1 / 10
1
しおりを挟む
気づいたら妹の罠にはまっている。
そんな事が幼い頃から繰り返されている。
妹のビヨネッタは幼い頃なら病弱だった。
高熱を出し生死の境を彷徨う事も何度かあった。それは事実。
でも10才頃からは体調も安定している。
同室の私はそれをよく知っている。
「マチルダお姉様、それ取って」
「自分でやりなさい」
「酷い!冷たいわ。それでも姉なの?姉なら妹の面倒を見なきゃだめよ」
病弱だった時代に両親から甘やかされたせいで、妹は恐ろしく我儘な令嬢に成長した。
そんな顔を見せるのは姉の私にだけなのだから質が悪い。
「お母様に言いつけるから!」
両親からすれば私はほったらかしで勝手に育つ健康な長女。
そんな私は、愛する価値のない娘らしい。
「まあ、マチルダ!どうしてそう意地悪ばかりするの!?」
「ビヨネッタは苦しみながら頑張って明るく振舞っているんだぞ?お前にはそれがわからないのか!?」
少し目を離した隙に死んでしまったかもしれない次女こそが、両親にとっては愛すべき娘。
「お父様。櫛くらい、ベッドを立って三歩で取れました」
「だったらお前が取ってやればいいだろう!」
「お父様……私はビヨネッタの召使いではありません」
パシン!
「……!?」
え、なにが起こったの?
私、今、頬を叩かれた?
「なんという口の利き方だ。お前にはがっかりした」
「どうして意地の悪いマチルダが健康で、優しくて愛らしいビヨネッタが病弱なんでしょう。私がいけなかったのかしら。妊娠中、よくない事をしてしまったのかしら」
「いいや、お前のせいではない。マチルダには充分教育を施した。勝手に心を歪ませたのだ。妹を妬んでいる」
「困ったものだわ」
私が愕然と頬を押さえている姿を見てビヨネッタはほくそ笑んでいる。
私が両親から不当な扱いを受けて傷つく姿を見る事が楽しいのね。
本当に心が歪んでいるのはどちらかしら。
ねえ、ビヨネッタ。
「お父様、お母様。お姉様を責めないで、私が悪かったの!」
そうやって苦しそうに胸を喘がせて嘘泣きをして善人ぶる。
「ああ、ビヨネッタ。あなたはなんて優しい子なの」
「お前が泣く事はないんだよ。マチルダは意地悪なんだ」
「あなたが悪かったなんて、そんなわけないじゃない」
「マチルダ。もっと妹に優しくしなさい。あなたは姉でしょう」
「そうだぞ、マチルダ。心でわからないというなら命令に従え。ビヨネッタの助けになれないなら出て行け」
こんな事が何度繰り返されただろう。
部屋に戻ると病弱で愛らしい次女ビヨネッタが馬鹿にしたように笑う事を、両親は知らない。
「というわけで、よろしくね?お姉様」
そんな事が幼い頃から繰り返されている。
妹のビヨネッタは幼い頃なら病弱だった。
高熱を出し生死の境を彷徨う事も何度かあった。それは事実。
でも10才頃からは体調も安定している。
同室の私はそれをよく知っている。
「マチルダお姉様、それ取って」
「自分でやりなさい」
「酷い!冷たいわ。それでも姉なの?姉なら妹の面倒を見なきゃだめよ」
病弱だった時代に両親から甘やかされたせいで、妹は恐ろしく我儘な令嬢に成長した。
そんな顔を見せるのは姉の私にだけなのだから質が悪い。
「お母様に言いつけるから!」
両親からすれば私はほったらかしで勝手に育つ健康な長女。
そんな私は、愛する価値のない娘らしい。
「まあ、マチルダ!どうしてそう意地悪ばかりするの!?」
「ビヨネッタは苦しみながら頑張って明るく振舞っているんだぞ?お前にはそれがわからないのか!?」
少し目を離した隙に死んでしまったかもしれない次女こそが、両親にとっては愛すべき娘。
「お父様。櫛くらい、ベッドを立って三歩で取れました」
「だったらお前が取ってやればいいだろう!」
「お父様……私はビヨネッタの召使いではありません」
パシン!
「……!?」
え、なにが起こったの?
私、今、頬を叩かれた?
