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5月6日 再会と戻れない旅
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『俺、ゲイやから』
『え……』
『カナタのこと好きになって、そやからなんとかして連絡先知りたかったし』
『え……ちょっと……待っ……』
『これも! サポートに行きたいって頼みこんだんも、カナタがおるかも知れんっていう下心やし!』
予想外の告白と、覆い被さるように近づかれて、混乱のあまりひたすらユーリを見つめてしまう。
『カナタの好きなやつが、俺とそっくりやっていうんも悔しい!』
必死なユーリに圧されて、逆に冷静さが戻ってきた。
『言い逃げみたいにおらんようになったんもズルイ!』
悲痛な訴えに、なぜか笑ってしまった。そんなカナタに、ユーリが不本意だと文句を言う。
『だって、そんなの変だよ』
『なんで?』
『このカナタは作りものだ。ゲームの中にしかいないんだよ?』
『けど、こうやってしゃべってる誰かは、現実の世界におるやん!』
『それはカナタじゃない』
『見た目が違っても中身は同じやん』
こんなの、翼には笑うしか方法がない。
『違うよ、ぜんぜん違う……俺は……』
なりたい自分をカナタに投影していただけだ。
『俺は友だちもいないし、趣味もゲームしかないし、コミュ障のクソダサ陰キャだよ』
カナタとは対極、それが現実だ。
『だから絶対に現実の世界でなんか会いたくない』
情けない断言をして、それでも笑うくらいしかできなくて、カナタは自虐的に頬を歪める。こんな顔をカナタにさせたくないのに。
『俺は会いたい。これで終わりとか嫌や』
『会って、落胆されるほうの気にもなってくれよ……』
『そんなん分からへん!』
『分かる!』
どちらも引かずに睨み合って、それが不毛だと力が抜ける。
『そやかて、カナタだけやもん』
『なにが……』
『イメージちゃうとか……おかしいとか、1回も俺に言わんかったの』
『へ? なんのこと?』
『俺の見た目。なんでそんな外人顔で関西弁なんやって、絶対言われるし……話しかけてもイメージ崩れたって残念がられるし、そんなんばっかりや』
『だって、ここゲームじゃん。外見と中身が違うなんて普通だし』
現に翼だって全然ちがうキャラを演じている。だから、関西弁の人が外人キャラを操作していても不思議じゃない。
『それでも、みんな言うんや。イメージ崩れるから止めたほうがいいとかも言われる。余計なお世話やねん。けど……現実でも気になった人とかに、勇気出して素のまましゃべったら……なんかちゃうって引いたみたいになるんとか……やっぱキツイ。外人顔やからって、親のことをいっつも聞かれるんもしんどい』
勝手に自分を決めつけられるのは嫌だ。ユーリがつぶやく。
『カナタは……俺とおんなじ顔の好きなやつが関西弁やったらどない思う?』
『え、あ……』
アレックスが関西弁?
レジで並んだアレックスが振り返って――。
アレックスとの会話なんか、このゴールデンウィークが始まる前に一度だけレジで交わしたくらいしかない。
確か、重そうなので先にどうぞって譲ってくれて。
――重そうやし、先にどうぞ。
――気ぃつけてな。
関西弁だと、こんな感じだろうか。だけど、その想像の中のアレックスは、勝手にユーリに変換されてしまう。
『ごめん。想像したけど、ユーリになっちゃって違和感ない……』
『……そんなに似とるん?』
戸惑うユーリにかろうじて頷いた。
『なんや、ごっつ悔しいわ……どうしたって、俺はカナタのなかでそいつに重なってまうんやもんな』
大きな身体を三角座りに縮ませてユーリが顔を埋めた。
『おんなじ顔やのにあっちはカナタに好きになってもらえて、一緒に冒険した俺はどうにもできへんとか』
『ちがう。ちがうよ……そんなの落ち込むとこじゃないから。俺は好きって言ってたって、ただ見てるだけでその人の中身なんか分からないし……アニメとかのキャラが好きって言ってるのと変わんないんだ』
だって、翼はアレックスになにかのアクションをしかけられるわけじゃない。偶然をただ喜んで過ごすだけだ。
それに、今は――。
今の翼は、好きな人がユーリだったと自覚してしまっている。最初は確かにアレックスに一目惚れをした。それが、いつのまにか苦楽を共に探索に出たユーリが好きになっている。
そのうえ、ユーリがカナタを好き? カナタなら誰かに好かれることだっておかしくない。前向きで明るくて、見た目も完璧で……だけど、翼は……。
『現実の俺は、誰かに好かれるようなやつじゃないし……』
『それでも、俺はカナタを動かしてる人が、カナタとぜんぜん違うとは思わへん。見た目とちゃうで? どんなに作ったかて、その人自身を消せるはずないと思うもん』
そうだったら、どれだけいいだろう。冷静で、進んで誰かを助けて、誰とも笑ってしゃべれて、最高位の神官で。そんな中身はどれひとつ翼には備わっていない。
だから、カナタを好きだなんて言う相手と、実際に会うなんてできるはずがない。
黙り込んだカナタに、少し傷ついたようなユーリの視線が絡まる。
『それやったら、「カナタ」やったらどない?』
『どうって……』
『カナタの中身やない。カナタってキャラも、ユーリのことは好きにならへん?』
ARK LEGENDの「カナタ」が「ユーリ」に好きだと言われたら?
