12 / 72
4月26日 最後の探索がはじまる
5
しおりを挟む
『ミキニャ!』
酒場に現れた猫耳の少女に、いつもより食い気味な歓迎をしてしまう。面食らいながらもミキニャは、軽いステップで輪に加わった。
自然とカナタが説明をする流れになり、話の3分の1くらいでミキニャが混乱を表しているのか謎のダンスを始めた。
『ミキニャは本業ショップ店員ってやつなのニャ! つまりゴールデンウィークは死ぬほど忙しいニャ。けど、最後の伝説はどーーーしても、見たい!』
絶叫に近い声が泣きそうになっている。そりゃそうだろう。翼だって棚卸しの時期なら、さすがに毎日残業だし、家に帰ればバタンキューでなにもやる気が起きないような状況だ。そこに最後の伝説を探しに行くタイミングが重なったら……。
『最後の伝説を集めるには、ミキニャは絶対必要なんだ。だから、もし灯台もと暗しの謎が解けたら、ここの掲示板に書き込んでおくからなんとか合流してほしい。そこからなら、一時離脱しても一緒に連れていってあげられるから』
今まさにユーリが謎のアクションをしているように。
ミキニャが猫耳の頭をなんども上下に頷かせている。絶対に来るから。そう断言してから、おずおずと口を開いた。
『あのさ。ここだとログインしてなきゃ見れないから……その、ウィスコードとかって……』
ゲーマー御用達のコミュニケーションツールを提案され、カナタは戸惑った。アカウントはあるが、交流という点においては一切利用していない。するつもりもない。それでも、日中でも情報が欲しいというミキニャの気持ちもよく分かる。
『儂はそういうのはからきしじゃ』
ウワバミが先に断り文句を口にして、ミキニャの期待がカナタに向いてしまう。ムリだと言ってもミキニャは怒ったりしないだろう。長くパーティを組んでいればそのくらい分かるし、だからこそ長く一緒に冒険ができたのだ。
『俺、は……』
『おまたせ! あれ、ミキニャもログインしとるやん! もう聞いた?』
おかしな動きをしていたユーリが、突然目覚めたように輪の中へと入ってきた。食事を済ませた直後なのか、どこかモゴモゴと言っている。
『早食いはよくないぞ。ところでユーリよ。おまえはウィスコードでミキニャに連絡をすることは可能か?』
ウワバミの問いかけと、ミキニャの補足説明がすかさず行われている。
『ええよ。ちょっと待ってな』
一瞬だけユーリの動きが止まり、またすぐに動き出す。
『今メッセのほうにID送ったし、あとでフレンド追加しといて』
『ユーリぃ! ありがとう!』
抱きつかんばかりのリアクションに、ユーリがどういたしましてとおどけている。
ユーリは現実世界の連絡手段を簡単に教えられるんだ。ミキニャだから? それとも、カナタが聞いても教えてくれる?
繋がるつもりもないのに、そんなことがグルグルと脳内で渦巻いていく。ARK LEGENDがサ終になっても、ユーリとミキニャは繋がり続けられるんだ……。
『みんな揃ってこれからなんだけど、ミキニャは明日も朝早くて……一時離脱するから連れてってニャ』
『もちろん。早く休みや』
『どっちにしても、イベント開始時には来てもらう必要があるじゃろうし。今はムリせんようにの』
大人の気遣いをサラリとしてみせたふたりとは対照的に、カナタはまだ声を出せずにいる。一致団結しているパーティのなかで、自分だけが裏切り者になったみたいだ。
『おやすみニャ!』
あいさつを残したミキニャのアバターが、自動行動に切り替わる。
『ほな、作戦会議してもえぇ?』
ユーリはワクワクが止まらないといった様子だ。
『アテはあるのか?』
こちらはいつもと寸分違わないトーンのウワバミがヨイショとかけ声付きで椅子に座った。ウワバミの本体はそもそも座ってプレイしているだろうに、謎にリアルに寄せている。
ウワバミの返しに、ユーリが唸った。特になにも考えついていないのだ。
『カナタはなんかない?』
ユーリからのフリに意味もなく焦ってしまう。訳のわからない嫉妬心が収まらなくて、今はみんなと行動したくなかった。
『……手分けするのは?』
『手分け?』
『う、うん。灯台下暗しってやっぱりこの城下町を指してると思うんだ』
理由、理由をなにか答えなきゃ。矛盾なく提案するにはなにがいいだろう。
『それは儂も同意じゃ』
『俺も』
『探索範囲は広くないから、しらみつぶしに探すなら手分けする方が効率がいい。けど、デメリットはパーティであることっていう条件があるから……』
イベント発動条件に、4人パーティという状況が含まれているなら、むしろ手分けするのは遠回りだ。自分で言っておきながら行き詰まってしまった。
『ごめん、今のナシで!』
慌てて意見を取り下げたカナタに、ユーリがなにやら考え込む仕草をしていた。
酒場に現れた猫耳の少女に、いつもより食い気味な歓迎をしてしまう。面食らいながらもミキニャは、軽いステップで輪に加わった。
自然とカナタが説明をする流れになり、話の3分の1くらいでミキニャが混乱を表しているのか謎のダンスを始めた。
『ミキニャは本業ショップ店員ってやつなのニャ! つまりゴールデンウィークは死ぬほど忙しいニャ。けど、最後の伝説はどーーーしても、見たい!』
絶叫に近い声が泣きそうになっている。そりゃそうだろう。翼だって棚卸しの時期なら、さすがに毎日残業だし、家に帰ればバタンキューでなにもやる気が起きないような状況だ。そこに最後の伝説を探しに行くタイミングが重なったら……。
『最後の伝説を集めるには、ミキニャは絶対必要なんだ。だから、もし灯台もと暗しの謎が解けたら、ここの掲示板に書き込んでおくからなんとか合流してほしい。そこからなら、一時離脱しても一緒に連れていってあげられるから』
今まさにユーリが謎のアクションをしているように。
ミキニャが猫耳の頭をなんども上下に頷かせている。絶対に来るから。そう断言してから、おずおずと口を開いた。
『あのさ。ここだとログインしてなきゃ見れないから……その、ウィスコードとかって……』
ゲーマー御用達のコミュニケーションツールを提案され、カナタは戸惑った。アカウントはあるが、交流という点においては一切利用していない。するつもりもない。それでも、日中でも情報が欲しいというミキニャの気持ちもよく分かる。
『儂はそういうのはからきしじゃ』
ウワバミが先に断り文句を口にして、ミキニャの期待がカナタに向いてしまう。ムリだと言ってもミキニャは怒ったりしないだろう。長くパーティを組んでいればそのくらい分かるし、だからこそ長く一緒に冒険ができたのだ。
『俺、は……』
『おまたせ! あれ、ミキニャもログインしとるやん! もう聞いた?』
