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ジェイドは私の為に怒ってくれたが、それは氷の膜の外で起きたことだった。
そのせいで懲罰房に入れられたと聞き申し訳なくなった。でも、ジェイドは光の中で生きていく人だから、きっと大丈夫だろう。
もう私はいなくなるから、大丈夫。
私はまた新しい部屋に移され、扉には鍵が掛けられた。
〝暁の子〟の役割は終わったのだ。
美しい夢と、優しい夢を、ほんの一時、見せて貰えた。
私が産まれてきた意味は、私を見る人によって変わる。
憎むもの、蔑むもの、詰るもの、虐げるもの、切り刻むもの、葬るもの────愛するもの。
私は白く分厚い格子窓に触れながら、私を愛してくれた人の顔を思い浮かべ微笑んだ。この思い出だけで生きていける。
残されたのが数日なのか、数年なのかはわからない。
この優しい夢の中で、その時が来るまで微睡んでいたい。
雪が解けた頃、私の夢は醒めるのだろうか。
養父は私に自ら死を選ぶ道を示している。
私が宛がわれた新しい部屋は充分すぎるほど上質な内装ではあるものの、内側から扉を開けることはできない。私は鎖に繋がれてもおらず、贅沢な食事も与えられる。
ベッドのすぐ近くに狭い螺旋階段があり小さな塔に繋がっている。見張りの為の部屋だったのかもしれない。その窓の鍵は壊されており、私なら抜け出すことができる。ただ、窓の外は尖った屋根で、いくら私でも踊りながら地上まで下り立つなど不可能だ。
雪が積もっている。
雪は、私の体を抱きとめるかもしれない。
ただ私は、美しい元国軍本部の外観をよく覚えていた。
石柱や花壇の柵がある。
雪の下には私を貫く杭が待っている。
私はスカーレイのもとへ行ける。
「……」
でもスカーレイは言ったのだ。
私に「生きて」と。
私の命は、私のものなのだろうか。
「……」
私の体も、私の命も、はじめから私以外の誰かのためのものだった。
私を見て、私に名前をくれたスカーレイは死んでしまった。
私に笑顔をくれたフローラ姫は、ジェイドが安全なところへ逃がしてくれた。
私を愛してくれたジェイドに、汚れた私など相応しくない。
ヴィクターは殺した。
やるべきことは終わってしまった。
ルビーだろうと、スノウだろうと、私自身が心から熱望したのはヴィクターの無残な死だった。
「……」
自分が何故泣いているのかも、もう、わからなくなってしまった。
ただわかっているのは、私はもうジェイドには相応しくないという事実だ。
寂しい。
辛い。
もう疲れてしまった。
「……スカーレイ様……ごめんなさい……」
もう無理。
だけど、あなたになら、会いに行ける。
「ごめんなさい……」
泣きながら私は塔への螺旋階段を上った。
その日は猛烈な吹雪のために、鍵の壊れた窓でも開かなかった。私の力では開かない。
──雪解けを待つのか。
養父の声が深く、深く、響いた。
そのせいで懲罰房に入れられたと聞き申し訳なくなった。でも、ジェイドは光の中で生きていく人だから、きっと大丈夫だろう。
もう私はいなくなるから、大丈夫。
私はまた新しい部屋に移され、扉には鍵が掛けられた。
〝暁の子〟の役割は終わったのだ。
美しい夢と、優しい夢を、ほんの一時、見せて貰えた。
私が産まれてきた意味は、私を見る人によって変わる。
憎むもの、蔑むもの、詰るもの、虐げるもの、切り刻むもの、葬るもの────愛するもの。
私は白く分厚い格子窓に触れながら、私を愛してくれた人の顔を思い浮かべ微笑んだ。この思い出だけで生きていける。
残されたのが数日なのか、数年なのかはわからない。
この優しい夢の中で、その時が来るまで微睡んでいたい。
雪が解けた頃、私の夢は醒めるのだろうか。
養父は私に自ら死を選ぶ道を示している。
私が宛がわれた新しい部屋は充分すぎるほど上質な内装ではあるものの、内側から扉を開けることはできない。私は鎖に繋がれてもおらず、贅沢な食事も与えられる。
ベッドのすぐ近くに狭い螺旋階段があり小さな塔に繋がっている。見張りの為の部屋だったのかもしれない。その窓の鍵は壊されており、私なら抜け出すことができる。ただ、窓の外は尖った屋根で、いくら私でも踊りながら地上まで下り立つなど不可能だ。
雪が積もっている。
雪は、私の体を抱きとめるかもしれない。
ただ私は、美しい元国軍本部の外観をよく覚えていた。
石柱や花壇の柵がある。
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「……」
でもスカーレイは言ったのだ。
私に「生きて」と。
私の命は、私のものなのだろうか。
「……」
私の体も、私の命も、はじめから私以外の誰かのためのものだった。
私を見て、私に名前をくれたスカーレイは死んでしまった。
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ルビーだろうと、スノウだろうと、私自身が心から熱望したのはヴィクターの無残な死だった。
「……」
自分が何故泣いているのかも、もう、わからなくなってしまった。
ただわかっているのは、私はもうジェイドには相応しくないという事実だ。
寂しい。
辛い。
もう疲れてしまった。
「……スカーレイ様……ごめんなさい……」
もう無理。
だけど、あなたになら、会いに行ける。
「ごめんなさい……」
泣きながら私は塔への螺旋階段を上った。
その日は猛烈な吹雪のために、鍵の壊れた窓でも開かなかった。私の力では開かない。
──雪解けを待つのか。
養父の声が深く、深く、響いた。
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