それなら、すごくうれしい。だって、ユーリとカナタが並んでいるところが好きだ。どちらも堂々としていて、釣り合わないなんて思われなくて、それにカナタなら堂々とユーリを好きだと口にできるだろう。
『カナタだったら……きっと、うれしくなるんじゃないかな……分かんないけど……』
翼という人格をなくしたカナタなら。
俯いたカナタの向かいで、ユーリが勢いよく立ち上がった。ユーリの影がカナタを隠している。
『カナタ! 行こう!』
呆然と逆光のユーリを見上げる。カナタのすぐ前に、大きなユーリの手が差し出されている。
『あの約束! 最後まで一緒におって欲しいってカナタに言われて……俺、むっちゃうれしかったから、そやから!』
なかったことになってショックだった。ユーリが叫ぶ。
『今、槻間さんが全力で修正プログラム組んどる! そやから、言うてる間にここは消えるねん』
だから、行こう。
どこへ? その言葉より先に、ユーリがカナタの手を引いた。強い力がカナタを立ち上がらせる。
『え……』
『カナタのこと好きになって、そやからなんとかして連絡先知りたかったし』
『え……ちょっと……待っ……』
『これも! サポートに行きたいって頼みこんだんも、カナタがおるかも知れんっていう下心やし!』
予想外の告白と、覆い被さるように近づかれて、混乱のあまりひたすらユーリを見つめてしまう。
『カナタの好きなやつが、俺とそっくりやっていうんも悔しい!』
必死なユーリに圧されて、逆に冷静さが戻ってきた。
『言い逃げみたいにおらんようになったんもズルイ!』
悲痛な訴えに、なぜか笑ってしまった。そんなカナタに、ユーリが不本意だと文句を言う。
『だって、そんなの変だよ』
『なんで?』
『このカナタは作りものだ。ゲームの中にしかいないんだよ?』
『けど、こうやってしゃべってる誰かは、現実の世界におるやん!』
『それはカナタじゃない』
『見た目が違っても中身は同じやん』
こんなの、翼には笑うしか方法がない。
『違うよ、ぜんぜん違う……俺は……』
なりたい自分をカナタに投影していただけだ。
『俺は友だちもいないし、趣味もゲームしかないし、コミュ障のクソダサ陰キャだよ』
カナタとは対極、それが現実だ。
『だから絶対に現実の世界でなんか会いたくない』
情けない断言をして、それでも笑うくらいしかできなくて、カナタは自虐的に頬を歪める。こんな顔をカナタにさせたくないのに。
『俺は会いたい。これで終わりとか嫌や』
『会って、落胆されるほうの気にもなってくれよ……』
『そんなん分からへん!』
『分かる!』
どちらも引かずに睨み合って、それが不毛だと力が抜ける。
『そやかて、カナタだけやもん』
『なにが……』
『イメージちゃうとか……おかしいとか、1回も俺に言わんかったの』
『へ? なんのこと?』
『俺の見た目。なんでそんな外人顔で関西弁なんやって、絶対言われるし……話しかけてもイメージ崩れたって残念がられるし、そんなんばっかりや』
『だって、ここゲームじゃん。外見と中身が違うなんて普通だし』
現に翼だって全然ちがうキャラを演じている。だから、関西弁の人が外人キャラを操作していても不思議じゃない。
『それでも、みんな言うんや。イメージ崩れるから止めたほうがいいとかも言われる。余計なお世話やねん。けど……現実でも気になった人とかに、勇気出して素のまましゃべったら……なんかちゃうって引いたみたいになるんとか……やっぱキツイ。外人顔やからって、親のことをいっつも聞かれるんもしんどい』
勝手に自分を決めつけられるのは嫌だ。ユーリがつぶやく。
『カナタは……俺とおんなじ顔の好きなやつが関西弁やったらどない思う?』
『え、あ……』
アレックスが関西弁?
