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12(パトリック)
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宮殿では今頃、第五王子ファロン殿下が異国から迎えた姫君と結婚式を挙げている。
結婚式そのものの参列は王族及び両王族と親密な上級貴族までというのは当然だ。問題は、その後の半年に渡る婚礼の宴の方だった。
全国民が招待されている。
宮殿の前庭までなら平民さえ立ち入ることができ宴への参加が叶うというのに、ラムリー伯爵である私は妻が酒乱で外出もままならない。
併し、それでは領民に示しがつかない。
若くして爵位を継承した私は必死にやってきた。ラムリー伯爵家の名誉の為であり、ラムリー伯領に生きる領民の為だった。
国を挙げての祝宴から爪弾きとは、面目ないでは済まされない問題である。
私は決意した。
亡き母の主治医だった一家を呼び戻し、妻リリアナの状態を説明して治療を命じた。酷い羞恥心に苛まれたが仕方なかった。
医者一家も王国の民である。
三交代制にした上、一班ずつ婚礼の宴に参加できるように計らった。
泥酔しているリリアナを置いて王都へ旅発つのは難しいことではなかった。
宴へ向かう行列がそこかしこで見られ、土産屋や宿屋も乱立し素晴らしい賑わいだ。
歴史に残る祝祭である。誰もが幸福な雰囲気に浮かれ、平民の子どもたちまでも輝いている。
「……」
私は、不幸だ。
結婚相手を間違え、現在、不幸の底で悪妻という沼に沈もうとしている。
宮廷騎士と義妹ビビアンをモデルに作られた喜歌劇が宮廷で披露されてからというもの、風当りはかなりましなものになった。
妻リリアナは不満のようだが、笑われているだけ有難いのだ。
「おっ、ラムリー伯爵ではないですか!」
「あ……」
短い期間だったとはいえ非難を浴び辛かった。
それが今では顔見知りの貴族は笑顔で声を掛けてくれるのである。揶揄い、皮肉を言い、嘲笑う為だとしても、少なくとも言葉の暴力や冷たい視線に晒されずに済む。
「奥様は?」
「妻は、体調が優れませんので……私一人でお祝いに伺うところです」
「おお!おめでとうございます!」
「?」
第五王子の結婚について場所を問わず祝福を述べるにしては、可笑しな雰囲気だ。
言葉に詰まっていた私は続く相手の言葉に愕然とした。
「例の劇の評判に加え、王族の結婚。もう貴殿の略奪愛なんて笑い話ですよ。産まれて来る子どもだって上手くやれば時の人。ラムリー伯爵家は安泰ですな」
「!?」
なんということだ。
妻リリアナの不調は、妊娠だと思われてしまったようだ。
「……」
併し、否定もできない。
王国を包む祝宴の雰囲気に水を差して再び非難を浴びるようなことは絶対に避けたい。もう嫌だ。
それに本当のことを言えるはずもない。
妻リリアナは酒に溺れ正気ではない、などと。
恥の上塗りになるだけだ。だから治療させている。
「……!」
私は、あの状態のリリアナと子を成さなければいけないのか!?
「……」
内心を悟られまいと顔面だけでも取り繕っていた私は、更に続けられた言葉に一瞬立ったまま気を失った。
「しかも貴殿の元婚約者レディ・シンシアはファロン王子が迎えた姫君の侍女に抜擢されたそうではないですか。宮殿内に浅からぬ人脈ができたと思えば役得でしたな、ラムリー伯爵」
結婚式そのものの参列は王族及び両王族と親密な上級貴族までというのは当然だ。問題は、その後の半年に渡る婚礼の宴の方だった。
全国民が招待されている。
宮殿の前庭までなら平民さえ立ち入ることができ宴への参加が叶うというのに、ラムリー伯爵である私は妻が酒乱で外出もままならない。
併し、それでは領民に示しがつかない。
若くして爵位を継承した私は必死にやってきた。ラムリー伯爵家の名誉の為であり、ラムリー伯領に生きる領民の為だった。
国を挙げての祝宴から爪弾きとは、面目ないでは済まされない問題である。
私は決意した。
亡き母の主治医だった一家を呼び戻し、妻リリアナの状態を説明して治療を命じた。酷い羞恥心に苛まれたが仕方なかった。
医者一家も王国の民である。
三交代制にした上、一班ずつ婚礼の宴に参加できるように計らった。
泥酔しているリリアナを置いて王都へ旅発つのは難しいことではなかった。
宴へ向かう行列がそこかしこで見られ、土産屋や宿屋も乱立し素晴らしい賑わいだ。
歴史に残る祝祭である。誰もが幸福な雰囲気に浮かれ、平民の子どもたちまでも輝いている。
「……」
私は、不幸だ。
結婚相手を間違え、現在、不幸の底で悪妻という沼に沈もうとしている。
宮廷騎士と義妹ビビアンをモデルに作られた喜歌劇が宮廷で披露されてからというもの、風当りはかなりましなものになった。
妻リリアナは不満のようだが、笑われているだけ有難いのだ。
「おっ、ラムリー伯爵ではないですか!」
「あ……」
短い期間だったとはいえ非難を浴び辛かった。
それが今では顔見知りの貴族は笑顔で声を掛けてくれるのである。揶揄い、皮肉を言い、嘲笑う為だとしても、少なくとも言葉の暴力や冷たい視線に晒されずに済む。
「奥様は?」
「妻は、体調が優れませんので……私一人でお祝いに伺うところです」
「おお!おめでとうございます!」
「?」
第五王子の結婚について場所を問わず祝福を述べるにしては、可笑しな雰囲気だ。
言葉に詰まっていた私は続く相手の言葉に愕然とした。
「例の劇の評判に加え、王族の結婚。もう貴殿の略奪愛なんて笑い話ですよ。産まれて来る子どもだって上手くやれば時の人。ラムリー伯爵家は安泰ですな」
「!?」
なんということだ。
妻リリアナの不調は、妊娠だと思われてしまったようだ。
「……」
併し、否定もできない。
王国を包む祝宴の雰囲気に水を差して再び非難を浴びるようなことは絶対に避けたい。もう嫌だ。
それに本当のことを言えるはずもない。
妻リリアナは酒に溺れ正気ではない、などと。
恥の上塗りになるだけだ。だから治療させている。
「……!」
私は、あの状態のリリアナと子を成さなければいけないのか!?
「……」
内心を悟られまいと顔面だけでも取り繕っていた私は、更に続けられた言葉に一瞬立ったまま気を失った。
「しかも貴殿の元婚約者レディ・シンシアはファロン王子が迎えた姫君の侍女に抜擢されたそうではないですか。宮殿内に浅からぬ人脈ができたと思えば役得でしたな、ラムリー伯爵」
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