サ終直前のネトゲで推しに急接近されましたが、現実の自分がクソダサ陰キャのため最後の思い出だけ作って逃げようと思います

二一

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その恋に進展はあるのか?

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「恥ずかしいから会われへんっていうのはナシやからな」
 事故みたいにキスしてしまったあと、銅像になった翼にユーリが念押しする。リアルで会ってひと月、すでに翼のパターンを見抜いてしまったらしい。
 ダメ押しのように「恥ずかしくならんようにいっぱいキスしよう」なんてニッコリされたのが2週間前だ。

「あ、通知ユーリだ」
 シャワーを終えたところで携帯端末の通知が光っている。

 ーー今日もまだ帰れん。翼の声が聞きたいよぉ(´;ω;`)

「今日も……大変だよなぁ」
 初デートから数日、次の週末は映画に行こうと約束をした翌日のことだった。
 ユーリのチームがメインで制作しているアプリゲームに大きなエラーが見つかったとのことで、ユーリもその対応に追われている。もちろん週末の映画は延期で、通話も就寝前の深夜に少しできるくらいだ。

 ーーおつかれ。がんばれ。

「……こういうのってどう返すのがいいんだろ」
 迷いつつ、毎晩代わり映えのない励ましを送信している。
「既読つかないなぁ。まだ仕事中っぽいもんな」
 時間はもうすぐ11時だ。昨日のメッセージでは、もう終わりが見えてきたような感じだったのに。ただ、こうやって会えない理由があることに、ホッとしている自分もいる。
「会いたくないわけじゃないんだけど……」
 既読が確認できたら寝ようなんて思いつつ、翼はパソコンの電源を入れた。
 ゲームの配信サイトを何の気なしに眺め、コレといってやりたいゲームも見つからないなぁなんて頬杖をつく。
 ぼんやりとSNSを眺め、別にチェックの必要もないプライベートのメールを開く。どうでもいい未読のニュースレターを機械的に削除しつつ、横目で既読がつかないかを確認する。
「あ」
 削除を押そうとしたタイミングで、ふと引っかかりを覚えた。
「アーレジェの運営だ」
 サ終のあとで一体なんのメールだろう。例のトラブルの際は、お詫びメールがきていて、それが配信メールの最後だった。
「もしかしたらⅡのニュースだったりとか……ってさすがに、それはないか」
 いくらなんでも早すぎる。寂しい空間でひとり突っ込みをしながらメールを開いた翼は、そのままフリーズしていた。
「……っ!!??」
 我に返り、いったんメガネを外して目をこする。ぼやけた視界に再びレンズを重ね、不必要にディスプレイへと近づいた。
「このメールは、特定の条件を達したプレイヤーのみなさまにお送りしています……」
 なんども黙読した本文を、あえて声に出した。
「っつ、っっつ……Ⅱのテストプレイ!? マジで!?」
 参加不参加のフォームが用意され、文末は販売までは公開しないようにというお願いで締められている。
「そんなのやるに決まって……って、待てよ? 特定の条件ってなんだろ……全然知らない人とパーティ組むことになるんだよな……」
 アーレジェⅡということで、勝手にいつものパーティを浮かべていた。だけど、そもそも翼はあのパーティからも抜けている。つまり、参加したとしても全く見知らぬ人とプレイすることになるわけで……。tsukiのゲームへの想いを知った今、なにがあってもⅡはやりたい。
 脳内を葛藤がぐるぐる渦まいている。秘密にする必要があるということは、ユーリやコマにも相談できない。
「回答の締め切りは1週間後か」
 迷いすぎて頭を抱えた視界の端に、端末が光った。

 ――翼、起きてる?

 そんなユーリからのメッセージに、迷うことに疲れた翼は瞬間的に飛びついた。

 ――起きてるよ。

 メッセージは送った瞬間に既読がつき、間髪入れずに通話リクエストが表示される。さすがに、通話ならそこまで緊張することもなくなっていて、翼は受信ボタンをすんなりタップしていた。

「もしもし? ユーリおつかれさま」
『ホンマめっちゃ疲れたー!』
「まだ、忙しいの続きそう?」
『今日でいったん区切り! それより翼、メール見た!?』
「へっ……?」
 こんなにタイミングがいいなんてことがあるだろうか?
 ユーリとのやりとりは専らメッセージアプリで、メールなんて使ったこともない。それなのに、メールを見たかと聞かれるということは、もしかしなくてもアーレジェ運営からのメールだったりするのだろうか。
 でも、秘密の案内だし、ユーリといえども勝手に翼に教える訳にはいかないのでは?
 そんなことを考えていると、無言を心配したユーリがどうかしたのかと聞いてくる。
「ユーリ、メールって?」
 もしかしたら、全然違うことかも知れない。おかしな可能性を無理やり引っ張り出すと、ややぎごちない声になってしまった。
『あれ? 翼見てへん? アーレジェから通知きてたやろ?』
 アッサリと答えられてしまい、表情がおかしな歪みを作っている。
「え、秘密にしてなきゃダメなんじゃ……」
 通話の向こうでユーリが低く笑った。そういえば、声がいつもと違う反響をしている。まだ家に帰れているわけじゃなさそうだ。
『だって、俺のとこにもメール来とるもん。そりゃ、槻間さんに聞きに行くやん』
「ユーリにも?」
『あれ、最後の伝説にたどり着けたプレイヤー宛に送られとんねん。そやから、ミキニャとウワバミさんにもいっとるはずやで』
「そうだったんだ」
 あんなに悩んだのに、どうにも肩透かしを食らってしまった。
 それにしても――。
「けど、俺に直接言ってよかったの?」
『ええよ。だって、翼と俺がパーティ組んでたことは知っとるし、リアルでも仲良うしとるって槻間さんとしゃべったもん』
「仲よく……」
 とは、どの意味だろう。
『トモダチやねんって言うとるけど、槻間さんは俺がゲイやって知っとるから、もしかしたらなんか察するかも知れん。ごめんな』
 申し訳なさそうに謝られて、翼は思い切り首をブンブン振っていた。ユーリが信頼しているtsukiさんなら大丈夫。もちろん、バレているとしてどんな顔をするべきかは悩むだろうけど。
「大丈夫! こっちこそ、気をつかわせちゃってごめん。それでさ、ユーリは参加するんだよね?」
 なんとなく、その話から離れたくて、翼は無理やり話を元に戻した。
『そりゃ当然! 翼もやるやろ? 慣れたメンバーやし』
 ミキニャたちが参加しないはずがない。胸を張るユーリが目に浮かぶみたいな強い口調に、少し笑ってしまった。
「やりたい、けど……いいのかな……」
『いいに決まっとるやん? なんか気になるん?』
「だって、俺。あんな風にログアウトしてるし」
 きっと気を悪くしている。今さらどんな顔で――。
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