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その恋に進展はあるのか?
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そして、週末――。
『カナタ! ひどいニャ。なんで急にいなくなったニャ。一緒に最後を迎えるって約束してたニャ!』
「ミキニャ、ごめん!」
翼はいつもとおなじ一人暮らしの部屋で、ヘッドセット越しにミキニャに謝り倒している。そして、その背後ではコマの大笑いがBGMになっていて――。
あのあと、ユーリがミキニャとコマに連絡をした。
ウィスコードにはユーリによってグループルームが作られ、いつのまにか週末の予定としてみんなで通話をしようと決定されていた(デートができなくなったと、ユーリの盛大な愚痴を昨夜聞いたところだ)
『ウワバミさん、来週から奥さんとスイスにいくんやって言っとったよ』
『いいニャ、いいニャ。絶対アレだニャ!』
『『『『聖地巡礼!』』』』
ヘッドセットごしに全員がハモって、同時に笑った。
アーレジェファンのあいだでは有名な、アンスターチェ山脈のモデルになった山があるのだ。
『てか、マジで俺が入らせてもらっていいんすか?』
ひとしきり盛り上がったあと、コマがサラリと口を挟んだ。
『嫌やったら入らんでえぇで』
冷たいユーリの声に、翼だけが一生懸命笑いを堪えている。コマが「それはない」とキッパリ言い切ったところで、ミキニャが笑った。
「コマが俺たちと同じくらい最後の伝説探してたの知ってるから、ひとり欠けるくらいなら一緒に冒険できたらいいなって思ったんだ」
『スキルも関係ないらしいからな』
そう、今回のテストプレイの目的はVRスーツを主とした感覚のテストで、クリアの鍵となるようなスキルは必要ないらしい。そうでなければ、魔法使いのウワバミの代わりが盗賊のコマではバランスが悪くなってしまう。
『理由がなんでもうれしい、サンキュな。けど、ユーリってば、敵意あからさますぎ。なにもしないって』
『分かっとるけど、しゃーないやん。あきらめや』
かわいい。いや、ユーリかわいすぎる。
まだゲームも始まっていないのに、翼の脳内にはあの戦士姿のユーリが、拗ねたようにそっぽを向いている。
「けど、パーティでのテストって2日間だけなんだよね。あとは期間内に自由にプレイするって書いてたから、ちょっと残念かも」
もちろんこれはあくまでテストなわけで、プレイヤーが楽しむためじゃない。それでも、あの楽しかったゲーム世界にふたたび入れるのは単純にうれしいのだ。
『時間合いそうだったら、しゃべりながらできるじゃん』
『うんうん。交流も積極的にしてって書いてたニャ』
『ほな、プレイできそうな日はみんなここに書き込んどくってのはどう?』
『賛成! テストだけど、やっぱりゲームっぽいのがいいし』
――アレ、絶対俺へのけん制だよな?
――翼、どっかでこっそり2人で入ろうね
別のチャットルームで同時に通知マークがついている。それは、もちろんユーリとコマからで、配慮してるのかしてないのか微妙なそのアクションに、反応を迷ってしまう。
『カナタってホント、ゲームだったらスラスラしゃべるよなー』
コマのそんなひと言に真っ先に反応したのはミキニャだった。脳内ではミキニャの猫耳がピンと立っているのが見えたくらいだ。
『ちょっと待つニャ。さっきから超絶違和感ニャ』
「え?」
なにか、変なことでもしゃべっただろうか。翼はいつもどおりのカナタとしてしゃべったつもりだったのに。
『もしかして、みんなリアルで会ってるんじゃないかニャ? 絶対そうだニャ』
名探偵ばりの演技で追求するミキニャに、さてどう答えようかと迷ってしまう。
『俺とカナタって、ごっつい近所やってん。たまたまコンビニであれ? ってなったら、カナタやって、それで』
こうやって聞くと、ウソじゃないのにウソみたいに聞こえる。
「コマはあの友好度マックス作戦を教えてくれた人だよ。それで、もし最後の伝説にたどり着けたらお互い教え合おうって約束してて、そしたら住んでるとこ近かったから……」
ユーリに倣って、なんとかいい感じに説明を付け足していく。
『で、カナタを通じて俺とユーリも知り合ったってわけ』
最後にコマが無難に締めてくれて、なんとなくホッとした。
『いいニャ! ミキニャもオフ会したいニャ! みんなどこ住みニャ!?』
『都内。ミキニャは?』
コミュ強なコマがアッサリと答えている。女の子相手に住まいを聞くなんて、翼にはできない。
『っオフ会するニャ! お勧めの居酒屋あるニャ!』
――これって、断ったらダメだよね?
