1 / 43
1
「レイチェル。君に折り入って相談があるんだ」
「ええ、なに?」
「実は、幼馴染のハリエットが……」
ああ、また。
私の婚約者にこびりついている、彼の幼馴染。
「ええ」
私にも人生がある。
だから私の婚約者であるマシューにも彼個人の人生があり、幼馴染のハリエットがマシューの人生の一部であることは理解できる。
ただ疑問なのは、マシューはいったい、私とハリエット、どちらが大切なのかということ。
人間の命は平等だから、どちらに価値があるかという比較はしなくてもいい。
とはいえ、どちらと人生を共に歩んでいくかは、一人の人間として個人が選択し、責任を持つべきことだ。それが人生なのだから。
そして私は婚約者。
私と結婚しても、幼馴染のハリエットに振り回されて生きていくつもりなのかしら?
「離婚した」
「……」
それは、貴婦人として一大事。
「そうなの」
嫌な予感がする。
「うん。それで、今ハリエットは酷く落ち込んでいて、毎日泣いて暮らしている。食事も喉を通らないみたいで、僕の助けが必要なんだ」
「御両親は……」
気の毒には思う。
併しながら、私は再来月に結婚を控えている。
相手は勿論、私に相談をもちかけている婚約者のマシューだ。
「君には申し訳ないが」
「ええ、いいの」
私は咄嗟に取り繕うための笑顔を浮かべた。
仮に私に妹のように可愛がって育った幼馴染がいたら、離婚で傷ついた心を慰めたいと思うだろう。人間として、人情というものは蔑ろにできない。
「傍にいてあげて。私は待ってるわ。でも、結婚式の打ち合わせには顔を見せてね」
「それなんだけど」
この時私は、予想より悪い事態に見舞われていると悟った。
誠実さを具現化したような真剣な眼差しでマシューが私の瞳を覗き込んで言った。
「結婚を延期したい」
「……」
「勿論、永遠にってわけじゃないよ。ただ、離婚したばかりのハリエットには僕らの結婚は負担が大きすぎるんだ」
「……はい?」
すると、私は赤の他人の出戻り令嬢のご機嫌が直り次第、結婚できるっていうこと?
「わかってほしい。レイチェル。ハリエットは君ほど強くないんだ」
「ハリエットが幸せでいることが、私が幸せになる前提条件なの?」
「そうじゃないけど、僕は、ハリエットの心を壊すと承知で君と結婚式を挙げても幸せにはなれないよ」
は?
「君との暮らしの中で、ずっと罪悪感や後悔を抱えることになる。そんな生活は君にとってもよくないだろう?君に責任はないんだし」
意味不明。
「ええ、なに?」
「実は、幼馴染のハリエットが……」
ああ、また。
私の婚約者にこびりついている、彼の幼馴染。
「ええ」
私にも人生がある。
だから私の婚約者であるマシューにも彼個人の人生があり、幼馴染のハリエットがマシューの人生の一部であることは理解できる。
ただ疑問なのは、マシューはいったい、私とハリエット、どちらが大切なのかということ。
人間の命は平等だから、どちらに価値があるかという比較はしなくてもいい。
とはいえ、どちらと人生を共に歩んでいくかは、一人の人間として個人が選択し、責任を持つべきことだ。それが人生なのだから。
そして私は婚約者。
私と結婚しても、幼馴染のハリエットに振り回されて生きていくつもりなのかしら?
「離婚した」
「……」
それは、貴婦人として一大事。
「そうなの」
嫌な予感がする。
「うん。それで、今ハリエットは酷く落ち込んでいて、毎日泣いて暮らしている。食事も喉を通らないみたいで、僕の助けが必要なんだ」
「御両親は……」
気の毒には思う。
併しながら、私は再来月に結婚を控えている。
相手は勿論、私に相談をもちかけている婚約者のマシューだ。
「君には申し訳ないが」
「ええ、いいの」
私は咄嗟に取り繕うための笑顔を浮かべた。
仮に私に妹のように可愛がって育った幼馴染がいたら、離婚で傷ついた心を慰めたいと思うだろう。人間として、人情というものは蔑ろにできない。
「傍にいてあげて。私は待ってるわ。でも、結婚式の打ち合わせには顔を見せてね」
「それなんだけど」
この時私は、予想より悪い事態に見舞われていると悟った。
誠実さを具現化したような真剣な眼差しでマシューが私の瞳を覗き込んで言った。
「結婚を延期したい」
「……」
「勿論、永遠にってわけじゃないよ。ただ、離婚したばかりのハリエットには僕らの結婚は負担が大きすぎるんだ」
「……はい?」
すると、私は赤の他人の出戻り令嬢のご機嫌が直り次第、結婚できるっていうこと?
「わかってほしい。レイチェル。ハリエットは君ほど強くないんだ」
「ハリエットが幸せでいることが、私が幸せになる前提条件なの?」
「そうじゃないけど、僕は、ハリエットの心を壊すと承知で君と結婚式を挙げても幸せにはなれないよ」
は?
