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最後の思い出
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『俺もっ……ユーリが好き、です』
今の「カナタ」が告白を断れるはずなんかない。
だって、ユーリがカナタに触れる温度を知っている。
侑利が翼に触れる温度も知っている。
笑い声の響きも、優しい声も、それから、会いたくて仕方ない気持ちも。
触れられない腕が、カナタを包み込む。
『ごっつ、うれしい……おおきに、カナタ』
掠れたユーリの声に、翼の胸まで苦しくなった。
『俺も、うれしい。ユーリありがとう』
ダメだ。ゴーグルの中で涙が……視界が曇ってしまう。
あの日の約束だったら成就しなかった告白。
『カナタ、アンスターチェ山脈行かん?』
あのあと、一緒に行こうと思ってた。少し花を啜りながらのユーリに、もちろんとこちらも鼻声で返す。
城の泉から移動して、アンスターチェ山脈からの景色を並んで見つめる。夕日に染まる山々を眺め、言葉を交わさないまま、また泉に戻る。
行き先はなぜか分かってしまった。
ヨキ島の夜明けの灯台。
ギリギリの状態で、最後の時間を一緒に過ごした場所だ。
どちらからともなく、あの日と同じ場所に並んで座った。
『ホントのホントにサ終なんだよね』
人生まるまる一個分くらいが詰まったARK LEGENDが本当になくなってしまう。
『カナタは今もこっちのほうがえぇって思う?』
静かなユーリの声に、ゆっくりと首を振った。
『ゲームの世界は今も好きだよ。でも、今は現実の自分でもいいのかもって思ってもいいのかなって、思ってるような……』
『変な日本語になっとるよ?』
『うん。なんか上手く言葉にできないんだけど、俺はユーリがいる世界にいたいから』
ゲームの中のユーリとカナタが見つめ合っている。だけど、それはなぜか客観的なものとして、冷静に見ていられた。
『だから、もしユーリに嫌われても、俺はユーリがいてるほうの世界がいいな』
いつ呆れられてもしょうがないけど、それでも翼として前に進めるようになった世界が、今はちょっと好きになっている。
『ほな、俺が翼のこと嫌いにならへんかったら、ずっと一緒におる?』
――翼。
カナタは今日で消えてしまうから。ユーリと過ごすのはもう翼しかいない。
ユーリとずっと一緒?
そんなこと、あり得るはずがない。
ないないない。ここで勘違いしたら痛いヤツじゃないか。しかも、未来の自分が大ダメージを受けることになる。高望みなんかしちゃダメだって。
『や、そんな夢みたいなことあるはずないし。さすがに現実ともなると、そんなバカなこと思わないですよ。そもそも、なんの取り柄もない平凡なサラリーマンかっこコミュ障陰キャですよ? そのうち絶対に……』
そのうち絶対?
ユーリと離れて……。
そんなの嫌だ。
言葉がでなくなったところで、カナタの視界が暗くなった。
ユーリが言っていた「エラーが起きるかも知れない」のエラーだろうか。それはすぐに違うと分かった。
『ゆ、ユーリ……』
戦士の大きな身体がカナタに覆い被さっている。もちろん、重さも温度もなにも感じないし、カナタが動けばそれは簡単に離れられてしまう。
『翼はそれでもえぇの?』
離れても、ひとりになっても。
だって仕方ない。翼なんかがいくら嫌だと思っても、そんなの――。
『ゃ……やだよぉ……』
ユーリがいなくなるなんて。
『ユーリがいないのは嫌だ。一緒にいたい』
一生懸命まわした腕は、あるはずのユーリをすり抜けてしまう。
『けど、うまくできないんだよ。嫌いにならないで欲しいけど、俺なんかそもそも好きになってくれてるのがおかしいって思うし』
連絡先だって明日にでもブロックされるかも知れない。されたっておかしくない。
『自信ないんだ。どうしたらいいか分かんない。でも――』
頭の中がグチャグチャだ。だけど、これが今の正真正銘偽りのない気持ちだ。
『ユーリが好き……!』
掴もうとした手がまた空を切る。
『側にいたい!』
『翼!』
カナタの身体をユーリの腕がすり抜ける。悔しそうな呻き声が小さく聞こえる。向かい合って見つめ合って、だけど伸ばした手は繋げなくて。
あのときは、ここで確かにユーリの体温を感じていたのに。
今すぐ会いたい!
『ユーリ……俺!』
ふたりの横を灯台の研究者が歩いていく。ここにいるふたりは、彼からすれば幽霊みたいなものだ。
じゃあ、どこで存在してるかなんて、考える必要もない。
『『会いたい!』』
声が重なる。
もどかしい。
『翼、今から出れる?』
『どこ行ったらいい?』
『っ駅は? 北口の! 地図あるとこ!』
『すぐ行くから・・・…待ってて』
早く行きたい。
ヘッドセットをかなぐり捨て、マンションの部屋を飛び出した。
全力疾走もすぐに疲れて足が動かなくなって、夏の日差しが翼の水分を絞り取っていく。カナタなら疲れてももっと走れるのに。今の翼の足は、意思とは別にどんどん動かなくなっていく。
早く会いたい――。
早く、早く。
「翼!」
見慣れた観光地図の前から、ユーリが走ってくる。
その腕に無我夢中で飛び込んだ。
「……ユーリ……だ。ユーリ……」
ちゃんとそこにいる。汗ばんだユーリの身体を必死に掴んだ。
「翼。俺の部屋、連れて行ってえぇ?」
抱き締められた耳元でささやかれ、必死に頷いた。
とにかく、側にいたい。もっとユーリを感じたい。
「うわっ」
身体が浮き上がった。
ユーリに抱えられてる……!