おかしな動きをしていたユーリが、突然目覚めたように輪の中へと入ってきた。食事を済ませた直後なのか、どこかモゴモゴと言っている。
『早食いはよくないぞ。ところでユーリよ。おまえはウィスコードでミキニャに連絡をすることは可能か?』
ウワバミの問いかけと、ミキニャの補足説明がすかさず行われている。
『ええよ。ちょっと待ってな』
一瞬だけユーリの動きが止まり、またすぐに動き出す。
『今メッセのほうにID送ったし、あとでフレンド追加しといて』
『ユーリぃ! ありがとう!』
抱きつかんばかりのリアクションに、ユーリがどういたしましてとおどけている。
ユーリは現実世界の連絡手段を簡単に教えられるんだ。ミキニャだから? それとも、カナタが聞いても教えてくれる?
繋がるつもりもないのに、そんなことがグルグルと脳内で渦巻いていく。ARK LEGENDがサ終になっても、ユーリとミキニャは繋がり続けられるんだ……。
『みんな揃ってこれからなんだけど、ミキニャは明日も朝早くて……一時離脱するから連れてってニャ』
『もちろん。早く休みや』
『どっちにしても、イベント開始時には来てもらう必要があるじゃろうし。今はムリせんようにの』
大人の気遣いをサラリとしてみせたふたりとは対照的に、カナタはまだ声を出せずにいる。一致団結しているパーティのなかで、自分だけが裏切り者になったみたいだ。
『おやすみニャ!』
あいさつを残したミキニャのアバターが、自動行動に切り替わる。
『ほな、作戦会議してもえぇ?』
ユーリはワクワクが止まらないといった様子だ。
『アテはあるのか?』
こちらはいつもと寸分違わないトーンのウワバミがヨイショとかけ声付きで椅子に座った。ウワバミの本体はそもそも座ってプレイしているだろうに、謎にリアルに寄せている。
ウワバミの返しに、ユーリが唸った。特になにも考えついていないのだ。
『カナタはなんかない?』
ユーリからのフリに意味もなく焦ってしまう。訳のわからない嫉妬心が収まらなくて、今はみんなと行動したくなかった。
『……手分けするのは?』
『手分け?』
『う、うん。灯台下暗しってやっぱりこの城下町を指してると思うんだ』
理由、理由をなにか答えなきゃ。矛盾なく提案するにはなにがいいだろう。
『それは儂も同意じゃ』
『俺も』
『探索範囲は広くないから、しらみつぶしに探すなら手分けする方が効率がいい。けど、デメリットはパーティであることっていう条件があるから……』
イベント発動条件に、4人パーティという状況が含まれているなら、むしろ手分けするのは遠回りだ。自分で言っておきながら行き詰まってしまった。
『ごめん、今のナシで!』
慌てて意見を取り下げたカナタに、ユーリがなにやら考え込む仕草をしていた。
22
あなたにおすすめの小説
真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~
水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。
アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。
氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。
「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」
辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。
これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!
地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛
中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。
誰の心にも触れたくない。
無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。
その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。
明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、
偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。
無機質な顔の奥に隠れていたのは、
誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。
気づいてしまったから、もう目を逸らせない。
知りたくなったから、もう引き返せない。
すれ違いと無関心、
優しさと孤独、
微かな笑顔と、隠された心。
これは、
触れれば壊れそうな彼に、
それでも手を伸ばしてしまった、
不器用な男たちの恋のはなし。
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」
身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。
死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。
カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。
「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」
献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。
これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(2024.10.21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。
明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。
新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。
しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…?
冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる