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でも、そんな楽しい時間は永遠には続かないものだ。
何曲か踊ってから再び壁際に戻ってお喋りしている所へ妹がいつの間にか忍び寄っていた。
この上ない程に残酷な瞬間に。
「マチルダ。僕は恋をしてしまった。もう君しか見えない。君が好きだ。愛してる。どうか僕と結婚してください」
「お姉様」
「?」
忘れていた。
このビヨネッタという存在を。
求婚の瞬間に話しかけるなんて、絶対、偶然ではない。
「やあ、君は?」
「私は妹のビヨネッタです」
「ああ、君たち姉妹なのか。どちらも違った意味で目立っていたけど、姉妹とは気づかなかったよ」
レオポルドの目が妹を捕えた瞬間、私は悟った。
夢から醒める時間だと。
「そんな!素敵なお姉様と比べられたら、私なんて……あっ」
「ビヨネッタ!」
わざとらしく妹が胸を押さえてよろめく。
レオポルドはビヨネッタを抱きとめた。私の心はみるみる凍り付いていく。
「どうしたんだい?ビヨネッタ!マチルダ、これはどういう事だ?」
「ごめんなさい、レオポルド様。私、ちょっと体が弱くて……」
嘘よ。
あんなに踊っていたのに。
「マチルダ。どうして黙っている?妹が心配じゃないのか?」
「あ……私も、少し、クラクラして」
それは事実だった。
レオポルドと踊った直後にすすめられたグラスにはお酒が入っていて、慣れない私は酔ってしまったのだ。
「は?妹に対抗してるのか?君がそんな女とは思わなかった」
「……」
「レオポルド様、いけません。お姉様を責めないであげて」
言いながら、ビヨネッタは一瞬、私に舌を出して見せる。
私は壁に背をつけて俯いた。
「ああ、なんていじらしい女の子なんだ。ビヨネッタ、大丈夫だよ、僕がついている。御両親の所まで連れて行ってあげるよ。さあ行こう」
「レオポルド様……」
さっきまで私を口説いていたレオポルドは、今は、ビヨネッタを大切そうに抱きかかえて背を向けている。
そして振り返った時にはもう、私を責める目つきで冷たい言葉を吐き捨てた。
「さっきの事は忘れてくれ。僕はビヨネッタに申し込む。余計な口を挟んだら許さないぞ」
「……」
私の返事を待たずにレオポルドはビヨネッタに笑顔を向け、歩き始めた。
ビヨネッタは何度か私のほうを向いては舌を出して笑い、私を馬鹿にしていた。
「……っ」
耐えられない。
もうこんな辛い思いはたくさん。
私は駆け出した。
大広間を抜けてバルコニーへと出る。手すりに寄りかかって蹲り泣いた。
「……っく、……う」
何時間そうして泣いていただろう。
溢れる涙も勢いを失い始めた頃、コツコツと乾いた足音が背後から近づいてくるのに気付き、私は恐る恐る振り向いた。
「……誰?」
何曲か踊ってから再び壁際に戻ってお喋りしている所へ妹がいつの間にか忍び寄っていた。
この上ない程に残酷な瞬間に。
「マチルダ。僕は恋をしてしまった。もう君しか見えない。君が好きだ。愛してる。どうか僕と結婚してください」
「お姉様」
「?」
忘れていた。
このビヨネッタという存在を。
求婚の瞬間に話しかけるなんて、絶対、偶然ではない。
「やあ、君は?」
「私は妹のビヨネッタです」
「ああ、君たち姉妹なのか。どちらも違った意味で目立っていたけど、姉妹とは気づかなかったよ」
レオポルドの目が妹を捕えた瞬間、私は悟った。
夢から醒める時間だと。
「そんな!素敵なお姉様と比べられたら、私なんて……あっ」
「ビヨネッタ!」
わざとらしく妹が胸を押さえてよろめく。
レオポルドはビヨネッタを抱きとめた。私の心はみるみる凍り付いていく。
「どうしたんだい?ビヨネッタ!マチルダ、これはどういう事だ?」
「ごめんなさい、レオポルド様。私、ちょっと体が弱くて……」
嘘よ。
あんなに踊っていたのに。
「マチルダ。どうして黙っている?妹が心配じゃないのか?」
「あ……私も、少し、クラクラして」
それは事実だった。
レオポルドと踊った直後にすすめられたグラスにはお酒が入っていて、慣れない私は酔ってしまったのだ。
「は?妹に対抗してるのか?君がそんな女とは思わなかった」
「……」
「レオポルド様、いけません。お姉様を責めないであげて」
言いながら、ビヨネッタは一瞬、私に舌を出して見せる。
私は壁に背をつけて俯いた。
「ああ、なんていじらしい女の子なんだ。ビヨネッタ、大丈夫だよ、僕がついている。御両親の所まで連れて行ってあげるよ。さあ行こう」
「レオポルド様……」
さっきまで私を口説いていたレオポルドは、今は、ビヨネッタを大切そうに抱きかかえて背を向けている。
そして振り返った時にはもう、私を責める目つきで冷たい言葉を吐き捨てた。
「さっきの事は忘れてくれ。僕はビヨネッタに申し込む。余計な口を挟んだら許さないぞ」
「……」
私の返事を待たずにレオポルドはビヨネッタに笑顔を向け、歩き始めた。
ビヨネッタは何度か私のほうを向いては舌を出して笑い、私を馬鹿にしていた。
「……っ」
耐えられない。
もうこんな辛い思いはたくさん。
私は駆け出した。
大広間を抜けてバルコニーへと出る。手すりに寄りかかって蹲り泣いた。
「……っく、……う」
何時間そうして泣いていただろう。
溢れる涙も勢いを失い始めた頃、コツコツと乾いた足音が背後から近づいてくるのに気付き、私は恐る恐る振り向いた。
「……誰?」
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