S級パーティから追放された幸運な僕、女神と出会い最強になる〜勇者より先に魔王討伐を目指す〜

灰色の鼠

文字の大きさ
54 / 62
第5章 ー黒竜侵食編ー

第51話 『混沌・光明な騎士と酒』

しおりを挟む
 

 ーーザザザザザザ。

 森の草で生い茂った地を踏みしめる大量の足音と、馬に乗りながら森を駆け抜けていく武装した集団の人影。

 その最前列で馬を走らせるのはやや褐色な肌が特徴的な騎士団長ユーリス。その横で同じく馬を走らせているのは、エルフ族の傭兵として有名な戦士筆頭のトレースだ。

「おやおやユーリス君。先程まではエルロンド様のお考えを反対して普段の仕事を全うしようとしていた筈なのでは?   それなのに、どうしてこんな所で馬に跨っているのだろうか?  ……幻でも見ているのだろうか?」

「ふん。騎士たる者、時には臨機応変に判断を覆すのだ。それがどれだけ理不尽であろうと騎士の使命がそれを正しいと判断すれば、誰がどう否定しようと正しいのだ」

 都合の良いように言いわけをサラッとユーリスは口にするが、その言葉に共感が持てないトレースは苦笑いをしながらユーリスからゆっくり視線をそらした。

「まあ仕方ないことだよね。だって確かこの国の北方には、姫様を幽閉している騎士団の城があるんだよね?  まだ報告はないものの、万が一黒竜がその城を攻撃していたら姫様が心配だ」

 少し余計な発言を混ぜつつトレースは、自分らが今むかっている精霊樹付近に位置している騎士団の拠点である城のことを考えていた。
 そして緊急会議時でのアルバンの必死の報告を思いだす。信じられない報告だったが、どうやら人族の青年ネロ・ダンタは騎士団をも圧倒するはずの脅威である黒竜をたった一人で、その手で討伐してしまったらしい。

 にわかに信じがたい話だが、女騎士ローラが前々からある事を口にしていたのをトレースはふと思いだした。

 確かあれはとある酒の席での話。
 泥酔いしてしまったローラの口から漏れてしまった言葉である。

『ーーどうやら彼には密かに、魔力に愛された我々エルフであろうと到底計り知れない異様な魔力を秘めているようなんだ。それも、いつ暴走してもおかしくない、とても膨大なヤツがな……ヒック……ああ気持ちいいわぁ』

 ネロと剣を交じり合って気がづいたと言っていたが、まだ断言できる程ではないらしい。だけど万が一を考えて、あまりネロに刺激を与えるなとトレースは前にローラに忠告を受けたことがあったが、正直まだピンとこない状態である。

「幽閉だと?  はっ、人聞きの悪いことを言うなよ。過剰な保護であろうと我ら騎士は彼女の安全を約束した身。多少の無礼は仕方がないだろう」

 自信満々に鼻で笑ってみせるユーリスを尻目に、トレースは「ん?」となんらかを察知したような声を漏らす。それを横目で見ていたユリースは彼のその表情の意味を察して、切り替えるように押し黙った。

 トレースが感じ取ったのは、いま進もうとしている前方から伝わってくる大気の微かな震え。目的地へと進につれ、なにか良からぬ異様な気配が周囲の森をざわつかせていた。

「……トレース、この感じは……もしかして」

「ああ、分かっているよ。黒竜から感じとった気配と同じもののようだ」

 遭遇した黒竜から感じたことのある、魔力放出によって引き起こる空間がひん曲がったような感覚。同時に前方から悪臭と言ってもいいぐらいに漂ってくる良からぬ臭い。

 後列で馬を走らせる騎士達の大半が顔をしかめてしまっていた。鼻を押さえてしまう者まで出ている。本来ならその行動を下品だと注意するはずの騎士団長ユーリスまでもが、それを仕方ないと判断して見逃していた。

 一方、普段から酒の臭いに慣れているためか、トレースは真顔で平常心を保ちながら馬を相変わらず器用に手綱で走らせてみせていた。
 まるで現場慣れしたような瞳を細め、ニヤリと微笑みながら嫌な顔をするユーリスの方に顔を向ける。