「なんという口の利き方だ。お前にはがっかりした」
「どうして意地の悪いマチルダが健康で、優しくて愛らしいビヨネッタが病弱なんでしょう。私がいけなかったのかしら。妊娠中、よくない事をしてしまったのかしら」
「いいや、お前のせいではない。マチルダには充分教育を施した。勝手に心を歪ませたのだ。妹を妬んでいる」
「困ったものだわ」
私が愕然と頬を押さえている姿を見てビヨネッタはほくそ笑んでいる。
私が両親から不当な扱いを受けて傷つく姿を見る事が楽しいのね。
本当に心が歪んでいるのはどちらかしら。
ねえ、ビヨネッタ。
「お父様、お母様。お姉様を責めないで、私が悪かったの!」
そうやって苦しそうに胸を喘がせて嘘泣きをして善人ぶる。
「ああ、ビヨネッタ。あなたはなんて優しい子なの」
「お前が泣く事はないんだよ。マチルダは意地悪なんだ」
「あなたが悪かったなんて、そんなわけないじゃない」
「マチルダ。もっと妹に優しくしなさい。あなたは姉でしょう」
「そうだぞ、マチルダ。心でわからないというなら命令に従え。ビヨネッタの助けになれないなら出て行け」
こんな事が何度繰り返されただろう。
部屋に戻ると病弱で愛らしい次女ビヨネッタが馬鹿にしたように笑う事を、両親は知らない。
「というわけで、よろしくね?お姉様」
147
あなたにおすすめの小説
特殊能力を持つ妹に婚約者を取られた姉、義兄になるはずだった第一王子と新たに婚約する
下菊みこと
恋愛
妹のために尽くしてきた姉、妹の裏切りで幸せになる。
ナタリアはルリアに婚約者を取られる。しかしそのおかげで力を遺憾なく発揮できるようになる。周りはルリアから手のひらを返してナタリアを歓迎するようになる。
小説家になろう様でも投稿しています。
〖完結〗妹は病弱を理由に私のものを全て欲しがります。
藍川みいな
恋愛
侯爵令嬢のアイシャは、第一王子のリアムと婚約をしていた。
妹のローレンは幼い頃から病弱で、両親はそんな妹ばかりを可愛がり、ローレンの欲しがるものはなんでも与えていた。それは、アイシャのものでも例外はなかった。
「アイシャは健康でなんでも出来るのだから、ローレンが欲しがるものはあげなさい。」
そう言われ、ローレンが欲しがるものはなんでも奪われて来た。そして、ローレンはアイシャの婚約者であるリアム王子をも欲しがった。
「お願い、お姉様。リアム王子が好きなの。だから、私にちょうだい。」
ローレンが欲しがる事は分かっていた、そして両親も、
「ローレンは身体が弱いのだから、婚約者を譲りなさい。」
と、いつもどおりの反応。
ローレンは病弱でも何でもありません。演技が上手いだけです。
設定ゆるゆるの架空の世界のお話です。
全6話で完結になります。
完璧な妹に全てを奪われた私に微笑んでくれたのは
今川幸乃
恋愛
ファーレン王国の大貴族、エルガルド公爵家には二人の姉妹がいた。
長女セシルは真面目だったが、何をやっても人並ぐらいの出来にしかならなかった。
次女リリーは逆に学問も手習いも容姿も図抜けていた。
リリー、両親、学問の先生などセシルに関わる人たちは皆彼女を「出来損ない」と蔑み、いじめを行う。
そんな時、王太子のクリストフと公爵家の縁談が持ち上がる。
父はリリーを推薦するが、クリストフは「二人に会って判断したい」と言った。
「どうせ会ってもリリーが選ばれる」と思ったセシルだったが、思わぬ方法でクリストフはリリーの本性を見抜くのだった。
【完結済み】妹の婚約者に、恋をした
鈴蘭
恋愛
妹を溺愛する母親と、仕事ばかりしている父親。
刺繍やレース編みが好きなマーガレットは、両親にプレゼントしようとするが、何時も妹に横取りされてしまう。
可愛がって貰えず、愛情に飢えていたマーガレットは、気遣ってくれた妹の婚約者に恋をしてしまった。
無事完結しました。
お姉様は嘘つきです! ~信じてくれない毒親に期待するのをやめて、私は新しい場所で生きていく! と思ったら、黒の王太子様がお呼びです?
朱音ゆうひ@『桜の嫁入り』発売中です
恋愛
男爵家の令嬢アリシアは、姉ルーミアに「悪魔憑き」のレッテルをはられて家を追い出されようとしていた。
何を言っても信じてくれない毒親には、もう期待しない。私は家族のいない新しい場所で生きていく!
と思ったら、黒の王太子様からの招待状が届いたのだけど?
別サイトにも投稿してます(https://ncode.syosetu.com/n0606ip/)
婚約者を奪われた私が悪者扱いされたので、これから何が起きても知りません
天宮有
恋愛
子爵令嬢の私カルラは、妹のミーファに婚約者ザノークを奪われてしまう。
ミーファは全てカルラが悪いと言い出し、束縛侯爵で有名なリックと婚約させたいようだ。
屋敷を追い出されそうになって、私がいなければ領地が大変なことになると説明する。
家族は信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。
〖完結〗妹は私の物が大好きなようです。
藍川みいな
恋愛
カサブランカ侯爵家に双子として生まれた、姉のブレアと妹のマリベル。
妹は姉の物を全て欲しがり、全て譲ってきたブレア。
ある日、ダリアル公爵家長男のエルヴィンとの縁談が来た。
ダリアル公爵は姉のブレアを名指しし、ブレアとエルヴィンは婚約をした。
だが、マリベルはブレアの婚約者エルヴィンを欲しがり、ブレアを地下に閉じこめ、ブレアになりすまし結婚した...。
主人公ブレアがあまり出てきません。
本編6話+番外編1話で完結です。
毎日0時更新。
私と婚約破棄して妹と婚約!? ……そうですか。やって御覧なさい。後悔しても遅いわよ?
百谷シカ
恋愛
地味顔の私じゃなくて、可愛い顔の妹を選んだ伯爵。
だけど私は知っている。妹と結婚したって、不幸になるしかないって事を……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる