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4月26日 最後の探索がはじまる
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『こっち、ついてきて!』
『ちょっと、ちょっと! おい!』
走り出すカナタに焦ったコマの声がかかる。反応したのはユーリのほうが早かった。
『あんたベテランさん? ちょっとそこの子、助けたってよ』
『はぁ!?』
『パーティの仲間がログインできへんようになったんやって。最後の噴水も2人以上やないと仕掛け解除できんし、手ぇ貸したって』
『なんで俺が!?』
『もう1週間ほどしかないやん。せっかくやったら、アンスターチェ山脈のイベントまでクリアして欲しいもん』
ほな、よろしく。
コマの返事を聞くより先に、ユーリが部屋から走り出る。その背中を慌てて追いかけながら、ホッとしたと同時にうれしくなった。
ユーリは優しい。
アンスターチェ山脈のイベントをクリアすると、山頂から360度の景色を見ることができるようになる。それは、もう10年以上前のグラフィックでありながらも、いまだに語り継がれる美しさなのだ。
『俺も久しぶりに見に行きたくなったな』
屋敷を出たところで体力ゲージがなくなったカナタに合わせて、ユーリも足を緩める。
『見に行く時間あるとえぇなぁ』
『ウワバミさんが合流したら移動魔法が使えるし、きっと行けるよ』
みんな最後に見たいと言うような気がする。
真っ暗な市場を並んで歩くと、この世界にふたりだけが取り残されたように感じる。実際は、昼夜逆転のプレイヤーとちょこちょことすれ違っているのだが。
体力ゲージが回復するのを待って、また走る。それを繰り返しながら城に着く頃には、説明もしっかりと終わっていた。
『ここ?』
牢屋のベッドがあった床にユーリがしゃがみ込む。そして、躊躇することなく紋章をくぼみにはめた。壁が2ヶ所、淡く光る。
『揃ってなくても進めるんやな』
『さっきいてたコマってやつが、ここはふたつめの地下水路だって言ってた。あいつはひとりで入ったみたいだし』
『そういや、なんで一緒におったん?』
『この先に進むパーティ探してるって……だから、俺の仲間を口説くってついてきてたんだ。なのに、ユーリが初心者プレイヤー押しつけたから』
そこまで言ってから耐えきれず笑ってしまった。意図せず邪魔をしてしまったユーリも、悪いことをしたと言いつつ笑っている。
『ウワバミさんはログアウトしてるから、戻ってきてもしばらくは入れない。ミキニャがログインできるタイミングで4人揃って一気に友好度を上げないと』
『あとで掲示板に説明残しとくわ』
『『それでさ……』』
同時に声が揃って、同時に黙ってしまう。視線が、ぽっかりと空いた階段に注がれていた。
『時間的にはそろそろ寝らなあかんのやけど……』
『4人揃ってないから進めないだろうしね』
そう、今このダンジョンに進む理由はない。むしろいったんログアウトして、身体を休めて――。
だけど、1年ぶりのイベントなのだ。しかも、それは誰も攻略したことがないマップで。そんなもの、後回しにできるはずがない。
『ちょっとだけ様子見とか……』
『せやな。ちょっとだけ』
顔を見合わせて共犯者のように笑い合うと、ユーリを先頭に地下へと階段を下りた。
薄暗い水路沿いの通路を進みながら、ランタンを取り出す。周囲がわずかに明るくなった。
『見た感じ、あっちの水路と似てるよな』
『水路やから、俺らは移動できんくても、水の流れは繋がっとるしな』
とにかく、端から歩き回ってマップを完成させないと。いつもどおりの、ダンジョン攻略の手順で角を曲がる。
その先に、見たこともないモンスターが襲いかかってきた。
『カナタ、どうする?』
『場所柄、水属性か闇属性だろうから……』
浄化系の呪文で応戦する。予想どおり高ダメージを与えたものの、モンスターは2ターン目の攻撃を繰り出した。
『えらい強ない!?』
攻撃を辛うじて躱したユーリが叫ぶ。ユーリの物理攻撃はあまりダメージを与えられないようだ。2ターン目の浄化呪文でモンスターが消えた。もう、いくら増えても意味がない経験値と金貨がパラメーター上に加算されていく。
『カナタちょっと待って。装備変えるわ』
ユーリが背中の大剣を小ぶりな剣に持ち替える。古代の神殿で手に入れた神剣だ。物理攻撃は弱いが、光属性が強い。
『どうする? 戻る?』
『カナタ、発光虫持ってる? あと回復系のアイテム』
『発光虫は1個だけ。アイテムは普通に持ってるよ』
『ほな、もうちょっと進まん?』
ワクワクが抑えきれないユーリがかわいらしくて、笑いを堪えながら了承する。発光虫は言葉通り小さな光を放つ虫で、虫かごから出すとダンジョンから強制排除される効果がある。いざとなれば、一瞬で外に逃げられる貴重なアイテムだ。もっとも、魔法使いのウワバミがいれば呪文で同じ効果が得られるため、常備の必要はあまりない。
『とりあえず、MPは気にしないでガンガン呪文使う。どうせいったん戻るし、アイテムも補充できるから』
油断してゲームオーバーになるのは避けたい。改めて装備を確認すると、今度は慎重に角を曲がった。
『カナタ!』
