幼馴染か私か ~あなたが復縁をお望みなんて驚きですわ~

希猫 ゆうみ

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「レイチェル。君に折り入って相談があるんだ」
「ええ、なに?」
「実は、幼馴染のハリエットが……」

ああ、また。
私の婚約者にこびりついている、彼の幼馴染。

「ええ」

私にも人生がある。
だから私の婚約者であるマシューにも彼個人の人生があり、幼馴染のハリエットがマシューの人生の一部であることは理解できる。

ただ疑問なのは、マシューはいったい、私とハリエット、どちらが大切なのかということ。

人間の命は平等だから、どちらに価値があるかという比較はしなくてもいい。
とはいえ、どちらと人生を共に歩んでいくかは、一人の人間として個人が選択し、責任を持つべきことだ。それが人生なのだから。

そして私は婚約者。
私と結婚しても、幼馴染のハリエットに振り回されて生きていくつもりなのかしら?

「離婚した」
「……」

それは、貴婦人として一大事。

「そうなの」

嫌な予感がする。

「うん。それで、今ハリエットは酷く落ち込んでいて、毎日泣いて暮らしている。食事も喉を通らないみたいで、僕の助けが必要なんだ」
「御両親は……」

気の毒には思う。
併しながら、私は再来月に結婚を控えている。

相手は勿論、私に相談をもちかけている婚約者のマシューだ。

「君には申し訳ないが」
「ええ、いいの」

私は咄嗟に取り繕うための笑顔を浮かべた。
仮に私に妹のように可愛がって育った幼馴染がいたら、離婚で傷ついた心を慰めたいと思うだろう。人間として、人情というものは蔑ろにできない。

「傍にいてあげて。私は待ってるわ。でも、結婚式の打ち合わせには顔を見せてね」
「それなんだけど」

この時私は、予想より悪い事態に見舞われていると悟った。

誠実さを具現化したような真剣な眼差しでマシューが私の瞳を覗き込んで言った。

「結婚を延期したい」
「……」
「勿論、永遠にってわけじゃないよ。ただ、離婚したばかりのハリエットには僕らの結婚は負担が大きすぎるんだ」
「……はい?」

すると、私は赤の他人の出戻り令嬢のご機嫌が直り次第、結婚できるっていうこと?

「わかってほしい。レイチェル。ハリエットは君ほど強くないんだ」
「ハリエットが幸せでいることが、私が幸せになる前提条件なの?」
「そうじゃないけど、僕は、ハリエットの心を壊すと承知で君と結婚式を挙げても幸せにはなれないよ」

は?

「君との暮らしの中で、ずっと罪悪感や後悔を抱えることになる。そんな生活は君にとってもよくないだろう?君に責任はないんだし」

意味不明。
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