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41(バレット)
「婚約破棄は無効だ!僕はフランシスカと結婚する!フランシスカを僕に返せぇっ!!」
小隊を引き連れたオリファント伯爵令息ウォルトンはどうも本気で言っているらしかった。
一応、迎撃態勢を整えはしたが正直なところ拍子抜けだ。
俺は父親たるマスグレイヴ伯爵と並び、馬上から呆然と相手の小隊を眺めている。
これと戦う必要はない。
「大袈裟じゃないですか?父上」
「進軍してくる様子はまともな小隊に見えた」
小隊には違いないが、こちらが本気で迎撃する姿勢を見せたからなのか、オリファント伯爵令息の背後に控える兵士たちは捨て駒としての覚悟を決め刮目し震えている。
フランシスカへの未練を発端にして血が流れるなど後味最悪だ。
「少なくとも元婚約者は本気ですね」
「買収しろ。得意だろう?」
次期マスグレイヴ伯爵として腕の見せ所というわけか。不毛だ。
「貴様!」
オリファント伯爵令息が慣れない手つきで俺に剣を向ける。
激しく不毛だ。
「僕の義理の父となるはずだったマスグレイヴ伯爵に取入り、僕から全てを奪った貴様だけは絶対に許さない!!」
「……」
「フランシスカを利用し幽閉して領地を乗っ取る気なんだろう!目を覚ましてくださいマスグレイヴ伯爵!息子になるのはこの僕です!!」
「……」
「フランシスカ!フランシスカぁっ!!迎えに来たよぉう!愛してるぅぅぅぅぅっ!!」
「ああ」
うんざりして溜息が洩れた。
醜悪。極悪。
そういった国賊を檻に入れ裁きを下して来た俺にとって、罪とは今日まで邪悪という意味だった。
だが、どうも勘違いだったようだ。
この世には他にも許し難い罪が存在していた。
愚かという大罪が。
「フランシスカぁぁぁぁぁっ!!君がいなければ生きている意味もないんだぁッ!お願いだぁッ!僕の元へ戻って来てくれよぉぉぉぉっ!フランシスカぁぁぁッ!!」
俺は同じ苦しみに宛てられている者同士として仮初の父親に問いかける。
「父親として腹が立たないんですか?」
「殺してくれ」
最初で最後、父子で心が通じた瞬間だっただろう。
もういっそ襲撃を真に受けて殲滅してやろうか。
そんな誘惑にかられた時だった。
「お前はフランシスカの相手を見誤るなよ?」
「……」
立場を思い出させられた。
俺は苛立ちと鬱憤をありがたく目の前の襲撃者に向けることにした。
「くたばれ!未練がましい色狂いに可愛い妹はやらねえよ!!」
「……へへっ」
狂人らしくオリファント伯爵令息が乾いた笑を洩らした。
「……」
違和感に鳥肌が立つ。
嫌な予感が突然俺を震わせた。
「待てよ……」
そもそも負け戦にしかならないはずの奇襲を何故オリファント伯爵が息子に許したのか。
息子を庇い続けているとしても、やりすぎだとわからないようではオリファント伯爵家が狂人の家系ということになってしまうだろう。
ここまで事を大袈裟にしておきながら、フランシスカに思いやりがなかったせいだとは何処の誰にも通用しない。
「──」
オリファント伯爵令息は馬鹿だ。
オリファント伯爵令息自体が捨て駒だ。
だとしたら、迎撃態勢を整えた俺たちを何処から狙う?
「?」
俺が周囲に目を走らせ、マスグレイヴ伯爵が訝しげに首を傾げた時。
「終わりだ。フランシスカと僕は引き裂かれた。もう生きている価値もない!」
オリファント伯爵令息が笑顔で手を振り上げ、兵士の一人が狼煙を上げた。
「……?」
数秒、困惑という沈黙が続いた後。
城の背後で凄まじい破壊音が轟いた。
土煙が、空に舞う。
小隊を引き連れたオリファント伯爵令息ウォルトンはどうも本気で言っているらしかった。
一応、迎撃態勢を整えはしたが正直なところ拍子抜けだ。
俺は父親たるマスグレイヴ伯爵と並び、馬上から呆然と相手の小隊を眺めている。
これと戦う必要はない。
「大袈裟じゃないですか?父上」
「進軍してくる様子はまともな小隊に見えた」
小隊には違いないが、こちらが本気で迎撃する姿勢を見せたからなのか、オリファント伯爵令息の背後に控える兵士たちは捨て駒としての覚悟を決め刮目し震えている。
フランシスカへの未練を発端にして血が流れるなど後味最悪だ。
「少なくとも元婚約者は本気ですね」
「買収しろ。得意だろう?」
次期マスグレイヴ伯爵として腕の見せ所というわけか。不毛だ。
「貴様!」
オリファント伯爵令息が慣れない手つきで俺に剣を向ける。
激しく不毛だ。
「僕の義理の父となるはずだったマスグレイヴ伯爵に取入り、僕から全てを奪った貴様だけは絶対に許さない!!」
「……」
「フランシスカを利用し幽閉して領地を乗っ取る気なんだろう!目を覚ましてくださいマスグレイヴ伯爵!息子になるのはこの僕です!!」
「……」
「フランシスカ!フランシスカぁっ!!迎えに来たよぉう!愛してるぅぅぅぅぅっ!!」
「ああ」
うんざりして溜息が洩れた。
醜悪。極悪。
そういった国賊を檻に入れ裁きを下して来た俺にとって、罪とは今日まで邪悪という意味だった。
だが、どうも勘違いだったようだ。
この世には他にも許し難い罪が存在していた。
愚かという大罪が。
「フランシスカぁぁぁぁぁっ!!君がいなければ生きている意味もないんだぁッ!お願いだぁッ!僕の元へ戻って来てくれよぉぉぉぉっ!フランシスカぁぁぁッ!!」
俺は同じ苦しみに宛てられている者同士として仮初の父親に問いかける。
「父親として腹が立たないんですか?」
「殺してくれ」
最初で最後、父子で心が通じた瞬間だっただろう。
もういっそ襲撃を真に受けて殲滅してやろうか。
そんな誘惑にかられた時だった。
「お前はフランシスカの相手を見誤るなよ?」
「……」
立場を思い出させられた。
俺は苛立ちと鬱憤をありがたく目の前の襲撃者に向けることにした。
「くたばれ!未練がましい色狂いに可愛い妹はやらねえよ!!」
「……へへっ」
狂人らしくオリファント伯爵令息が乾いた笑を洩らした。
「……」
違和感に鳥肌が立つ。
嫌な予感が突然俺を震わせた。
「待てよ……」
そもそも負け戦にしかならないはずの奇襲を何故オリファント伯爵が息子に許したのか。
息子を庇い続けているとしても、やりすぎだとわからないようではオリファント伯爵家が狂人の家系ということになってしまうだろう。
ここまで事を大袈裟にしておきながら、フランシスカに思いやりがなかったせいだとは何処の誰にも通用しない。
「──」
オリファント伯爵令息は馬鹿だ。
オリファント伯爵令息自体が捨て駒だ。
だとしたら、迎撃態勢を整えた俺たちを何処から狙う?
「?」
俺が周囲に目を走らせ、マスグレイヴ伯爵が訝しげに首を傾げた時。
「終わりだ。フランシスカと僕は引き裂かれた。もう生きている価値もない!」
オリファント伯爵令息が笑顔で手を振り上げ、兵士の一人が狼煙を上げた。
「……?」
数秒、困惑という沈黙が続いた後。
城の背後で凄まじい破壊音が轟いた。
土煙が、空に舞う。
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