「フフ」

 その行動はもしかして挑発しているのか?  と捉えたユーリスの頭に一気に熱が込み上がってしまう。

「なんなんだよその澄ました顔はよぉ!!  言っとくけどな、俺みたいに清潔で清く正しい日々を送っているエルフではこの臭いはどうしようもできないんだよ!  貴様は良いよなぁ~毎回ゴミ溜め当然の現場にばかり派遣されて、おかげで鼻が慣れちまったんだろう!?  そうなんだろ!?」

 急に態度と口調が豹変したユーリスの言葉に、図星だと言わんばかりの表情にトレースは陥ってしまう。
 どうやらユーリスの発言そのものが、トレースにとっては真実のようだ。

「それは流石に痛いな……ユーリス君」

 苦笑いしながらトレースは言葉を返すが、一向に自信へと敵意をむけてくれないとイラつくユーリス。

「「なんなんだよ、あの会話は……?」」
 二人の背後で馬を走らせている騎士団の諸君らは、その光景を嫌々静かに見守っているのであった。

 だがそんな和やかな雰囲気も束の間、強大な威圧がトレースの感知範囲に侵入した瞬間、指を口に当たる合図によって周囲に沈黙が訪れる。騎士達は上司でもなんでもない戦士の指示に従い、揃ってその口を閉ざす。

 もうじき森の外にたどり着くのか木々の数がかなり減ってきたような気がして、ユーリスは気を引き締めるように大きな息を吐きだした。

 ここにやってきた目的はただ一つにすぎない筈。
 それは、ネロが本当にあの黒竜を屠ったのかどうかの確認をする為だけであって、こんな緊張感を味わう為ではない。
 なのに先程から感じるこの妙な胸騒ぎの正体はなんなのだろうか?

「ユーリス。あまり身構えなくてもいいんではないか?  ただ単に確認をしにっ………」

 トレースがなにかを口にしようとしていたが、その声を搔き消すような甲高い音が、静寂な森を蝕んでいった。
 耳を塞いでいく面々、先陣を切る戦士長と騎士団長も轟音によって響く鼓膜を守るせざる得ない状況に陥る。

「な、なんだっ!」

「耳がイテェ!!  黒竜を殺ったんじゃねぇのかよ!」

 不満を口にする団員らの方へとユーリスは反射的に声をかけようと振り返ったが、その行動が命取りだったのを彼はこの瞬間に知る由もなかった。

「……ユーリス君っ!  危ないぞ!」

 よそ見してしまったユーリスにむかって叫ぶのは、その隣で馬に跨っていたトレースだった。

「!」

 前方から木々を薙ぎ倒しながら迫ってくる異様な殺意と憎悪、強力な黒い魔力を撒き散らしながら雄叫びを上げる物体。

 反応に遅れたユーリスは硬直してしまった体を動かせず、肉眼で捉えるのもやっとな速さで徐々に迫ってくる物体を凝視。
 その目に見たものは、陽炎のように揺れる黒衣を身に纏った青年。

 あまり認識していない顔だったが、眼前の人物が長耳族ではないのは誰がどう言おうと確かだ。肌の色と顔の造形(我らより美形ではない)自身に牙を剥けようとしているこの青年は明らかに人族の姿に他ない。

 間近にその姿を目撃したユーリスはこの青年こそがミアの予言した人族『ネロ・ダンタ』であると、いま確かに認識したのであった。

 ーーナゼだ?

 無論、ユーリスの脳裏に浮かんだのはネロに対しての大きな疑問である。彼だけではない、隣でネロの変わり果てたその姿を目にしたトレースでさえも動揺が隠しきれずにいた。「誰だ?」と言わんばかりの表情である。

(だめだ!  この距離では避けきれん!!)

 黒い魔力を覆った腕を振り上げられる瞬間にユーリスはせめて受け身を、と姿勢を作ろうとする。
 それでも地をも容易く砕くネロの方がユーリスの反応より早く、その攻撃が届くまで時間は掛からない。

「は!」

 直後、とある人物の行動によりネロの攻撃はユーリスの懐に届くことはなかった。

 左腕から伝わる大きな衝撃。ユーリスは跨っていた馬から吹き飛ばされ、地面に倒れながら左へと視線を移動させて何があったかのをすぐさめ確認する。
 そこには右手を自分の方へと必死な形相で伸ばすトレースがいた。どうやらネロの攻撃をユーリスが回避できないのを知り、トレースは彼を右の方へと思いっきり突き飛ばしたらしい。

