サ終直前のネトゲで推しに急接近されましたが、現実の自分がクソダサ陰キャのため最後の思い出だけ作って逃げようと思います

二一

文字の大きさ
68 / 72
最後の思い出

7

しおりを挟む
 5分ほどで到着したマンションは、翼のマンションとよく似た雰囲気で、狭いエレベーターが何階かに到着して、外廊下の突き当りのドアが開けられて――。
「っユー……」
 扉が閉まった瞬間、ユーリの荒くなった呼吸が翼のなかに入り込んだ。
 湯気が出そうな温度が翼を押し潰している。
 汗で曇ったメガネで、ユーリがうまく見えない。
 ユーリだ。触れれば温かくて、心臓が動いていて、苦しいくらい翼を抱き締めている。アーレジェのなかのユーリとカナタはお似合いだったけど、こんな風に触れ合うことなんかできなかった。
「翼、堪忍……なんも聞かんとキスした」
 汗が少し冷えてきたころ、やっと少しだけ離れた唇からユーリの掠れた声がする。
「けど、足りへん。もっとキスしたいんや」
 翼の後頭部は壁にくっついていて、その顔を覆うようにユーリの顔がある。熱っぽい視線から目が離せない。
「翼の服、脱がせたいし、ぜんぶ触りたい。それで……」
 ユーリの髪が翼の頬を撫でる。耳元に生温い息がかかった。
 ――抱きたい。
 全身の血流が一気に頭まで登ってくる。
 こんなシチュエーション、翼の人生にはないはずだったのに。
 想像するだけで恥ずかしいし、想像したくせにどうしていいか分からない。
 ただ、離れたくないことだけは確かだ。
「……お、俺、こういうのしたことなくて、どうしたらいいか……でも」
 嫌じゃない。消えそうにな声を必死に絞り出した。
「俺、脳ミソ沸騰しそうや」
 顔を覆って天を仰いだユーリが、また翼をヒョイと抱き上げた。
「え、ちょ……自分で」
 歩ける。そんな主張も完全に無視され、部屋の奥へと連れて行かれる。
 翼の部屋よりは少し広いくらいのワンルームだ。殺風景な翼の部屋と違って、壁に沿って並べられた棚には、たくさんのフィギュアやゲームソフトが並んでいる。
 そっと降ろされたお尻が柔らかい。
 べ、ベッドだ――!
 翼はユーリのベッドに座っていて、目の前にはユーリがいて。
「ホンマにえぇ?」
 熱っぽく見つめられて、ごくりと唾を飲み込んだ。
 そう、ここからなにをするかなんて、さすがの翼だって分かっている。精一杯の勇気で、コクリと大きく頷いてみせた。
 背中がシーツに押しつけられている。推しの顔がすぐ目の前に迫っていて、というか翼を押し倒していて、こんなの脳内の処理が追いつかない。
 あ、キスだ。
 ユーリのアップが目の前いっぱいになった。さっきよりも、ついばむみたいなかわいいキスが降っていくる。
 それから、腹のあたりに温かな……ユーリの手がTシャツのなかに入り込んでいた。体温の高いユーリの手が、汗に冷えた翼の肌を撫でている。
 どうしよう。むちゃくちゃ気持ちいい。
 あのときみたいだ。トラブルで取り残されたアーレジェの世界の、夜明けの灯台。あの感触は偽物だと分かってはいるけど、これじゃまるであの日の際限だ。
 心地良くてぼんやりしているうちに、気づけば上半身が空気に触れている。
「壊れたらあかんし、外しとくな」
 そっとメガネが外されて、一気に視界がぼやけてしまう。けど、きっとぼやけてるくらいがちょうどいいんだ。
 どんどん服が脱がされていって、不安になりそうになるたび、ユーリが優しいキスを繰り返す。恥ずかしくて目が開けられなくなって、そのとき背中がフッと抱き寄せられた。
 いつのまにか、翼を隠していた布はなにもなくなっていて、全裸でユーリの膝に座らされている。
 やっぱりあの日と同じ……きっと、わざとだ。ユーリはあの日をなぞっている。
 それに、いつのまに脱いだのか、ユーリの服も床に放り投げられていた。目の前に、鍛えられた胸板がある。記憶にあるアーレジェのユーリにあった傷痕はもちろんない。
 けど、こんなの――。
「……鼻血でそう……」
 推しのヌードが目の前にあるなんて、どうかしてる。
 ユーリがちょっと笑った。
「翼も触って?」
 かわいらしくお願いされ、硬直した翼の手がユーリの肌へと誘導された。
 うわぁ!
 柔らかいし、スベスベだし、こんなのヤバいしかないじゃん。
 熱くなった顔を見られないように俯いて、ユーリの隆起した筋肉をなぞる。
 そのうちに、ユーリの大きな手のひらがまた翼を撫で始めた。
「翼、細すぎやで? もっと食べな……こんなん、壊してしまいそうや」
「耳元でしゃべるのナシで……ちゃんと食べてるし」
 ゾワゾワとしたことを悟られないよう、一生懸命いつもどおりにしゃべろうとがんばった。
「抱っこしても、ごっつ軽かった。俺の半分くらいしかなさそうやん」
「半分はさすがにないって」
 温かい手のひらに腰を掴まれて、思わずおかしな声が出そうになる。
「ホンマ? 今、何キロ?」
「去年の健康診断ときで、46キロだったと思う」
 自宅に体重計なんかないから、そこからこっちは分からない。ユーリが笑った。
「ちょうど俺の半分やん。ほら、こうやったらスッポリ入るし」