グループとはいえ、リアルで女の子と会うことになりそうな流れに、思わずチャットでユーリに助けを求めてしまった。これ以上、現実の田中翼を知る人間は増えて欲しくない。
――さすがに、今この場ではやめたほうがえぇよ。
当然すぎるユーリからの返信に、グッと口をつぐんだ。
『それやったら、Ⅱの発売発表後に集まらへん? したら、いろいろしゃべれるやん』
そう、発表まではテストプレイについても完全秘密だ。集まって、そこをしゃべれないのはつらい。そんなユーリの提案に、イケイケなふたりが頷いている。
『お勧めの居酒屋って?』
『S区なんだけど、珍しい地酒がいっぱいあるニャ! で、盛り上がるには最適な、離れ個室があるニャ!』
『おお! ミキニャはお酒イケるほう?』
『恥ずかしながら、仲間内ではザル呼ばわりされてるニャ』
少し恥ずかしそうなミキニャがかわいらしい。
『最高じゃん。こいつらふたり飲まねぇんだもん』
呆れたようなコマに、ミキニャがカナタはともかくユーリは飲めそうなイメージだったなんて驚いている。それは、翼もはじめ意外だったところで、でもあまり飲めない翼としては仲間がいてうれしいところでもある。
「で、でもさ、さすがに男3人にミキニャで個室は……」
まずいんじゃないだろうか。なにかが起きる可能性なんかないのは分かっているが、なんとか集まるのを避けようと往生際悪く正論を挙げてみる。
『カナタ紳士だニャ。けど、大丈夫ニャ。そこの店はミキニャの先輩がやってる店ニャ』
それに、コマはともかくカナタとユーリは信用できる。ミキニャがそんなことを付け加えて、コマが盛大に嘆いてみせた。
『ほな、そのときはウワバミさんも通話繋いで、リモート飲み会みたいなんどうやろ? 俺はあんまり飲めんけど』
『ウワバミさんは飲めそうニャ』
『名前からしてな』
「ウワバミさんって、どこに住んでるんだろ?」
『あ、九州なんやって。そやからリアルは難しいと思うで』
絶対酒飲みだ。偏見に満ちた断言で、勝手にウワバミ像ができあがっている。
――もし、どうしても無理そうやったら、翼もリモート参加とかどない?
ウワバミを絡めての提案は翼のためでもあった。ユーリはやっぱりやさしい。翼の苦手を受け入れてもらえたような気がして泣きそうになった。
それじゃ、テスト開始日に!
そう言い合って、通信が切れていく。
『翼、大丈夫やった?』
ウィスコードを切断したタイミングで、ユーリから通信が入る。
「緊張したけど大丈夫。テストプレイすっごい楽しみ」
『俺も。今度は翼がちゃんといてるカナタと探索できるんや』
「それはちょっと恥ずかしい」
『来週はテストプレイ入っとるから無理やけど、再来週は会ってな?』
ちょっと萎んだみたいなユーリの声が、カナタの緊張を和らげてくれる。
「もちろん」
緊張するし恥ずかしさもあるけど、今は会いたくないなんて思えない。
『カナタ! ひどいニャ。なんで急にいなくなったニャ。一緒に最後を迎えるって約束してたニャ!』
「ミキニャ、ごめん!」
翼はいつもとおなじ一人暮らしの部屋で、ヘッドセット越しにミキニャに謝り倒している。そして、その背後ではコマの大笑いがBGMになっていて――。
あのあと、ユーリがミキニャとコマに連絡をした。
ウィスコードにはユーリによってグループルームが作られ、いつのまにか週末の予定としてみんなで通話をしようと決定されていた(デートができなくなったと、ユーリの盛大な愚痴を昨夜聞いたところだ)
『ウワバミさん、来週から奥さんとスイスにいくんやって言っとったよ』
『いいニャ、いいニャ。絶対アレだニャ!』
『『『『聖地巡礼!』』』』
ヘッドセットごしに全員がハモって、同時に笑った。
アーレジェファンのあいだでは有名な、アンスターチェ山脈のモデルになった山があるのだ。
『てか、マジで俺が入らせてもらっていいんすか?』
ひとしきり盛り上がったあと、コマがサラリと口を挟んだ。
『嫌やったら入らんでえぇで』
冷たいユーリの声に、翼だけが一生懸命笑いを堪えている。コマが「それはない」とキッパリ言い切ったところで、ミキニャが笑った。
「コマが俺たちと同じくらい最後の伝説探してたの知ってるから、ひとり欠けるくらいなら一緒に冒険できたらいいなって思ったんだ」
『スキルも関係ないらしいからな』
そう、今回のテストプレイの目的はVRスーツを主とした感覚のテストで、クリアの鍵となるようなスキルは必要ないらしい。そうでなければ、魔法使いのウワバミの代わりが盗賊のコマではバランスが悪くなってしまう。
『理由がなんでもうれしい、サンキュな。けど、ユーリってば、敵意あからさますぎ。なにもしないって』
『分かっとるけど、しゃーないやん。あきらめや』
かわいい。いや、ユーリかわいすぎる。
まだゲームも始まっていないのに、翼の脳内にはあの戦士姿のユーリが、拗ねたようにそっぽを向いている。
「けど、パーティでのテストって2日間だけなんだよね。あとは期間内に自由にプレイするって書いてたから、ちょっと残念かも」
もちろんこれはあくまでテストなわけで、プレイヤーが楽しむためじゃない。それでも、あの楽しかったゲーム世界にふたたび入れるのは単純にうれしいのだ。
『時間合いそうだったら、しゃべりながらできるじゃん』
『うんうん。交流も積極的にしてって書いてたニャ』
『ほな、プレイできそうな日はみんなここに書き込んどくってのはどう?』
『賛成! テストだけど、やっぱりゲームっぽいのがいいし』
――アレ、絶対俺へのけん制だよな?