ユーリの警告と同時に、強い衝撃でコントローラーが震えた。画面のカナタが壁に叩きつけられている。体力ゲージが一気に減っていた。
『ちょっと、ちょっと! おい!』
走り出すカナタに焦ったコマの声がかかる。反応したのはユーリのほうが早かった。
『あんたベテランさん? ちょっとそこの子、助けたってよ』
『はぁ!?』
『パーティの仲間がログインできへんようになったんやって。最後の噴水も2人以上やないと仕掛け解除できんし、手ぇ貸したって』
『なんで俺が!?』
『もう1週間ほどしかないやん。せっかくやったら、アンスターチェ山脈のイベントまでクリアして欲しいもん』
ほな、よろしく。
コマの返事を聞くより先に、ユーリが部屋から走り出る。その背中を慌てて追いかけながら、ホッとしたと同時にうれしくなった。
ユーリは優しい。
アンスターチェ山脈のイベントをクリアすると、山頂から360度の景色を見ることができるようになる。それは、もう10年以上前のグラフィックでありながらも、いまだに語り継がれる美しさなのだ。
『俺も久しぶりに見に行きたくなったな』
屋敷を出たところで体力ゲージがなくなったカナタに合わせて、ユーリも足を緩める。
『見に行く時間あるとえぇなぁ』
『ウワバミさんが合流したら移動魔法が使えるし、きっと行けるよ』
みんな最後に見たいと言うような気がする。
真っ暗な市場を並んで歩くと、この世界にふたりだけが取り残されたように感じる。実際は、昼夜逆転のプレイヤーとちょこちょことすれ違っているのだが。
体力ゲージが回復するのを待って、また走る。それを繰り返しながら城に着く頃には、説明もしっかりと終わっていた。
『ここ?』
牢屋のベッドがあった床にユーリがしゃがみ込む。そして、躊躇することなく紋章をくぼみにはめた。壁が2ヶ所、淡く光る。
『揃ってなくても進めるんやな』
『さっきいてたコマってやつが、ここはふたつめの地下水路だって言ってた。あいつはひとりで入ったみたいだし』
『そういや、なんで一緒におったん?』
『この先に進むパーティ探してるって……だから、俺の仲間を口説くってついてきてたんだ。なのに、ユーリが初心者プレイヤー押しつけたから』
そこまで言ってから耐えきれず笑ってしまった。意図せず邪魔をしてしまったユーリも、悪いことをしたと言いつつ笑っている。
『ウワバミさんはログアウトしてるから、戻ってきてもしばらくは入れない。ミキニャがログインできるタイミングで4人揃って一気に友好度を上げないと』
『あとで掲示板に説明残しとくわ』
『『それでさ……』』
同時に声が揃って、同時に黙ってしまう。視線が、ぽっかりと空いた階段に注がれていた。
『時間的にはそろそろ寝らなあかんのやけど……』
『4人揃ってないから進めないだろうしね』
そう、今このダンジョンに進む理由はない。むしろいったんログアウトして、身体を休めて――。
だけど、1年ぶりのイベントなのだ。しかも、それは誰も攻略したことがないマップで。そんなもの、後回しにできるはずがない。
『ちょっとだけ様子見とか……』
『せやな。ちょっとだけ』
顔を見合わせて共犯者のように笑い合うと、ユーリを先頭に地下へと階段を下りた。
薄暗い水路沿いの通路を進みながら、ランタンを取り出す。周囲がわずかに明るくなった。
『見た感じ、あっちの水路と似てるよな』
『水路やから、俺らは移動できんくても、水の流れは繋がっとるしな』
とにかく、端から歩き回ってマップを完成させないと。いつもどおりの、ダンジョン攻略の手順で角を曲がる。
その先に、見たこともないモンスターが襲いかかってきた。
『カナタ、どうする?』
『場所柄、水属性か闇属性だろうから……』
浄化系の呪文で応戦する。予想どおり高ダメージを与えたものの、モンスターは2ターン目の攻撃を繰り出した。
『えらい強ない!?』
攻撃を辛うじて躱したユーリが叫ぶ。ユーリの物理攻撃はあまりダメージを与えられないようだ。2ターン目の浄化呪文でモンスターが消えた。もう、いくら増えても意味がない経験値と金貨がパラメーター上に加算されていく。
『カナタちょっと待って。装備変えるわ』
ユーリが背中の大剣を小ぶりな剣に持ち替える。古代の神殿で手に入れた神剣だ。物理攻撃は弱いが、光属性が強い。
『どうする? 戻る?』
『カナタ、発光虫持ってる? あと回復系のアイテム』
『発光虫は1個だけ。アイテムは普通に持ってるよ』
『ほな、もうちょっと進まん?』
ワクワクが抑えきれないユーリがかわいらしくて、笑いを堪えながら了承する。発光虫は言葉通り小さな光を放つ虫で、虫かごから出すとダンジョンから強制排除される効果がある。いざとなれば、一瞬で外に逃げられる貴重なアイテムだ。もっとも、魔法使いのウワバミがいれば呪文で同じ効果が得られるため、常備の必要はあまりない。
『とりあえず、MPは気にしないでガンガン呪文使う。どうせいったん戻るし、アイテムも補充できるから』
油断してゲームオーバーになるのは避けたい。改めて装備を確認すると、今度は慎重に角を曲がった。
『カナタ!』
ユーリの警告と同時に、強い衝撃でコントローラーが震えた。画面のカナタが壁に叩きつけられている。体力ゲージが一気に減っていた。
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