サ終直前のネトゲで推しに急接近されましたが、現実の自分がクソダサ陰キャのため最後の思い出だけ作って逃げようと思います

二一

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その恋に進展はあるのか?

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『うわぁ!』
 思わず飛び出した声が、リアルに響く。そこは、明るい広場だった。
『あれ? このアングル……』
 まだ慣れない操作で広場を移動し、ぐるりと視点を回してみる。
『ハーミット城じゃん! 最初の広場で……ってことは、こっち行くと城で、こっちが町で』
 町の喧噪までがリアルで、白い空間で感じた没入感の不足なんて全く感じない。広場を行き交う人々は、Ⅰの世界の服装を少し近代的にしたような感じだ。
 それよりも、大きな違いはワールドに電子的な要素が追加されていること。
 さっきの説明であった、ゴーグルの表示されるパラメータ情報もそうだが、広場だけでも不思議な形状のモニターには、画質は粗いもののスライドショーのように画像が表示されている。言葉で表現するなら、レトロサイバーパンクとでもいったところだろうか。
『新たな探索者の誕生? え? これって俺たち……』
 表示板にはカナタたちが順番に映されている。つまり、すでにゲームは開始されていて、4人はパーティとして出発しているということだ。
『古の伝説を探しに? あ、発見されてない伝説があるって設定かな? この世界を安定させるために必要な伝説……Ⅰとも繋がってるんだ』
 というか、これはⅠのはるか未来の世界だ。
 歩き出すと、そこにあるのは全くちがう建物なのに、道は覚えているそのままで、目指した酒場はオシャレなバーに姿を変えている。
『カナタ。来たニャ!』
 バーの内部にはカウンターとステージ、それに奥まった一角がテーブル席というレイアウトだ。その奥のテーブルでは、ミキニャが手を振っている。
『なんか、音声もリアルだね』
『すでに感動ニャ。いろいろ回りたいのを我慢してここに来たのに、誰もいなかったニャ!』
 それならもっと寄り道すれば良かったとぼやいたタイミングで、またバーの扉が開く。そこには懐かしい装備が少しスタイリッシュになったユーリとコマが並んでいる。
『すっげーよな! ここ! ハーミット城がビルみたいになってたぜ!』
『あの地下水路への入り口は封鎖されとるみたいやった』
 興奮冷めないまましゃべり出した寄り道組を、ミキニャの一声が黙らせる。その声にはネタバレをするなという気迫がありありと含まれていた。
『とりあえず、テスト内容から済ませようよ』
 興奮したメンバーのなかに手を上げて注意を引く。とにかくジッとしてるなんてもったいない。
『カナタって、夏休みの宿題は最初に済ますタイプだろ?』
『その方があとで楽じゃん』
 あたりまえだろうと答えたカナタに、コマとミキニャがなにやらヒソヒソと言い合っている。きっと最後のほうでがんばるタイプなんだろう。
『俺は最初にガーってやるけど飽きて放置……で、最後に慌ててやる』
 中間地点のユーリがそれっぽくて、みんなが笑う。
『テストって確か、パーティモードでの会話と』
『戦闘』
『フィールド移動での距離感がどう感じるか』
『俺、まだ操作が不安なんやけど、慣らしがてら城下町一周せぇへん?』
『賛成ニャ。けど、みんなきっと行きたい場所が違う気がするニャ。30分後に南門あたりに集合でどうかニャ』
 ミキニャの提案に異論があるはずもなく、時間も惜しいということで4人が一斉に席を立った。
『うわっ。ユーリごめん!』
『こっちこそ。まだ素早く動くんは難しいな』
 笑いながらバーを出ると、ミキニャは市場のほうへと走っていった。
『おまえらはどこ行く?』
 コマが振り返る。
『俺は、とにかく城下町をぐるって見て回りたいかな』
 記憶にある町がどうなっているか知りたい。
『俺、Ⅰのイベントあったとこ見てきたいんだ。あとで情報交換OK?』
『もちろん! ユーリは?』
『ほな、俺は武器屋とか道具屋回ってみるわ』
 自然な意思疎通のなかに、コマもすんなり入ってきていて、コミュニケーション強者ってこうなんだよなぁなんてしみじみ思ってしまった。
 Ⅱが発売になればいくらでも楽しめるのは分かっているが、この最初のテストですら少しも逃したくないのだ。

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