――翼、どっかでこっそり2人で入ろうね
別のチャットルームで同時に通知マークがついている。それは、もちろんユーリとコマからで、配慮してるのかしてないのか微妙なそのアクションに、反応を迷ってしまう。
『カナタってホント、ゲームだったらスラスラしゃべるよなー』
コマのそんなひと言に真っ先に反応したのはミキニャだった。脳内ではミキニャの猫耳がピンと立っているのが見えたくらいだ。
『ちょっと待つニャ。さっきから超絶違和感ニャ』
「え?」
なにか、変なことでもしゃべっただろうか。翼はいつもどおりのカナタとしてしゃべったつもりだったのに。
『もしかして、みんなリアルで会ってるんじゃないかニャ? 絶対そうだニャ』
名探偵ばりの演技で追求するミキニャに、さてどう答えようかと迷ってしまう。
『俺とカナタって、ごっつい近所やってん。たまたまコンビニであれ? ってなったら、カナタやって、それで』
こうやって聞くと、ウソじゃないのにウソみたいに聞こえる。
「コマはあの友好度マックス作戦を教えてくれた人だよ。それで、もし最後の伝説にたどり着けたらお互い教え合おうって約束してて、そしたら住んでるとこ近かったから……」
ユーリに倣って、なんとかいい感じに説明を付け足していく。
『で、カナタを通じて俺とユーリも知り合ったってわけ』
最後にコマが無難に締めてくれて、なんとなくホッとした。
『いいニャ! ミキニャもオフ会したいニャ! みんなどこ住みニャ!?』
『都内。ミキニャは?』
コミュ強なコマがアッサリと答えている。女の子相手に住まいを聞くなんて、翼にはできない。
『っオフ会するニャ! お勧めの居酒屋あるニャ!』
――これって、断ったらダメだよね?
グループとはいえ、リアルで女の子と会うことになりそうな流れに、思わずチャットでユーリに助けを求めてしまった。これ以上、現実の田中翼を知る人間は増えて欲しくない。
――さすがに、今この場ではやめたほうがえぇよ。
当然すぎるユーリからの返信に、グッと口をつぐんだ。
『それやったら、Ⅱの発売発表後に集まらへん? したら、いろいろしゃべれるやん』
そう、発表まではテストプレイについても完全秘密だ。集まって、そこをしゃべれないのはつらい。そんなユーリの提案に、イケイケなふたりが頷いている。
『お勧めの居酒屋って?』
『S区なんだけど、珍しい地酒がいっぱいあるニャ! で、盛り上がるには最適な、離れ個室があるニャ!』
『おお! ミキニャはお酒イケるほう?』
『恥ずかしながら、仲間内ではザル呼ばわりされてるニャ』
少し恥ずかしそうなミキニャがかわいらしい。
『最高じゃん。こいつらふたり飲まねぇんだもん』
呆れたようなコマに、ミキニャがカナタはともかくユーリは飲めそうなイメージだったなんて驚いている。それは、翼もはじめ意外だったところで、でもあまり飲めない翼としては仲間がいてうれしいところでもある。
「で、でもさ、さすがに男3人にミキニャで個室は……」
まずいんじゃないだろうか。なにかが起きる可能性なんかないのは分かっているが、なんとか集まるのを避けようと往生際悪く正論を挙げてみる。
『カナタ紳士だニャ。けど、大丈夫ニャ。そこの店はミキニャの先輩がやってる店ニャ』
それに、コマはともかくカナタとユーリは信用できる。ミキニャがそんなことを付け加えて、コマが盛大に嘆いてみせた。
『ほな、そのときはウワバミさんも通話繋いで、リモート飲み会みたいなんどうやろ? 俺はあんまり飲めんけど』
『ウワバミさんは飲めそうニャ』
『名前からしてな』
「ウワバミさんって、どこに住んでるんだろ?」
『あ、九州なんやって。そやからリアルは難しいと思うで』
絶対酒飲みだ。偏見に満ちた断言で、勝手にウワバミ像ができあがっている。
――もし、どうしても無理そうやったら、翼もリモート参加とかどない?
ウワバミを絡めての提案は翼のためでもあった。ユーリはやっぱりやさしい。翼の苦手を受け入れてもらえたような気がして泣きそうになった。
それじゃ、テスト開始日に!
そう言い合って、通信が切れていく。
『翼、大丈夫やった?』
ウィスコードを切断したタイミングで、ユーリから通信が入る。
「緊張したけど大丈夫。テストプレイすっごい楽しみ」
『俺も。今度は翼がちゃんといてるカナタと探索できるんや』
「それはちょっと恥ずかしい」
『来週はテストプレイ入っとるから無理やけど、再来週は会ってな?』
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