壊れたセカイ

維織

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壊れたセカイ

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 世界はいつも平和だ
大人は働き子供は勉学に勤しみ老人は1日団欒して過ごす
戦争や戦いなんて存在しないようなほどの平和さ 
そして多くの命があった
だからかも知れない 
壊れたセカイが訪れた時の代償が大きいのは
 
「世界おはよう」
「ああ、琢磨か おはよう」
世界は幼なじみで少し名声がある天才だ
まあ、同じ学校に通ってるだけあって俺も天才と言われてはいるが
そして世界は科学を得意としている
つまり兵器や薬剤は作ろうと思えばいくらでも量産できてしまう
実際にはしないだろうが、恐ろしい事である
まあ、俺は世界を信頼しているし大丈夫だろう
心配と言えば...
「ところで琢磨 昨日私以外の女子と話していたがどういう事だ?」
「えっ、いやーあはは」
「答えろ じゃないと爆弾を落とすぞ」
時々世界は俺が女子と話すと嫉妬することがある
付き合ってもいないのに
度々それでなんども危機に陥った
「勉強の事を話してただけさ 分からないとこがあって...」
「なら私に聴けばいいだろう?学校で私が一番頭が良いのだから」
「事実だけど自分で言うなよな...」
「全く、私が何のために勉強していると思ってるんだ?」
「そんなのあれだろ 世界一の科学者になること」
「...ホントに君は鈍感だな」
世界は身体を震わせている
相当憤慨している模様だった
「ごめん、でも言ったじゃないか 幼い頃」
「...ああ、そうかもな でもわたしの夢は他にある 今の君には分からないだろう」
「そうか」
申し訳ないとは思っていたが自分でも何か思い出せやしない
きっととても大事なことなんだろう
「あっ、もう授業が始まる またな、琢磨」
「ああ 世界」
世界との会話を終えまた俺は忙しい学校生活を送り始める...
 
「あー疲れた」 
「だらしが無いな 琢磨は」
1日はあっという間に過ぎる もう既に放課後になっていた
「しょうがないだろ勉強ばっかしてるんだから」
「それもそうか じゃあ帰ろうか」
「ごめん、今日は用事があるんだ」
「... そうか」
世界は一瞬暗い顔をする
まさか気付いたのだろうか 俺が女子に呼び出された事を
これがバレたら非常に不味いと思い隠したのにもしバレたら水の泡だ
「また明日会おう」
「...そうだな また明日」
 
なんとか世界を誤魔化すことに成功した俺は呼び出された場所へ向かう
「えっと...実験室だよな」 
目的地に付いた時彼女は既に来ていた
鷺宮亜梨朱 彼女は世界と同じくらいの才女、そして美貌も持ち合わせていた
...もちろん世界のように欠点はあるのだが
「やっと来たわね 天使」
「なんだ 鷺宮お前が呼び出したのか」
「そうよ 文句ある?」
鷺宮の欠点は口の悪さ これに尽きる
黙っていれば普通に可愛いのに
「無いけどさ で、要件は?」 
そう言うと鷺宮は急に照れた表情で言う
「天使琢磨 わ、私と付き合いなさい!」
「あー付き合うねはいはい 何を買うんだ?」
「違うわよ!私と交際しなさいって事!」
俺は驚きすぎて目が点になった 
校内でトップレベルの美女(ツンデレ属性持ち)から告白されたんだから
正直接点もなかったが断る理由もなかったため告白をうけることにした 
「分かった付き合おう 亜梨朱」
「ほ、ホント?!よろしくね琢磨」
名前で呼び合う 実にリア充らしい事をした
この時は凄く幸せだった
初めて出来た彼女が超絶美女だったのだから
でも、幸せなんか長くは続かない
それが世界の鉄則だから
 
亜梨朱には事情を説明して登下校は今まで通り世界とすることにした
彼女が出来た なんて言ったらこの世の終焉なのだから
「...なぁ、琢磨 何かあったのか?」
「えっ?いや...特には」
「...嘘を付くのはやめた方がいい」
 世界の目は今までとは比べ物にならないくらい淀んだ目をしていた
仕方なく本当のことを話すことにした
「鷺宮亜梨朱 世界も知ってるだろ?」
「ああ 鷺宮さんがどうしたんだ?」
「実は俺はその亜梨朱と付き合うことになったんだ」
「...」
世界は案の定固まってしまった
そして、ここからだった壊れたセカイが訪れたのは
 