「かんにん。翼が歩くの待ってられへん!」
「……っ!!!!」
今の「カナタ」が告白を断れるはずなんかない。
だって、ユーリがカナタに触れる温度を知っている。
侑利が翼に触れる温度も知っている。
笑い声の響きも、優しい声も、それから、会いたくて仕方ない気持ちも。
触れられない腕が、カナタを包み込む。
『ごっつ、うれしい……おおきに、カナタ』
掠れたユーリの声に、翼の胸まで苦しくなった。
『俺も、うれしい。ユーリありがとう』
ダメだ。ゴーグルの中で涙が……視界が曇ってしまう。
あの日の約束だったら成就しなかった告白。
『カナタ、アンスターチェ山脈行かん?』
あのあと、一緒に行こうと思ってた。少し花を啜りながらのユーリに、もちろんとこちらも鼻声で返す。
城の泉から移動して、アンスターチェ山脈からの景色を並んで見つめる。夕日に染まる山々を眺め、言葉を交わさないまま、また泉に戻る。
行き先はなぜか分かってしまった。
ヨキ島の夜明けの灯台。
ギリギリの状態で、最後の時間を一緒に過ごした場所だ。
どちらからともなく、あの日と同じ場所に並んで座った。
『ホントのホントにサ終なんだよね』
人生まるまる一個分くらいが詰まったARK LEGENDが本当になくなってしまう。
『カナタは今もこっちのほうがえぇって思う?』
静かなユーリの声に、ゆっくりと首を振った。
『ゲームの世界は今も好きだよ。でも、今は現実の自分でもいいのかもって思ってもいいのかなって、思ってるような……』
『変な日本語になっとるよ?』
『うん。なんか上手く言葉にできないんだけど、俺はユーリがいる世界にいたいから』
ゲームの中のユーリとカナタが見つめ合っている。だけど、それはなぜか客観的なものとして、冷静に見ていられた。
『だから、もしユーリに嫌われても、俺はユーリがいてるほうの世界がいいな』
いつ呆れられてもしょうがないけど、それでも翼として前に進めるようになった世界が、今はちょっと好きになっている。
『ほな、俺が翼のこと嫌いにならへんかったら、ずっと一緒におる?』
――翼。
カナタは今日で消えてしまうから。ユーリと過ごすのはもう翼しかいない。
ユーリとずっと一緒?
そんなこと、あり得るはずがない。
ないないない。ここで勘違いしたら痛いヤツじゃないか。しかも、未来の自分が大ダメージを受けることになる。高望みなんかしちゃダメだって。
『や、そんな夢みたいなことあるはずないし。さすがに現実ともなると、そんなバカなこと思わないですよ。そもそも、なんの取り柄もない平凡なサラリーマンかっこコミュ障陰キャですよ? そのうち絶対に……』
そのうち絶対?
ユーリと離れて……。
そんなの嫌だ。
言葉がでなくなったところで、カナタの視界が暗くなった。
ユーリが言っていた「エラーが起きるかも知れない」のエラーだろうか。それはすぐに違うと分かった。
『ゆ、ユーリ……』
戦士の大きな身体がカナタに覆い被さっている。もちろん、重さも温度もなにも感じないし、カナタが動けばそれは簡単に離れられてしまう。
『翼はそれでもえぇの?』
離れても、ひとりになっても。
だって仕方ない。翼なんかがいくら嫌だと思っても、そんなの――。
『ゃ……やだよぉ……』
ユーリがいなくなるなんて。
『ユーリがいないのは嫌だ。一緒にいたい』
一生懸命まわした腕は、あるはずのユーリをすり抜けてしまう。
『けど、うまくできないんだよ。嫌いにならないで欲しいけど、俺なんかそもそも好きになってくれてるのがおかしいって思うし』
連絡先だって明日にでもブロックされるかも知れない。されたっておかしくない。
『自信ないんだ。どうしたらいいか分かんない。でも――』
頭の中がグチャグチャだ。だけど、これが今の正真正銘偽りのない気持ちだ。
『ユーリが好き……!』
掴もうとした手がまた空を切る。
『側にいたい!』
『翼!』
カナタの身体をユーリの腕がすり抜ける。悔しそうな呻き声が小さく聞こえる。向かい合って見つめ合って、だけど伸ばした手は繋げなくて。
あのときは、ここで確かにユーリの体温を感じていたのに。
今すぐ会いたい!
『ユーリ……俺!』
ふたりの横を灯台の研究者が歩いていく。ここにいるふたりは、彼からすれば幽霊みたいなものだ。
じゃあ、どこで存在してるかなんて、考える必要もない。
『『会いたい!』』
声が重なる。
もどかしい。
『翼、今から出れる?』
『どこ行ったらいい?』
『っ駅は? 北口の! 地図あるとこ!』
『すぐ行くから・・・…待ってて』
早く行きたい。
ヘッドセットをかなぐり捨て、マンションの部屋を飛び出した。
全力疾走もすぐに疲れて足が動かなくなって、夏の日差しが翼の水分を絞り取っていく。カナタなら疲れてももっと走れるのに。今の翼の足は、意思とは別にどんどん動かなくなっていく。
早く会いたい――。
早く、早く。
「翼!」
見慣れた観光地図の前から、ユーリが走ってくる。
その腕に無我夢中で飛び込んだ。
「……ユーリ……だ。ユーリ……」
ちゃんとそこにいる。汗ばんだユーリの身体を必死に掴んだ。
「翼。俺の部屋、連れて行ってえぇ?」
抱き締められた耳元でささやかれ、必死に頷いた。
とにかく、側にいたい。もっとユーリを感じたい。
「うわっ」
身体が浮き上がった。
ユーリに抱えられてる……!
「かんにん。翼が歩くの待ってられへん!」
「……っ!!!!」
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