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「お父様やお母様と私の悪口言ってたわね!」

寝室に戻って来たリカードに私は泣き喚きながら噛みついた。

「違うよ」
「何が違うのよ!聞いたの!この耳で!」
「あれは……」
「私にはあなたと結婚する資格がなかったって!」
「そんなことは言ってないよ。オリヴィア、聞いて」
「嘘つき!あなただけはそんなことしないって信じてたのに、結局は私に欠陥があることにして、正当化して離れていくんだわ!!」
「しないよ」
「もう嘘つかないで!あなたが嘘をつくなんて、もうお終いよ!ああ……っ、あっ、この世界は……真っ暗で……」

酷い眩暈と頭痛で崩れ落ちた私を咄嗟にリカードが支えた。
私の知らないリカードに身を任せたくなかったが、私には僅かに身を捩る以上の抗える力が残されていなかった。

「嫌よぉ……っ、あなただけは……リカードのままでいてほしかったのに……っ」

背後から私を抱きかかえるように跪いたリカードの胸に身を沈め、虚空を睨み泣きじゃくる。そうしながら腹部に回る堅牢なリカードの腕を叩いた。

「あなたが言ったんじゃない……!私と結婚したいって……!私と結婚できて嬉しいって……!」
「嬉しいよ……」

声でリカードも泣いているのがわかった。

「じゃあ何故あんな陰口をしていたの……っ?みんなして、破談になった無様な私を仕方なく飼ってくれて、どうもありがとうね!!」

言いながら、悲しくて、悲しくて、涙が止まらない。
私の世界はもうリカードさえいない。

こんな事なら帰って来てくれなくてよかった。
私を一度喜ばせてから傷つけるなんて、そんなリカードなら知りたくなかった。

私を置いてお城に行ってしまった、大好きだった幼馴染のリカード。そんなあなたでいてほしかった。

「そうじゃないんだよ。オリヴィア、君は体調が優れないからたくさん寝なくちゃいけないだろう?」
「ほら私のせいにする!」
「聞いて、オリヴィア」
「私が間違ってるって言うの!?私が邪魔なら結婚しなければよかったじゃない!!間違えたのはあなたよ!!」

泣き喚く私を、リカードは子守りでもするように優しい声であやしながら撫でる。その声や手つきが優しくて、やはり泣いているように聞こえて辛い。

こんなに辛そうに泣いて、笑って誤魔化して、私との結婚を悔やんでいる。

「君と結婚できて嬉しいよ」
「嘘ばっかり!もうやめて!」
「君が元気いっぱいの体なら、僕と一緒に宮殿で……いろいろ……楽しい暮らしが送れたかもしれないねって、おじさんは言いたかったんだよ」
「お城に帰りたいならそうしなさいよ!」

許せない……酷い……

「お城の暮らしを思い描いたんじゃない。君が元気で、泣かなくていい毎日を思い浮かべたんだ……っ」
「うるさい……っ」
「君が苦しまなくて済む日々を……」
「うるさい!」

……でも、リカードが可哀相で、リカードを苦しめる私が許せなくて、リカードに泣かないでただ笑っていてほしくて、それが私のせいで適わないならいっそ私なんかいなければいいと気づいた。

「そんなに私が気に入らないなら殺してよ!どうせあの湖で死ぬところだったんだから!助からなければよかったのよ!殺して!!」
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