 背中から抱き寄せられ、心臓がまた跳ね上がる。このまま死んじゃいそうだ。
「かわいい……翼、かわいい」
 ささやきながら、ユーリがなんどもキスをする。なんか、もうキスのほうが恥ずかしくないような気になってくるから、翼もきっとおかしくなっている。
「……っひゃ……」
 翼を撫でていたユーリの手が、下腹部へと届く。そこにはすでに、熱をもった塊が主張していて、とういうか、これだけ密着しているから、きっともうバレバレだったはずで……。
 軽く握り込まれただけで、小さな湿り気の音が聞こえてて。
「それ……恥ずかしい……」
「恥ずかしないよ? こんななってくれててうれしい」
 明らかに翼より立派なユーリのも一緒にくっついて、くちゅくちゅと音が大きくなっていく。
「ゃ、ぁ……」
 自分で触るのとは比べものにならない感覚に、腰が抜けてしまいそうだ。
 ユーリの唇が重なる。一気に刺激が強くなった。
「んっっ……んん!」
 熱の塊が体内から飛び出して、その衝撃に身体が震える。
 抱き締められ、なんどもキスをされて、なにも考えられなくなっていた。
「翼? 大丈夫?」
 ユーリの声が優しい。
 優しいけど、これから自分がどうなるか分からなくて少しだけ怖い。怖くて、翼は自分を抱き締めるユーリに力いっぱいしがみついた。
「ユーリぃ……気持ちくて怖い……」
 だから手加減して欲しい。そんなつもりでお願いしたのに、なぜかユーリの動きがピタリと止まる。
「ユーリ?」
「……反則やって、ソレ……無自覚で煽るのあかん……」
「え……? あ……」
 ギュッとなった下腹部で、翼のものじゃないアレが固くなっている。
 なんで?
 少し離れようとしたところを、すかさずベッドに押し倒されてしまう。
「めっちゃ、我慢しとんのに……なんで、そんなかわいいこと言うん?」
 抑えきかんようになる。
 つぶやいたユーリが翼をうつぶさに転がして、背中に覆い被さった。腰のあたりに枕が押し込まれ、翼は尻だけをヒョコッと上げた間抜けな姿勢になっている。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛

中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。 誰の心にも触れたくない。 無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。 その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。 明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、 偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。 無機質な顔の奥に隠れていたのは、 誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。 気づいてしまったから、もう目を逸らせない。 知りたくなったから、もう引き返せない。 すれ違いと無関心、 優しさと孤独、 微かな笑顔と、隠された心。 これは、 触れれば壊れそうな彼に、 それでも手を伸ばしてしまった、 不器用な男たちの恋のはなし。

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」 身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。 死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。 カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。 「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」 献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。 これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(2024.10.21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間 ファンタジーしてます。 攻めが出てくるのは中盤から。 結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。 表紙絵 ⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101) 挿絵『0 琥』 ⇨からさね 様 X (@karasane03) 挿絵『34 森』 ⇨くすなし 様 X(@cuth_masi) ◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

処理中です...