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76(ヨハン)※
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汚名返上に命懸けという姿勢を見せたいクローゼル侯爵の口は緩く、私は難なくヘレネに辿り着いた。
逆上した実の父親によって娼館に売り飛ばされたヘレネは既に客を取っていた。顔つきが凌辱されたかのように鬼気迫っているのを見て私は辟易した。
ザシャを買っていた自分を棚に上げ、不遇の犠牲者を気取っている。
どろりと濁った視線で私を捉えるとヘレネは言った。
「いい気味でしょう」
弱虫泣き虫侯爵令嬢は痛みを知り強くなったようだ。
「あなたは面白くありません」
私が返すとヘレネは堂々と食って掛かった。
「絶対に嫌よ!誰もザシャの代わりにはならない!ザシャの顔を知る男にはいくら積まれても抱かれたりしない!」
「はぁ」
溜息が洩れる。
「冗談じゃありませんよ。あなた、何か勘違いしていらっしゃいますね」
「わかっているのよ。お前は王女と同じ……残忍な変態!」
「だから?そんなことより、迎えに来てあげた私への感謝の一言があって然るべきだと思いますが」
「……え?」
ヘレネは猜疑心を隠さない。
身分のある侯爵令嬢が実の父親によって娼婦に堕とされたのだ。疑うことも覚えるだろう。父親を恐がり泣いて隠れていた元侯爵令嬢だが、その正体はザシャの拷問を傍観し被害者面でザシャの肉体に溺れた卑しい淫婦だ。
迎えに来たのは事実だが、助けるとは言っていない。
「あなたを引き取るのに大金を払いました。ついて来てください」
これも事実なのでヘレネはもう娼館に身をおくことはできなくなっていた。
逃げることもできただろう。だが私を通じてザシャとの再会が叶うかもしれないという欲はヘレネを扱いやすい人形に変えていた。
雨が降っていた。
私とヘレネは予め待たせていた桟橋から小舟に乗り海へ漕ぎだした。
漕ぎ手がザシャの付き人であったことに気づいたヘレネはその顔に期待を隠しきれず、更に従順になり私に詫びた。
それで私は問うてみたのだ。
「教えていただけませんか?答えによってあなたの処遇が変わることはありませんから、できれば正直に」
「なに?」
「レオンの父親が使用人に紛れていたのを、あなた、本当に知らなかったんですか?」
「……」
ヘレネは苦い表情で俯くと、暫しの沈黙を挟んだ後にこう答えた。
「お父様から逃げていたのよ。知るわけないでしょう」
私は沈黙で待った。ヘレネは声を荒げた。
「私は知らなかった!雇ったのはお父様よ!それなのにお父様は私がザシャとの関係を続ける為に隠していたのだろうと言って、レオンを見つけ出せなかった自分の非を全て私のせいにして私を勘当して貶めたの!」
「わかりました」
「一度でも訊かれていたら私だってなんとかしようと思ったわ!」
「はいはい」
「何度レオンと顔を合わせたと思っているの!?その時の私がメラーのことを隠していたと思う!?」
「ああ、そんな器用さはあなたにはありませんね」
「そうよ!」
ヘレネは父親に対して怒っているようだ。
レオンの父親がその何千倍も怒り狂っていることには思い至らないのだろうか。まさか平民の親子の心情など気に掛ける必要すらないと思っているのか。
「落ち着いてください。揺れます」
ある意味逞しくなったようにも思えるが、元々脆かった心がついに壊れたと考えてもいいかもしれない。
だが私はヘレネの心情を慮る気は毛頭なかった。
雨は徐々に小雨になったが、空は益々暗くなっている。
やがて小舟は海上の巨大な影に吸い寄せられ、甲板から縄梯子が垂らされ、私は立ち上がりヘレネにもそれを強いた。ヘレネは動揺と警戒を見せたが当然ながらもう逃げ場もなく縄梯子に手を掛ける。迎えに立っていた船員の男にヘレネが引き上げられたのを見届けて、私も縄梯子を登った。
「!」
冷たい雨によって指がかじかみ濡れた手袋のせいでうっかり手を滑らせ私は一瞬だけ転落しかけたが、その時ローブ姿の女がぐっと身を乗り出してきて私の手首を掴み、態勢を立て直すには充分な力で引き戻した。ジェーンだった。
ヘレネは気付かなかったのか、或いは気づかないふりをしたのか、ジェーンには目もくれない。却ってジェーンの方がローブで顔を隠した。
私はヘレネの背を押した。
