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最終話『愛され幼馴染はときどきオオカミ』
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翌朝目を覚ますと、肩口すっぽりと収まる悠斗の頭があった。
微睡みながらいつものように顔を寄せようとすると、その小さな頭が跳ねるように持ち上がった。
「おはよう、アキちゃん! 最高の朝だね!」
「うっ……」
弾けるような笑顔とはこういうものをいうのだろう。
寝ぼけまなこには少々眩しすぎる顔面を前に、瑛は思わず身を引いて目を眇める。
大きな瞳をぱちぱちと瞬く悠斗の顔は、同じく――恐らく?――寝起きだというのにキラキラと輝かしい。
徐々に覚醒していく頭の中で事の次第を順に思い出した瑛は、手元のタオルケットをずるずると引き上げて顔を覆った。
「……夢かな」
視界を遮り、ため息混じりにつぶやいた声は見事に掠れていて、体を動かせば容赦なく腰痛が襲いかかる。何より経験したことのないあらぬ場所の違和感に一連の出来事が間違いなく現実であると突きつけられているようで、できる事ならもう少しだけ意識を失っていたかったと思った。
しかし悠斗はさっさとタオルケットを持ち上げると、堪えきれない笑みを浮かべながら中に潜り込んでくる。それから頭をぐりぐりと瑛の顔に押し付けた。
「いつもみたいにしてくれていいのに」
そう言って笑った悠斗は、「あれ、好きなんだよね」ときゅっと瑛の腕を抱きしめて体を寄せる。
「――気づいてたのか?」
「気づいてないと思った?」
上目遣いでこてん首をと傾げられたら、ため息を吐き出すことしかできない。
脱力する瑛を見てくすくすと笑った悠斗は、「そんなことより」と今度は真剣な面持ちになって尋ねた。
「体は大丈夫? 変なところとか、痛いところない? 肩、平気?」
「……大丈夫」
体のあちこちはもちろん、寝起きからバクバクと皮膚を破りそうになっている心臓だったり、いつもに増してやたらに眩しく見える悠斗の顔だったり、正直変なところだらけなのだが、そう答えるのが精一杯だった。
その一言に万感の思いが込められていることはもちろんお見通しなのだろう。
悠斗はよくよく瑛の顔色を伺ったあとに、にやりと笑う。
「ほんとに可愛いなぁアキちゃんは。大好き」
そう言って、まつ毛に小さなキスを落とした。
悠斗の一挙一動はいつもの数倍浮かれていて、持ち前の可愛らしさに加えてまるで周囲に花まで飛んでいるかのようだ。
こんな調子で外に出たら、すれ違う人全員が悠斗から目が離せなくなるのではないかと思う。
(昨日の夜はあんなに――)
と、不意に記憶の一端を回想してしまい、ぼぼぼっと音を立てる勢いで顔面が火照る。
口に出したつもりはないのに、悠斗は口角をきゅっと持ち上げて身を起こすと、瑛の左右に手をついて顔を寄せた。
「本当の僕は瑛だけが知っていればいいよ」
大きく目を瞠った瑛の視線の先に浮かぶのは柔和な笑顔だ。
だけど今は、その瞳の奥に潜む特別な色をもう知っている。
トクンと響いた胸の高鳴りを誤魔化すように、悠斗の首根に手を伸ばして引き寄せる。
これからも淡々と続いていくはずだった日常を軽々と覆すような、急転直下の出来事だった。
未だに狐につままれたような気持ちが拭えなくもないが、心の中は今までにないほど軽く、穏やかだ。
背中に腕を回すと、同じだけの力で抱き締め返される。
今朝はもう少しだけ、この特別なひとときの中に居たいと思った。
微睡みながらいつものように顔を寄せようとすると、その小さな頭が跳ねるように持ち上がった。
「おはよう、アキちゃん! 最高の朝だね!」
「うっ……」
弾けるような笑顔とはこういうものをいうのだろう。
寝ぼけまなこには少々眩しすぎる顔面を前に、瑛は思わず身を引いて目を眇める。
大きな瞳をぱちぱちと瞬く悠斗の顔は、同じく――恐らく?――寝起きだというのにキラキラと輝かしい。
徐々に覚醒していく頭の中で事の次第を順に思い出した瑛は、手元のタオルケットをずるずると引き上げて顔を覆った。
「……夢かな」
視界を遮り、ため息混じりにつぶやいた声は見事に掠れていて、体を動かせば容赦なく腰痛が襲いかかる。何より経験したことのないあらぬ場所の違和感に一連の出来事が間違いなく現実であると突きつけられているようで、できる事ならもう少しだけ意識を失っていたかったと思った。
しかし悠斗はさっさとタオルケットを持ち上げると、堪えきれない笑みを浮かべながら中に潜り込んでくる。それから頭をぐりぐりと瑛の顔に押し付けた。
「いつもみたいにしてくれていいのに」
そう言って笑った悠斗は、「あれ、好きなんだよね」ときゅっと瑛の腕を抱きしめて体を寄せる。
「――気づいてたのか?」
「気づいてないと思った?」
上目遣いでこてん首をと傾げられたら、ため息を吐き出すことしかできない。
脱力する瑛を見てくすくすと笑った悠斗は、「そんなことより」と今度は真剣な面持ちになって尋ねた。
「体は大丈夫? 変なところとか、痛いところない? 肩、平気?」
「……大丈夫」
体のあちこちはもちろん、寝起きからバクバクと皮膚を破りそうになっている心臓だったり、いつもに増してやたらに眩しく見える悠斗の顔だったり、正直変なところだらけなのだが、そう答えるのが精一杯だった。
その一言に万感の思いが込められていることはもちろんお見通しなのだろう。
悠斗はよくよく瑛の顔色を伺ったあとに、にやりと笑う。
「ほんとに可愛いなぁアキちゃんは。大好き」
そう言って、まつ毛に小さなキスを落とした。
悠斗の一挙一動はいつもの数倍浮かれていて、持ち前の可愛らしさに加えてまるで周囲に花まで飛んでいるかのようだ。
こんな調子で外に出たら、すれ違う人全員が悠斗から目が離せなくなるのではないかと思う。
(昨日の夜はあんなに――)
と、不意に記憶の一端を回想してしまい、ぼぼぼっと音を立てる勢いで顔面が火照る。
口に出したつもりはないのに、悠斗は口角をきゅっと持ち上げて身を起こすと、瑛の左右に手をついて顔を寄せた。
「本当の僕は瑛だけが知っていればいいよ」
大きく目を瞠った瑛の視線の先に浮かぶのは柔和な笑顔だ。
だけど今は、その瞳の奥に潜む特別な色をもう知っている。
トクンと響いた胸の高鳴りを誤魔化すように、悠斗の首根に手を伸ばして引き寄せる。
これからも淡々と続いていくはずだった日常を軽々と覆すような、急転直下の出来事だった。
未だに狐につままれたような気持ちが拭えなくもないが、心の中は今までにないほど軽く、穏やかだ。
背中に腕を回すと、同じだけの力で抱き締め返される。
今朝はもう少しだけ、この特別なひとときの中に居たいと思った。
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