私が死んだ日

有箱

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 それからも死に物狂いで戦い続けた。延命だけを目標にし、戦地を駆け抜けた。当初からいた仲間は、ほとんど全員消えた。

 兵器でしかない私たちには、戦況も、時間すら知らされなかった。終わりが下されるまで、ただ必死になって生き延びるしかない。それが私たちに与えられた運命なのだから。
 
 あの日から、随分髪が伸びた。以前はこんなことで喜べていた気がする。しかし、今は邪魔としか感じられなかった。あの些細な喜びが、どうやって生まれていたのか思い出せない。そもそも、感覚すら描けなかった。

 懐かしい日々の記憶は、まるでムービーのようだ。それほどまでに、他人のものになってしまった。

 戦争が終わったら、全部思い出せるのかな。終わってあの街に帰れたら、人々に、家族に会えたら。映画のような、あの日々に戻れるのかな。戻れるよね。きっと。きっと。

 そう信じて、今日も朝を待った。夢の中でも、必死に敵を殺しながら。
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