「あなたには此処である人物の身の周りの世話をしていただきます。着替える前に一度顔を見ておきましょう」
ジェーンが父親と共謀し捏造した設計図を元に急ごしらえで用意された拷問船。ここで私たちの秘密の宴が始まろうとしている。
内部へと進みながらヘレネも幾らか察した様子で辺りを観察していた。
広間に近づくにつれ厳かな聖歌が耳に届くようになるとヘレネは固唾を呑み何度か足を止めた。その度に私が背中を押して促さなければならなかった。
小さな広間はデシュラー伯爵家の宴を忠実に再現しており、加えて隣接する小部屋には医師たちが控えている。無論、この為に召集された正義の医師である。
「あなたは世話をするだけですよ」
私はヘレネの背中を押し、歩かせた。
王妃が私たちの到着に気づき、振り向かず右手を上げる。
王太子は据えられた椅子の周りをゆったりとした足取りで行き来しながらあらゆる裁きの言葉をつぶけている。
「時は満ちました」
王妃はその一言を厳かに告げた。
王太子が歩みを止める。そして身動きの取れないそれへと身を屈め顔を覗き込み言った。
「明日、正午に鐘が鳴る。聞こえないかもしれないが祈ってくれ。私の戴冠式だ」
ニコラス王太子からの最後の言葉となった。
王妃と王太子は揃って此方を向くと名残惜しさの欠片も見せずに歩いてくる。私は肩膝をつき頭を垂れた。まず王妃が私の肩に触れ通り過ぎる。それから王太子が私の肩を叩き明確な言葉で後を託す。
「地獄へ送り返せ」
「仰せのままに」
私は答えた。
胸は高鳴り、得も言われぬ興奮で今すぐにでも果ててしまいそうだ。
王妃と王太子を乗せるには私が乗って来たような小舟ではいけない。ライスト男爵が小型の護送船を回してあるはずであり、王族の二人は天候が安全なものに変わり次第それに乗り帰る。
椅子に座る姿勢で硬直しているソフィアの甘く蕩けるようなはちみつ色の瞳が私を見て揺れていた。怯えているのだ。私は外套から垂れる雫を指先で拭いながら獲物に近寄った。
薬が効いたソフィアは体の感覚を失ってはいるが、意識は鮮明だ。念の為だろうか余計な口枷などを嵌められている。
見開かれた目の、揺れる瞳に溜まる涙。それは懇願か、悔恨か。
最早そんなことはどうでもいい。
「お待たせしました、ソフィア。あなたから教わった数多の悦楽をたっぷりとその身に刻んでさしあげますよ。ああ……ずっとこの日を待ち侘びていました。やっと願いが叶う!そうでしょう?ねえ、ソフィア。楽しかったあの夜のことをあなたも忘れてはいないでしょう」
一筋の涙がソフィアの頬を伝う。
実に愉快な始まりの涙。記念すべき涙。
一通りの遊びを終えて薬が切れ始めた頃には心地よい悲鳴を聞くことができるだろう。その頃、果たしてソフィアの頬は乾いているだろうか。
否。
涙、汗、涎、そして血が、快楽を染め上げる。
絶叫しながらもっともっととせがんだ私をソフィアは忌避したが、私はどれだけ泣き叫ばれようと飽きも呆れもせずにその手を緩めることなく与えるつもりだ。純然たる苦痛を。
「あなたが私にしてくれたこと、ずっとしてさしあげたかったんですよ。全て覚えていますよ。余すところなく克明に。もっと気持ちいいことも二人で探していきましょう。時間はたっぷりありますよ。あなたが力尽きても私が弛まぬ努力と探求心で楽しませてさしあげます。いつまで?ええ、私が飽きるまでね」
ソフィアの顎に指をかけ、やや力を込め仰向かせる。薬は肉体を椅子の上に留める程度の効力があり、自由に動かすには繊細な気配りと根気が不可欠だ。
「今日からは、あなたが私のお人形です」
この後、私はジェーンから船内の案内を受けた。また、七日毎に物資が届けられるとのことだった。
ジェーンは私の残虐且つ嗜虐的な昂りには不快感を隠さなかったが、異端審問官を立ち会わせる拷問については至極乗り気であった。
王家が与える罰に役立てるとなれば、私も心行くまで堪能できる。
気兼ねなくさせてくれる相手が万が一命を落としたらと思えば手を抜くかされる側に徹するより他なかった。だが、相手がソフィアであればこの拷問は正当な刑罰であり、万が一のことがあっても不問とすると王家と教会からお墨付きを得ているから存分にのめり込める。本音をいえば、私は長引かせて楽しみたい。
王妃と王太子、そしてジェーンを見送り、私の宴が幕を開ける。
ヘレネはザシャとの再会という夢によってすぐに船上の役割を受け入れた。
私は王女として生まれ異教徒として死ぬ一人の女の頬をそっと撫でた。
