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4月26日 最後の探索がはじまる
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「起きてるじゃん!」
急いで掲示板に書き込むと、カナタは東の市場へと走り出した。しばらく走ってしばらく歩く。神官であるカナタの体力ゲージがさほど高くないせいだが、それでも現実世界の翼の体力よりずっと高い。
メイン通りを駆け抜け、路地裏の貧民街へと足を踏み入れる。初期は油断していると金品を掏られてしまう嫌な場所だったが、今となってはなにも怖くない。
向かいから、この時間には珍しくプレイヤーが近づいてくる。道を譲ろうと端に寄ると、そのプレイヤーが一気に距離を詰めてきた。長い黒髪をターバンで巻き留め、細身の身体には防御力の低い布製の衣服が装備されている。武器はダガーナイフ。
「マジかよ!」
プレイヤースキルは盗賊。盗賊はこの貧民街でなら、他のプレイヤーからものを盗むことができる。ただし、試合形式の戦闘に勝てばだ。
攻撃を難なく躱して、反撃に出る。驚いたようなアクションをしたプレイヤーが、会話リクエストを送ってきた。ターバンの横にはコマとプレイヤーネームが表示されている。
『よお! 紋章なしなのになんでそんな強いんだ?』
アバターに似合いの軽い口調は、わざとだろうか。会話中は戦闘が中断になるため、翼はコントローラーを握る手から力を抜いた。
『保管庫に入れてるだけだよ』
増えすぎたアイテムは持ち運ぶことができないため、基本は売るか捨てるかしてしまう。なかには、必要だが今はいらないアイテムがあって、そういった場合は酒場で自分専用の保管庫に収納しておけるのだ。
だけど、この言い訳は通じない。紋章はアクセサリー扱いで、その装備をわざわざ解除する理由がないからだ。言いたくないと察してくれたらありがたい。そう、コマのほうを見つめたところで、違和感に気づいた。
コマはカナタを紋章なしで強いと言った。いきなり攻撃されたカナタはそれなりに手加減なしで反撃した。それなのに、コマにはダメージひとつ与えられていないのだ。そして、コマの身体のどこにも紋章は見当たらない。金紋章はもちろん、銀も銅もだ。
『まさか……』
呆然としたカナタに、ニヤニヤと笑いながらコマが近づいた。
『あんたも見つけたんだな? もうひとつの地下水路』
この、コマもまた地下牢に紋章をはめたのだ。そして、あの階段の下は地下水路なのか。
『惜しいよな。パーティ状態で行かなきゃ、同じイベントとして紋章を認識できないんだもんな』
つまり、自分の行動として紋章をはめてしまえば、すでに他のルートで紋章をはめてしまったプレイヤーとはパーティが組めない。幸い、カナタたちは別行動を選んだおかげで今すぐ他のメンバーがあの場所に気づくことはない。それでも、万が一ということはある。
『急がないと!』
駆け出すカナタをコマが追いかけてくる。
『ついてくんなよ!』
『その慌てよう、だれか紋章持ちがいるんじゃねぇの? 俺にも口説かせてくれよ』
『やだね!』
振り返りざまに睡眠系の呪文を唱える。うまく作用すればしばらく眠りについてくれるはずだ。神官ではほかのプレイヤーに攻撃する系の行動は設定されていない。
『金紋章同士でそんなん効くわけないじゃん』
呆れたように笑うコマが憎らしい。それでも、コマに構いつけている時間はない。ゲーム内では早朝5時に1日のリセットがかかって、友好度も1日分下がってしまう。そうなれば、カナタ以外はまた友好度を上げなければ、あの奥へは進めない。
ついてくるコマを完全に無視して、市場の隅々を探して回る。
『あとは……高利貸しの屋敷か』
あそこは入り組んでいて、人捜しには向いていない。それでも、フレンドメニューのユーリはまだログイン状態になっている。
屋敷に飛び込み、襲いかかる高利貸しの手下を瞬殺しながら奥へと進む。ただし、屋敷内には仕掛けがそこかしこにあって、いちいち足止めをされてしまう。
途中、ひとりがスイッチを押しているあいだにもう一人が扉を開ける仕掛けで進めなくなった。ユーリだって一人行動なんだからこの先には行けないはず、そう予想しながらも、ユーリなら出会っただれかと即席パーティを組んで進むくらいはやりそうだ。そう、コミュ障のカナタと違って。
『ほい』
『は?』
ガタンという音と同時に扉の鍵が上がる。振り返ると、コマがスイッチのレバーを持ち上げていた。
『早く開けろよ』
開けて、コマがここに来る前に閉めてしまえば……そんなことが頭をよぎりながらも、手伝ってくれたという事実に実行できなくなる。
『いっこ貸しな。パーティ交渉させろよ』
してやったりと笑うコマを軽く睨んで、カナタはまた屋敷の奥へと進んでいった。この先には領主の隠し部屋があって、ボス戦が始まる場所だ。
扉を蹴るように開けると、室内には見慣れたユーリと見知らぬプレイヤーが立っていた。
『カナタ!? どうしたんや?』
同じ画面内に入ったことで会話が成立する。
『ユーリ急いで! 5時までに……友好度下がるから!』
気づけばもう4時を過ぎている。移動魔法が使えないカナタたちは同じ距離をまた走るしかないのだ。