レジで並んだアレックスが振り返って――。
アレックスとの会話なんか、このゴールデンウィークが始まる前に一度だけレジで交わしたくらいしかない。
確か、重そうなので先にどうぞって譲ってくれて。
――重そうやし、先にどうぞ。
――気ぃつけてな。
関西弁だと、こんな感じだろうか。だけど、その想像の中のアレックスは、勝手にユーリに変換されてしまう。
『ごめん。想像したけど、ユーリになっちゃって違和感ない……』
『……そんなに似とるん?』
戸惑うユーリにかろうじて頷いた。
『なんや、ごっつ悔しいわ……どうしたって、俺はカナタのなかでそいつに重なってまうんやもんな』
大きな身体を三角座りに縮ませてユーリが顔を埋めた。
『おんなじ顔やのにあっちはカナタに好きになってもらえて、一緒に冒険した俺はどうにもできへんとか』
『ちがう。ちがうよ……そんなの落ち込むとこじゃないから。俺は好きって言ってたって、ただ見てるだけでその人の中身なんか分からないし……アニメとかのキャラが好きって言ってるのと変わんないんだ』
だって、翼はアレックスになにかのアクションをしかけられるわけじゃない。偶然をただ喜んで過ごすだけだ。
それに、今は――。
今の翼は、好きな人がユーリだったと自覚してしまっている。最初は確かにアレックスに一目惚れをした。それが、いつのまにか苦楽を共に探索に出たユーリが好きになっている。
そのうえ、ユーリがカナタを好き? カナタなら誰かに好かれることだっておかしくない。前向きで明るくて、見た目も完璧で……だけど、翼は……。
『現実の俺は、誰かに好かれるようなやつじゃないし……』
『それでも、俺はカナタを動かしてる人が、カナタとぜんぜん違うとは思わへん。見た目とちゃうで? どんなに作ったかて、その人自身を消せるはずないと思うもん』
そうだったら、どれだけいいだろう。冷静で、進んで誰かを助けて、誰とも笑ってしゃべれて、最高位の神官で。そんな中身はどれひとつ翼には備わっていない。
だから、カナタを好きだなんて言う相手と、実際に会うなんてできるはずがない。
黙り込んだカナタに、少し傷ついたようなユーリの視線が絡まる。
『それやったら、「カナタ」やったらどない?』
『どうって……』
『カナタの中身やない。カナタってキャラも、ユーリのことは好きにならへん?』
ARK LEGENDの「カナタ」が「ユーリ」に好きだと言われたら?
それなら、すごくうれしい。だって、ユーリとカナタが並んでいるところが好きだ。どちらも堂々としていて、釣り合わないなんて思われなくて、それにカナタなら堂々とユーリを好きだと口にできるだろう。
『カナタだったら……きっと、うれしくなるんじゃないかな……分かんないけど……』
翼という人格をなくしたカナタなら。
俯いたカナタの向かいで、ユーリが勢いよく立ち上がった。ユーリの影がカナタを隠している。
『カナタ! 行こう!』
呆然と逆光のユーリを見上げる。カナタのすぐ前に、大きなユーリの手が差し出されている。
『あの約束! 最後まで一緒におって欲しいってカナタに言われて……俺、むっちゃうれしかったから、そやから!』
なかったことになってショックだった。ユーリが叫ぶ。
『今、槻間さんが全力で修正プログラム組んどる! そやから、言うてる間にここは消えるねん』
だから、行こう。
どこへ? その言葉より先に、ユーリがカナタの手を引いた。強い力がカナタを立ち上がらせる。
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