。もし機会がありましたら、またレンタルして下さいね……冗談です」

 同意と半端な冗談、それから欠けた微笑みが僕に刺さる。疼き始めた本能は、理性の説得を拒んだ。
 スプーンを持つ手が止まる。アンメルも、不思議そうに動きを止めた。

「アンメル……」
「なんでしょうか?」
「お金をたくさん貯めて、君を迎えに行くよ」

 さらりと落ちた発言に、自分自身驚く。もちろんアンメルも驚いていた。
 しかし、曲がった形で受け取ったらしい。楽しみにしています、とロボットだった時のように答えた。それがむず痒く、もどかしくなった。

 今なら引き返せる。決意を心中だけに留めておける。そうすれば、いつだって無責任に放り出せる。けれど、単純にそうしたくなかった。例え、重く固い足枷になるとしても。

「三ヶ月とかのレンタルじゃなくて……えっと、そう。百年くらい。どう?」

 訂正の意味を探しているのか、目蓋が何度か瞳を覆う。しかし数秒後、気付いたらしく肌が鮮やかに色付いた。

「えっ、あっ、嬉しいです……」
「時間かかっちゃうかもしれないけど、待っててくれる?」

 微笑みかける。若干の戸惑いを持ちながら、アンメルも最大の笑顔を見せてくれた。

「……はい」
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