「君との暮らしの中で、ずっと罪悪感や後悔を抱えることになる。そんな生活は君にとってもよくないだろう?君に責任はないんだし」
意味不明。
あなたにおすすめの小説
あなたなんて大嫌い
みおな
恋愛
私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。
そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。
そうですか。
私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。
私はあなたのお財布ではありません。
あなたなんて大嫌い。
【完結】他の人が好きな人を好きになる姉に愛する夫を奪われてしまいました。
山葵
恋愛
私の愛する旦那様。私は貴方と結婚して幸せでした。
姉は「協力するよ!」と言いながら友達や私の好きな人に近づき「彼、私の事を好きだって!私も話しているうちに好きになっちゃったかも♡」と言うのです。
そんな姉が離縁され実家に戻ってきました。
どう見ても貴方はもう一人の幼馴染が好きなので別れてください
ルイス
恋愛
レレイとアルカは伯爵令嬢であり幼馴染だった。同じく伯爵令息のクローヴィスも幼馴染だ。
やがてレレイとクローヴィスが婚約し幸せを手に入れるはずだったが……
クローヴィスは理想の婚約者に憧れを抱いており、何かともう一人の幼馴染のアルカと、婚約者になったはずのレレイを比べるのだった。
さらにはアルカの方を優先していくなど、明らかにおかしな事態になっていく。
どう見てもクローヴィスはアルカの方が好きになっている……そう感じたレレイは、彼との婚約解消を申し出た。
婚約解消は無事に果たされ悲しみを持ちながらもレレイは前へ進んでいくことを決心した。
その後、国一番の美男子で性格、剣術も最高とされる公爵令息に求婚されることになり……彼女は別の幸せの一歩を刻んでいく。
しかし、クローヴィスが急にレレイを溺愛してくるのだった。アルカとの仲も上手く行かなかったようで、真実の愛とか言っているけれど……怪しさ満点だ。ひたすらに女々しいクローヴィス……レレイは冷たい視線を送るのだった。
「あなたとはもう終わったんですよ? いつまでも、キスが出来ると思っていませんか?」
【完結】愛とは呼ばせない
野村にれ
恋愛
リール王太子殿下とサリー・ペルガメント侯爵令嬢は六歳の時からの婚約者である。
二人はお互いを励まし、未来に向かっていた。
しかし、王太子殿下は最近ある子爵令嬢に御執心で、サリーを蔑ろにしていた。
サリーは幾度となく、王太子殿下に問うも、答えは得られなかった。
二人は身分差はあるものの、子爵令嬢は男装をしても似合いそうな顔立ちで、長身で美しく、
まるで対の様だと言われるようになっていた。二人を見つめるファンもいるほどである。
サリーは婚約解消なのだろうと受け止め、承知するつもりであった。
しかし、そうはならなかった。
──いいえ。わたしがあなたとの婚約を破棄したいのは、あなたに愛する人がいるからではありません。
ふまさ
恋愛
伯爵令息のパットは、婚約者であるオーレリアからの突然の別れ話に、困惑していた。
「確かにぼくには、きみの他に愛する人がいる。でもその人は平民で、ぼくはその人と結婚はできない。だから、きみと──こんな言い方は卑怯かもしれないが、きみの家にお金を援助することと引き換えに、きみはそれを受け入れたうえで、ぼくと婚約してくれたんじゃなかったのか?!」
正面に座るオーレリアは、膝のうえに置いたこぶしを強く握った。
「……あなたの言う通りです。元より貴族の結婚など、政略的なものの方が多い。そんな中、没落寸前の我がヴェッター伯爵家に援助してくれたうえ、あなたのような優しいお方が我が家に婿養子としてきてくれるなど、まるで夢のようなお話でした」
「──なら、どうして? ぼくがきみを一番に愛せないから? けれどきみは、それでもいいと言ってくれたよね?」
オーレリアは答えないどころか、顔すらあげてくれない。
けれどその場にいる、両家の親たちは、その理由を理解していた。
──そう。
何もわかっていないのは、パットだけだった。
幼馴染と仲良くし過ぎている婚約者とは婚約破棄したい!
ルイス
恋愛
ダイダロス王国の侯爵令嬢であるエレナは、リグリット公爵令息と婚約をしていた。
同じ18歳ということで話も合い、仲睦まじいカップルだったが……。
そこに現れたリグリットの幼馴染の伯爵令嬢の存在。リグリットは幼馴染を優先し始める。
あまりにも度が過ぎるので、エレナは不満を口にするが……リグリットは今までの優しい彼からは豹変し、権力にものを言わせ、エレナを束縛し始めた。
「婚約破棄なんてしたら、どうなるか分かっているな?」
その時、エレナは分かってしまったのだ。リグリットは自分の侯爵令嬢の地位だけにしか興味がないことを……。
そんな彼女の前に現れたのは、幼馴染のヨハン王子殿下だった。エレナの状況を理解し、ヨハンは動いてくれることを約束してくれる。
正式な婚約破棄の申し出をするエレナに対し、激怒するリグリットだったが……。
夫は私を愛していないそうなので、遠慮なく離婚します。今さら引き止められても遅いです
藤原遊
恋愛
王妃付き護衛騎士である夫に、「お前を愛したことはない」と告げられた。
理由は単純。
愛などなくても、仕事に支障はないからだという。
──そうですか。
それなら、こちらも遠慮する必要はありませんね。
王妃の機嫌、侍女たちとの関係、贈り物の選定。
夫が「当然のように」こなしていたそれらは、すべて私が整えていたもの。
離婚後、少しずつ歯車は狂い始める。
気づいたときにはもう遅い。
積み上げてきた信用は、静かに崩れていく。
一方で私は、王妃のもとへ。
今さら引き止められても、遅いのです。
幼馴染の王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。
藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。
何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。
同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。
もうやめる。
カイン様との婚約は解消する。
でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。
愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません!
一度完結したのですが、続編を書くことにしました。読んでいただけると嬉しいです。
いつもありがとうございます。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。