妹は病弱アピールで全てを奪い去っていく

希猫 ゆうみ

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部屋に戻れば妹に笑われる。

「びっくりした!お姉様ったら、急に叫ぶんだもの」
「……」

ビヨネッタは笑いながら私を叩いた。
何度も何度も私の体を叩きながら、本当に楽しそうに笑って、笑い過ぎて涙まで流していた。

もうだめ……

私が諦めればいい……
私が我慢すれば、大事にならず時間だけは過ぎていくのだ。

心を鎖してやり過ごす。
それしか私には自分を守る術が残されていなかった。

実際これには効果があった。
何が起きても気にせずに、ただ妹の言いなりになればいい。

ビヨネッタという一人娘を愛する一組の夫婦を、両親だと思わなければいい。

私は孤独だった。
でもそれは孤独を癒そうと努力するよりずっと楽な状態だった。

そして月日が流れてゆき、その夜が訪れた。
運命的な出会いを果たす、その夜が。

「さあ、ビヨネッタ。今夜はお城の舞踏会ですよ。あなたほどの愛らしさならきっと王子様に見初めてもらえますとも!」
「ビヨネッタ。少し疲れるかもしれないが頑張るんだよ。一家の運命が掛かっているのだからね」
「はい、お母様、お父様。私、精一杯頑張ります」

国中の未婚の令嬢が招待されたお城の舞踏会。
私はこれ以上ない程に着飾った妹の引き立て役として、礼儀を欠かない程度の地味なドレスで臨む。

舞踏会が始まっても、私は目立たないように壁際に佇んで踊る人々を眺めていた。
その中にはとても病弱とは思えない溌溂とした妹ビヨネッタの姿もあった。

きっとこれは私に関係ない夢のようなもの。
だから私までその気になって踊る必要はないし、そんな事をすればビヨネッタの邪魔をしたと言って両親から責められるのは目に見えている。

「失礼。御一緒しても?」
「?」

唐突に声を掛けられて、隣に人が立っていたと初めて気づいた。
グラス片手に壁に寄りかかるその人は、美しい金髪と蒼い目を持つ、美しい青年だった。

「僕はレオポルド。侯爵令息だ。君は?」
「わ、私は……」

私が名乗るのをレオポルドは黙って聞いていた。
身分差に緊張してしどろもどろになってしまう。そんな私を気遣ってか、レオポルドは穏やかに様々な話題を振ってくる。

「君は物静かで引っ込み思案に見えたけど、博識だね」
「そんな……」

褒められた。
認めてもらえた。

レオポルドなら心を開いても大丈夫。
そんな風に思わせてくれる彼とのお喋りはとても楽しくて、時間を忘れて話し込んだ。

「踊って頂けますか?」
「はい、喜んで」

ただの引き立て役として来たはずなのに……
私は素敵な侯爵令息とダンスフロアに舞い込んだ。

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