「あなたが私を作ったんですよ、ソフィア。簡単に壊れたりしないでくださいね」
硬直し、痛覚を失くし、意識と視界だけは鮮明な肉人形の瞳が揺れた。
逆上した実の父親によって娼館に売り飛ばされたヘレネは既に客を取っていた。顔つきが凌辱されたかのように鬼気迫っているのを見て私は辟易した。
ザシャを買っていた自分を棚に上げ、不遇の犠牲者を気取っている。
どろりと濁った視線で私を捉えるとヘレネは言った。
「いい気味でしょう」
弱虫泣き虫侯爵令嬢は痛みを知り強くなったようだ。
「あなたは面白くありません」
私が返すとヘレネは堂々と食って掛かった。
「絶対に嫌よ!誰もザシャの代わりにはならない!ザシャの顔を知る男にはいくら積まれても抱かれたりしない!」
「はぁ」
溜息が洩れる。
「冗談じゃありませんよ。あなた、何か勘違いしていらっしゃいますね」
「わかっているのよ。お前は王女と同じ……残忍な変態!」
「だから?そんなことより、迎えに来てあげた私への感謝の一言があって然るべきだと思いますが」
「……え?」
ヘレネは猜疑心を隠さない。
身分のある侯爵令嬢が実の父親によって娼婦に堕とされたのだ。疑うことも覚えるだろう。父親を恐がり泣いて隠れていた元侯爵令嬢だが、その正体はザシャの拷問を傍観し被害者面でザシャの肉体に溺れた卑しい淫婦だ。
迎えに来たのは事実だが、助けるとは言っていない。
「あなたを引き取るのに大金を払いました。ついて来てください」
これも事実なのでヘレネはもう娼館に身をおくことはできなくなっていた。
逃げることもできただろう。だが私を通じてザシャとの再会が叶うかもしれないという欲はヘレネを扱いやすい人形に変えていた。
雨が降っていた。
私とヘレネは予め待たせていた桟橋から小舟に乗り海へ漕ぎだした。
漕ぎ手がザシャの付き人であったことに気づいたヘレネはその顔に期待を隠しきれず、更に従順になり私に詫びた。
それで私は問うてみたのだ。
「教えていただけませんか?答えによってあなたの処遇が変わることはありませんから、できれば正直に」
「なに?」
「レオンの父親が使用人に紛れていたのを、あなた、本当に知らなかったんですか?」
「……」
ヘレネは苦い表情で俯くと、暫しの沈黙を挟んだ後にこう答えた。
「お父様から逃げていたのよ。知るわけないでしょう」
私は沈黙で待った。ヘレネは声を荒げた。
「私は知らなかった!雇ったのはお父様よ!それなのにお父様は私がザシャとの関係を続ける為に隠していたのだろうと言って、レオンを見つけ出せなかった自分の非を全て私のせいにして私を勘当して貶めたの!」
「わかりました」
「一度でも訊かれていたら私だってなんとかしようと思ったわ!」
「はいはい」
「何度レオンと顔を合わせたと思っているの!?その時の私がメラーのことを隠していたと思う!?」
「ああ、そんな器用さはあなたにはありませんね」
「そうよ!」
ヘレネは父親に対して怒っているようだ。
レオンの父親がその何千倍も怒り狂っていることには思い至らないのだろうか。まさか平民の親子の心情など気に掛ける必要すらないと思っているのか。
「落ち着いてください。揺れます」
ある意味逞しくなったようにも思えるが、元々脆かった心がついに壊れたと考えてもいいかもしれない。
だが私はヘレネの心情を慮る気は毛頭なかった。
雨は徐々に小雨になったが、空は益々暗くなっている。
やがて小舟は海上の巨大な影に吸い寄せられ、甲板から縄梯子が垂らされ、私は立ち上がりヘレネにもそれを強いた。ヘレネは動揺と警戒を見せたが当然ながらもう逃げ場もなく縄梯子に手を掛ける。迎えに立っていた船員の男にヘレネが引き上げられたのを見届けて、私も縄梯子を登った。
「!」
冷たい雨によって指がかじかみ濡れた手袋のせいでうっかり手を滑らせ私は一瞬だけ転落しかけたが、その時ローブ姿の女がぐっと身を乗り出してきて私の手首を掴み、態勢を立て直すには充分な力で引き戻した。ジェーンだった。
ヘレネは気付かなかったのか、或いは気づかないふりをしたのか、ジェーンには目もくれない。却ってジェーンの方がローブで顔を隠した。
私はヘレネの背を押した。
「あなたには此処である人物の身の周りの世話をしていただきます。着替える前に一度顔を見ておきましょう」
ジェーンが父親と共謀し捏造した設計図を元に急ごしらえで用意された拷問船。ここで私たちの秘密の宴が始まろうとしている。
