平凡男の死亡フラグ回避方法

高梨ひかる

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第二章 隣国でも危険はいっぱい

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ということで隣国へ無事着きました。
着いた……のだが。
そこで俺は途方に暮れる羽目になった。

「降りられない……だと?」


普通の朝だった。
あとは一人ずつ降りていくだけの朝のはずだった。
最後の方に旅券を買ったので、検問が結構遅めということ以外は特に何も問題ないはずだった。
なのに念のため降りることを思い浮かべるとなんと、見覚えのある音がですね、ぽーんと。

なんでだよ。
船降りるの決まってるのに死亡フラグ立つとかどうにもならないじゃないか!
責任者出てこい!

隣国ということで一人一人検問があるわけなのだが、どうもそれに引っかかるっぽくて何度試しても同じ内容が表示されるのだ。
すごく無理ゲーです。
検問なしに隣国不正侵入とかやばすぎるだろ!
逮捕まったなしだよ!

ということで対策を考えるためログを閲覧。

――素直に身分証を見せ、検問を通るタイガ。
ところが門を出たところでにぎやかな声が聞こえ、ふと目を向けてみるとそこには避け続けていた村娘がいるではないか。
無意識によけようとしたタイガに目を付けた少女たちは、なんと――

「もうちょい表示して!?」

もう村娘見た瞬間に投げたくなるけど、それでもなにか変わらないかと想像してみるが結果はすべて同じ。
目をそらそうが、村娘を見ないようにしようが、俺は少女たちに呼び止められてしまうのだ。
そして何らかの死亡フラグが立つようなのだが肝心の内容がわからない。
スキルがある意味すらないという状態なのである。

ここにきて俺は、自分のスキルの致命的な弱点に気付いた。
何らかの不都合が起こるまではログに記載されるが、肝心の何が起こるかについてはこのログ表示してこないのである。
あと検問は船を降りてすぐのところで声をかけられるので、すでに検問が始まっている以上船を降りることも村娘を避けることもできない。
つまり八方塞がりだ。

「ええ……なんで俺だってばれるんだ?」

多分狙いは俺なのだということはわかっている。
わかってはいるが、肝心の何故俺なのかの部分が非常にあいまいだ。
酒場で聞いたように人間違いが起こるのだとしたら、顔はわかられていない可能性が高い。
とすれば何かしらが起こってばれるのだと思うのだが……。

「髪は魔法をかけなおしたし、服装も持ちモノもOK。検問後ということは年齢がわかるから見つかるはずない」

では、何故だ?
もう少し具体的に想像したら出るだろうか?

「んー……何かに反応してしまうのか? 村娘と目をそらしても無理ってどういうことだ……?」

日本語とか英語とかあるのかな?
と想像してみるが、特に反応はない。
降りることを考えるとログは表示されるので俺の反応のせいじゃないようだ。

「……もしかして鑑定される?」

考え込んだ瞬間、ポーン、と音がした。

――村娘に鑑定をされているのではときづいたタイガは、しばらく見つからないでいれば村娘は諦めるのではないかと門のところで立ち止まった。
ほどなくして悲鳴が響き、その場は混とんに包まれる。
一時騒ぎが収まるのを待ってみるも、一向に騒ぎは収まらない。
意を決して門を通ってみると、そこは血の海で村娘たちの死体がところせましと―――

「なんで死体だよ!!! 悪化しとるわ!!!」

捕まえに来る変な相手とはいえ、死んでほしいわけではないので非常に困る。
つまり門の前で待っていると村娘は惨殺死体になるらしい。
しかも複数。完全に詰んでいる。

「ええ……もうまじ、どうすればいいのこれ……?」

タイムリミットはあと30分。
検問時間は固定で動かせない。
村娘を避ければ村娘は殺され、時間通り門を抜ければ声をかけられる。


どうする、俺。


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