支離滅裂なカナタの言葉でも、なにか察してくれたのかユーリが駆け寄る。
『了解! どこ行けばえぇ?』
急いで掲示板に書き込むと、カナタは東の市場へと走り出した。しばらく走ってしばらく歩く。神官であるカナタの体力ゲージがさほど高くないせいだが、それでも現実世界の翼の体力よりずっと高い。
メイン通りを駆け抜け、路地裏の貧民街へと足を踏み入れる。初期は油断していると金品を掏られてしまう嫌な場所だったが、今となってはなにも怖くない。
向かいから、この時間には珍しくプレイヤーが近づいてくる。道を譲ろうと端に寄ると、そのプレイヤーが一気に距離を詰めてきた。長い黒髪をターバンで巻き留め、細身の身体には防御力の低い布製の衣服が装備されている。武器はダガーナイフ。
「マジかよ!」
プレイヤースキルは盗賊。盗賊はこの貧民街でなら、他のプレイヤーからものを盗むことができる。ただし、試合形式の戦闘に勝てばだ。
攻撃を難なく躱して、反撃に出る。驚いたようなアクションをしたプレイヤーが、会話リクエストを送ってきた。ターバンの横にはコマとプレイヤーネームが表示されている。
『よお! 紋章なしなのになんでそんな強いんだ?』
アバターに似合いの軽い口調は、わざとだろうか。会話中は戦闘が中断になるため、翼はコントローラーを握る手から力を抜いた。
『保管庫に入れてるだけだよ』
増えすぎたアイテムは持ち運ぶことができないため、基本は売るか捨てるかしてしまう。なかには、必要だが今はいらないアイテムがあって、そういった場合は酒場で自分専用の保管庫に収納しておけるのだ。
だけど、この言い訳は通じない。紋章はアクセサリー扱いで、その装備をわざわざ解除する理由がないからだ。言いたくないと察してくれたらありがたい。そう、コマのほうを見つめたところで、違和感に気づいた。
コマはカナタを紋章なしで強いと言った。いきなり攻撃されたカナタはそれなりに手加減なしで反撃した。それなのに、コマにはダメージひとつ与えられていないのだ。そして、コマの身体のどこにも紋章は見当たらない。金紋章はもちろん、銀も銅もだ。
『まさか……』
呆然としたカナタに、ニヤニヤと笑いながらコマが近づいた。
『あんたも見つけたんだな? もうひとつの地下水路』
この、コマもまた地下牢に紋章をはめたのだ。そして、あの階段の下は地下水路なのか。
『惜しいよな。パーティ状態で行かなきゃ、同じイベントとして紋章を認識できないんだもんな』
つまり、自分の行動として紋章をはめてしまえば、すでに他のルートで紋章をはめてしまったプレイヤーとはパーティが組めない。幸い、カナタたちは別行動を選んだおかげで今すぐ他のメンバーがあの場所に気づくことはない。それでも、万が一ということはある。
『急がないと!』
駆け出すカナタをコマが追いかけてくる。
『ついてくんなよ!』
『その慌てよう、だれか紋章持ちがいるんじゃねぇの? 俺にも口説かせてくれよ』
『やだね!』
振り返りざまに睡眠系の呪文を唱える。うまく作用すればしばらく眠りについてくれるはずだ。神官ではほかのプレイヤーに攻撃する系の行動は設定されていない。
『金紋章同士でそんなん効くわけないじゃん』
呆れたように笑うコマが憎らしい。それでも、コマに構いつけている時間はない。ゲーム内では早朝5時に1日のリセットがかかって、友好度も1日分下がってしまう。そうなれば、カナタ以外はまた友好度を上げなければ、あの奥へは進めない。
ついてくるコマを完全に無視して、市場の隅々を探して回る。
『あとは……高利貸しの屋敷か』
あそこは入り組んでいて、人捜しには向いていない。それでも、フレンドメニューのユーリはまだログイン状態になっている。
屋敷に飛び込み、襲いかかる高利貸しの手下を瞬殺しながら奥へと進む。ただし、屋敷内には仕掛けがそこかしこにあって、いちいち足止めをされてしまう。
途中、ひとりがスイッチを押しているあいだにもう一人が扉を開ける仕掛けで進めなくなった。ユーリだって一人行動なんだからこの先には行けないはず、そう予想しながらも、ユーリなら出会っただれかと即席パーティを組んで進むくらいはやりそうだ。そう、コミュ障のカナタと違って。
『ほい』
『は?』
ガタンという音と同時に扉の鍵が上がる。振り返ると、コマがスイッチのレバーを持ち上げていた。
『早く開けろよ』
開けて、コマがここに来る前に閉めてしまえば……そんなことが頭をよぎりながらも、手伝ってくれたという事実に実行できなくなる。
『いっこ貸しな。パーティ交渉させろよ』
してやったりと笑うコマを軽く睨んで、カナタはまた屋敷の奥へと進んでいった。この先には領主の隠し部屋があって、ボス戦が始まる場所だ。
扉を蹴るように開けると、室内には見慣れたユーリと見知らぬプレイヤーが立っていた。
『カナタ!? どうしたんや?』
同じ画面内に入ったことで会話が成立する。
『ユーリ急いで! 5時までに……友好度下がるから!』
気づけばもう4時を過ぎている。移動魔法が使えないカナタたちは同じ距離をまた走るしかないのだ。
支離滅裂なカナタの言葉でも、なにか察してくれたのかユーリが駆け寄る。
『了解! どこ行けばえぇ?』
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