内部へと進みながらヘレネも幾らか察した様子で辺りを観察していた。
広間に近づくにつれ厳かな聖歌が耳に届くようになるとヘレネは固唾を呑み何度か足を止めた。その度に私が背中を押して促さなければならなかった。
小さな広間はデシュラー伯爵家の宴を忠実に再現しており、加えて隣接する小部屋には医師たちが控えている。無論、この為に召集された正義の医師である。
「あなたは世話をするだけですよ」
私はヘレネの背中を押し、歩かせた。
王妃が私たちの到着に気づき、振り向かず右手を上げる。
王太子は据えられた椅子の周りをゆったりとした足取りで行き来しながらあらゆる裁きの言葉をつぶけている。
「時は満ちました」
王妃はその一言を厳かに告げた。
王太子が歩みを止める。そして身動きの取れないそれへと身を屈め顔を覗き込み言った。
「明日、正午に鐘が鳴る。聞こえないかもしれないが祈ってくれ。私の戴冠式だ」
ニコラス王太子からの最後の言葉となった。
王妃と王太子は揃って此方を向くと名残惜しさの欠片も見せずに歩いてくる。私は肩膝をつき頭を垂れた。まず王妃が私の肩に触れ通り過ぎる。それから王太子が私の肩を叩き明確な言葉で後を託す。
「地獄へ送り返せ」
「仰せのままに」
私は答えた。
胸は高鳴り、得も言われぬ興奮で今すぐにでも果ててしまいそうだ。
王妃と王太子を乗せるには私が乗って来たような小舟ではいけない。ライスト男爵が小型の護送船を回してあるはずであり、王族の二人は天候が安全なものに変わり次第それに乗り帰る。
椅子に座る姿勢で硬直しているソフィアの甘く蕩けるようなはちみつ色の瞳が私を見て揺れていた。怯えているのだ。私は外套から垂れる雫を指先で拭いながら獲物に近寄った。
薬が効いたソフィアは体の感覚を失ってはいるが、意識は鮮明だ。念の為だろうか余計な口枷などを嵌められている。
見開かれた目の、揺れる瞳に溜まる涙。それは懇願か、悔恨か。
最早そんなことはどうでもいい。
「お待たせしました、ソフィア。あなたから教わった数多の悦楽をたっぷりとその身に刻んでさしあげますよ。ああ……ずっとこの日を待ち侘びていました。やっと願いが叶う!そうでしょう?ねえ、ソフィア。楽しかったあの夜のことをあなたも忘れてはいないでしょう」
一筋の涙がソフィアの頬を伝う。
実に愉快な始まりの涙。記念すべき涙。
一通りの遊びを終えて薬が切れ始めた頃には心地よい悲鳴を聞くことができるだろう。その頃、果たしてソフィアの頬は乾いているだろうか。
否。
涙、汗、涎、そして血が、快楽を染め上げる。
絶叫しながらもっともっととせがんだ私をソフィアは忌避したが、私はどれだけ泣き叫ばれようと飽きも呆れもせずにその手を緩めることなく与えるつもりだ。純然たる苦痛を。
「あなたが私にしてくれたこと、ずっとしてさしあげたかったんですよ。全て覚えていますよ。余すところなく克明に。もっと気持ちいいことも二人で探していきましょう。時間はたっぷりありますよ。あなたが力尽きても私が弛まぬ努力と探求心で楽しませてさしあげます。いつまで?ええ、私が飽きるまでね」
ソフィアの顎に指をかけ、やや力を込め仰向かせる。薬は肉体を椅子の上に留める程度の効力があり、自由に動かすには繊細な気配りと根気が不可欠だ。
「今日からは、あなたが私のお人形です」
この後、私はジェーンから船内の案内を受けた。また、七日毎に物資が届けられるとのことだった。
ジェーンは私の残虐且つ嗜虐的な昂りには不快感を隠さなかったが、異端審問官を立ち会わせる拷問については至極乗り気であった。
王家が与える罰に役立てるとなれば、私も心行くまで堪能できる。
気兼ねなくさせてくれる相手が万が一命を落としたらと思えば手を抜くかされる側に徹するより他なかった。だが、相手がソフィアであればこの拷問は正当な刑罰であり、万が一のことがあっても不問とすると王家と教会からお墨付きを得ているから存分にのめり込める。本音をいえば、私は長引かせて楽しみたい。
王妃と王太子、そしてジェーンを見送り、私の宴が幕を開ける。
ヘレネはザシャとの再会という夢によってすぐに船上の役割を受け入れた。
私は王女として生まれ異教徒として死ぬ一人の女の頬をそっと撫でた。
「あなたが私を作ったんですよ、ソフィア。簡単に壊れたりしないでくださいね」
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