「はは アハハハハハハ!」
「ど、どうしたんだよ」
「ごめんごめん可笑しくてさ だってあんな雌豚が私の琢磨と付き合えるわけないだろう」
世界がもう何を言っているのか理解は出来なかった
今の世界はただ恐ろしく悍ましい
「亜梨朱のこと悪く言うなよ 付き合ってるのは本当なんだ」
「...どうして 」
世界の様子が異常だった
もう既に世界は 壊れていた
「どうしてって 告白されたから...」
「どうして私じゃないんだ!幼なじみでずっと一緒だった私じゃ...」
「ごめんな、世界...」
俺はもう恐ろしくなってその場を後にしてしまった
いま考えるとどうしてこんな愚かなことをしたのだろう
世界が何かするのは明らかだったのにな
「鷺宮亜梨朱 許さない...」 
俺は世界が何を言ったか聞き取れないままひたすら走りそこを後にした
 
私は鷺宮亜梨朱を憎み恨みただ探した
そして、標的は容易く見つけることが出来た
「鷺宮亜梨朱 見つけたぞ」
「神代さん...」
「どうして琢磨に手を出したんだ?私のものなのに」
「貴方のもの?そんな訳ないじゃない いい加減目を覚ましなさいよ!」
「反省の色なしか 仕方ない命は取らないつもりだったが...」 
私は密かに作り上げたスイッチを取り出す
それは目的のものを終わらせることが出来ることが出来る装置
人や動物なら命は尽き、物なら跡形もなく壊せる
そして便利なことに私が脳内で思ったものだけを終わらせることが出来るのだ だから、琢磨に被害が及ぶことは無い 実に完璧な発明である
「何をするつもり?」
「じゃあな地獄に堕ちろ 鷺宮亜梨朱」
私がスイッチを押すと鷺宮を何かが蝕んでいく 
「な、何よこれ!」
どうやら一瞬で終わらせることができる訳では無いらしい
じわじわと効果が出るものだった
そっちの方が痛ぶれる気分で好都合ではあったが
「最後に何か言いたいことはあるか?」 
「た、琢磨愛してる...」
「...死ね」
そして憎きモノは砕け散った
 
何か俺は嫌な予感がした
世界がとてつもないようなことをしでかすような
でも、答え合わせはすぐにやってくる
「琢磨 見つけたぞ」
「世界... 」
振り返ると世界が立っていた
それと同時に驚いてしまった
この世界がモノクロになっていた俺達2人以外の全てのものが壊れてしまっていたから
何が起こったかなんて一瞬で理解出来てしまった
世界がとてつもない発明をしてしまったのだ
最悪な結果を招いて
「会いたかった 琢磨 さあ、帰ろう私達のセカイへ」
「亜梨朱は、亜梨朱はどこだ」
「ああ そんな奴党の昔に壊してしまった 愛してる琢磨 とか言う戯れ言も残していってな」 
「そんな...亜梨朱...」
普段は感謝や謝罪など素直になることなんてなかった亜梨朱
それが今になって素直になってくれた、いやなってしまったのだ 
それを思ったら大粒の涙が出てきてしまう
そしてとてつもない虚無感に駆られた
「どうして泣いてるんだ?嬉しいだろ?」
「俺は嬉しい ああ嬉しい」 
俺はもう考えるのをやめた 
もう世界の発明を使わずとも俺は壊れてしまったのだ
そのトリガーは亜梨朱の死
亜梨朱が死んだ今何も考えることに意味を見い出せなかった
「私たち2人以外はもう壊した これから幸せになろうな 琢磨」
「俺は幸せ 世界と一緒なら幸せ」
「ああ、ずうっと幸せだ 壊れたセカイだけどこれから仲良く暮らそうな?琢磨」
それから俺達は狂った者同士壊れた世界セカイで仲良く暮らし続けた
それが最善だったから、それが運命だったから
 
あれから何年経っただろうか
いや、壊れた世界には時間なんて概念はないのだろう
「また私のお腹を蹴った 凄く元気な子に生まれそうだな」
「ああ 名前はどうするんだ?」
「そうだな女の子のはずだから 亜梨朱はどうだ?」
その名前を聞いても何も思い出せやしなかったけど何故か涙が零れてきた
「どうした?琢磨」
「いや、いい名前だなと思って...」
「そうだろう?早く元気に生まれてきてくれよ亜梨朱」 
「ああ...」
「ふふっ、私達しかいない世界はとても幸せだな」
「...そうだな」
今日も俺達は、俺と世界と亜梨朱は生き続ける
傍から見たらどこか可笑しい平和とはかけ離れた
壊れたセカイを
このセカイは世界によって造られたお伽噺のような狂った世界
それが幸せかどうかなんて分からない
でも、これだけは言える
セカイは壊れてしまったのだ と
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