 ネロの殺意のこもった攻撃はそのまま、なにもない虚空を切り上げる。しかし、ネロの攻撃によってその周囲を巻き込む程の大きな衝撃が空間に発せられた。

 騎士団の後列まで伝わる巨大な地響きと強風、全てを飲み込まんとばかりに暴走するネロの膨大な魔力が、そのすぐ側にいた騎士団員らにも被害を及ばせてしまった。

 ネロの振り上げた腕によって発生した衝撃が団員らを容赦なく飲み込んでいき、ユーリスとトレースは次々と吹き飛ばされていく者をその目で目撃してしまう。
 終いには乗っていた馬も何がなんだか認識できずに、その身を地面へと叩きつける。

「やはり、ネロ君……!」

 馬から飛び降りながら、情緒不安定のような瞳をしたネロの目の前へとトレースは立ち塞がった。
 彼を目にした瞬間、荒々しい吐息をネロは漏らす。
 心なしか、その表情が笑っているようにも見える。その気味の悪さにトレースは、普段のネロなら浮かべる優しい笑みをその頭で再確認した。

 そしてトレースは思ったのだ、この男は『別人』だと。ネロならばもっと他人に気を遣いながら笑いかけてくる筈、あのように人を見下す態度はとったりはしない。

 だけど、そんな事を思ってしまっている自分自身にトレースは半端呆れをみせる。なんせ、いくら否定しようが目の前の人物は紛れもないネロ・ダンタだ。
 それは決して塗り替えることの不可能な現実である。

『いつ暴走してもおかしくない、膨大な魔力』

 トレースは酒の席でローラの言葉を再び思いだし、必死に躊躇おうとする感情を抑えこみながら自分が突き飛ばした男、呆然とするユーリスに声をかけた。

「悪いね、手加減できなくて。大丈夫かい?  ユーリス君」

「ふ、ふん。余計なお世話だ、貴様の助けなんて求めていないし勝手に俺に触れるな汚らわしい。おかけで、清潔に保っていた服装が汚れただろうが」

 それでま強がりをみせるユーリスに、トレースは微笑みながら安堵する。するとトレースは、腰の鞘に収めている剣に手をあてた。

 互いに言葉を交わさずとも、ユーリスは彼のその行動の意味を理解する。

「なら、戦えるかい?  俺一人では少々、骨が折れる相手だ」

 その言葉にユーリスは顔を一瞬だけ濁らせるも、溜息を大きく吐きながら地面から立ち上がり、汚れを服装から払いながらトレースと肩を並べた。

「ふん、まあいい。宣戦布告されて引き下がるわけにもいかないしな……この騎士団長ユリース・ノヴァ・ナイテッドは今回だけ貴様に劔をくれてやろう」

「ははっありがとうユーリス君。頼りにしている」

「……俺がいる限り敗北は万に一つないと思え。もし足手まといなら貴様ごと斬り捨てるからな」

 爽やかに返事するトレースに反して、ユーリスの言葉はいちいち辛辣だ。かつて『騎士見習い』時代から、二人は相変わらずである。その背後で倒れてしまった騎士団らは、二人の背中を見ながらそう思ったのだった。



 ーージ※※※※※※※※※※※ト※※※※!!!!!!!!



 異様な魔力を空間に巻き散らかしながら闇に染められた黒衣を纏ったネロの甲高い咆哮が森中に響き渡る。目の前の敵を殺すと決意された瞳を向けられようが、トレースの表情に動揺が何一つも浮かんだりはしなかった。

「……ローラ。君の弟子をこの俺が必ず救ってみせよう。その時は君と……一緒に飲もうじゃないか!」

「ふん、独り言で何を呟いているんだ?  いいからサッサとやるぞ!」

「ああ!  了解したよ」

 まるで精神に直接攻撃をしかけられたような気持ちの悪い感覚に襲われるもそれを斬り捨てるように二人は、全てを見通す程にまで輝しい光明を放った鋭利な剣身を互いに鞘から同時に抜きだし披露する。
 放出される強力な魔力にその身を任せたユーリスの『英雄譚の剣』とトレースの『勇ましき炎の剣』の力が今ここでーー解放されたのだった。


しおりを挟む
感想 65

あなたにおすすめの小説

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...