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とある伯爵家の晩餐会に招かれたのは、奇しくも婚約解消からきっちり一ヶ月という日のことだった。
活発に社交界へと返り咲いた私を取り巻く環境は、婚約前とある一点が大きく異なっていた。
熱烈な求婚に首を縦にふってしまった幼い私は3年の年月を経てある程度の成熟を果たしていた。体形は完全に大人のそれになり、特に胸の膨らみについては著しく、如何なるドレスを着こなそうと鏡に映るのは妖艶な美女だった。
我ながら冷静な顔つきに似合わない豊かな胸。
魅力的の範囲に収めるためにはコルセット選びは最重要課題となる。一歩間違えればはしたない傷物令嬢であり、飢えた行き遅れに見え兼ねないのだ。
だが、私はさほど自分の成長を危惧してはいなかった。
貴族令嬢として慎ましく着飾るだけのお話。
「……!」
「なんと美しい……!」
息を飲むほど美しいと評されるパートランド伯爵令嬢フェルネという立ち位置はかなり気楽だった。
「エヴァンズ伯爵の倅はとんだ大馬鹿者だ」
「相手の小娘が如何なる美女或いは悪女であろうと、レディ・フェルネとの婚約を解消し身を滅ぼすだけの価値はなかったはずだ」
殿方から囁かれる元婚約者への批判も聞き飽きた頃。
適度な休憩も兼ねてダンスを断り続けた私の横に、一人の男性が静かに侍る。
黒髪に鋭利な切れ長の双眸、ダークブルーの瞳。
銀縁の眼鏡が知的且つ冷徹な印象を強調している。
グラスを差し出され私は素直に受け取った。
相手の存在は熟知している。
「ご機嫌如何かな」
「普通ですわ」
若きバラクロフ侯爵レジナルド卿。
私とは些末ながら因縁のある男だ。
「華麗なる復活に乾杯」
私ではなく大広間に目を向けたまま、バラクロフ侯爵は端的に祝辞を零す。
「ごめんなさい、もう口を付けましたわ」
「構わない」
「乾杯」
グラスを傾ける素振りで応じると、やはりそれで満足だったようでバラクロフ侯爵も隣で口を潤している。その鋭利な視線は銀縁の眼鏡越しに大広間をくまなく観察し続けていた。
私とどのような陰謀を囁きあおうというのか。
そう疑ってしまうような静かに張り詰めた空気が漂っていた。
そこで唐突にバラクロフ侯爵はこう切り出した。
「芳しい相手は?」
婚約解消となった私が次の相手を探す為に頻繁に社交界へ顔を出していると思われている。あながち間違いではない。
「さあ。これといって」
他意はなく事実を述べた。
私も同じように賑わう大広間を観察していると、続いてバラクロフ侯爵が事も無げに陰謀を持ち掛ける。
「そうか。では、結婚しないか?」
活発に社交界へと返り咲いた私を取り巻く環境は、婚約前とある一点が大きく異なっていた。
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だが、私はさほど自分の成長を危惧してはいなかった。
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「……!」
「なんと美しい……!」
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適度な休憩も兼ねてダンスを断り続けた私の横に、一人の男性が静かに侍る。
黒髪に鋭利な切れ長の双眸、ダークブルーの瞳。
銀縁の眼鏡が知的且つ冷徹な印象を強調している。
グラスを差し出され私は素直に受け取った。
相手の存在は熟知している。
「ご機嫌如何かな」
「普通ですわ」
若きバラクロフ侯爵レジナルド卿。
私とは些末ながら因縁のある男だ。
「華麗なる復活に乾杯」
私ではなく大広間に目を向けたまま、バラクロフ侯爵は端的に祝辞を零す。
「ごめんなさい、もう口を付けましたわ」
「構わない」
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グラスを傾ける素振りで応じると、やはりそれで満足だったようでバラクロフ侯爵も隣で口を潤している。その鋭利な視線は銀縁の眼鏡越しに大広間をくまなく観察し続けていた。
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「さあ。これといって」
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