Vegetables

二一

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Vegetables―スピンオフ―

あいつらの旅行 9

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 誰かに見られるかも知れないという羞恥にも関わらず、おれ自身は萎えることなく逆に下肢に熱が滾っていく。

 意図せず息が荒くなる――。

「千章――おまえ口で言ってることと身体が矛盾してる」

「……っうるさい――っ」

「ほら、どうして欲しいか言ってみろ――離すのか?」

 身体中の血液が沸騰してるみたいだ――。

 この状態で律から離れる? そんなことできるはずがない……。

「……律のほう向きたい……」

 小さく呟くと律が喉の奥で笑う。

 いい作戦だな――そう言われた瞬間、片足だけを引き付けられそのままの身体を回転させられる。

「――っああっ……」

 繋がったままの転回に全身が粟立つ。

 細かく喘ぎながら律の背に腕を回した。

「千章、おまえ今日はすげぇエロいのな」

「っ誰のせいだよっ」

「俺か?」

「他に誰がいんだよ?」

 律の肩に顔を埋めたまま文句を言ってやる。律の楽しそうに笑う振動に堪らなくなり回した腕に力を込めた。

 応えるように律の腕にも力が入り、僅かな隙間もなくなるほど肌が密着する。

「律――……」

「ん?」

「……動いてもいいか……?」

「ばか、聞くなそんなもん」

 身体の芯が有りえないほどの熱を蓄えている。このまま蒸発して消えてしまうんじゃないかってくらい――。

 目の前の律にゆっくりと唇を重ねる。そのまま律の両脇に立てた膝に力を込めた。

「ん……ふ……」

 律がするのとは全く正反対の違うぎごちない動き。体内はもっと激しい刺激を求めているのに、安定の悪い体制で思うようにできない。

 もどかしい――。

「っふ……あっ……ぁ」

 つなぎ合わされた場所から全身へと徐々に痺れが広がっていく。

 もっと、もっとだ――。

「っ律……っ……り・つ」

 無意識に口からこぼれる名前。

 不意に律の腕がおれの腰を捕まえた。

「ゃ……止めんな――」

 心地のよい痺れを中断され、不満が口をつく。ハッキリと開かない目で律を睨んだ。

「かわいいな、千章――」

 律が目を細めて口づける。息が出来ないほどのキス――ドロドロに溶けてしまいそうな……。

「ん……律……おれがしたい――」

「それ天然だな、千章――そういうのもいいけどな?」

 律がニヤリと笑った。

「泣かせたくなった」

 言い終わらないうちに背中が畳へと押し付けられる。真上に見える律の表情は獲物を前にしたケモノの様だ。視線に射抜かれ背筋がぞくりと粟立つ。

「律?……っあ――」

 掴まった膝裏を大きく押し上げられ、隠されていたはずの秘部を曝け出される。

「――っぅあっ……んっふ……ぁああっ」

 さっきまでの自分とは比べものにならないリズムで突き上げられ、迸りそうになる悲鳴を必死に堪えた。つるつると滑る畳には力をかけることができず、おれは目の前にある律の肩を思い切り掴む。

「っゃああっ……んんっ……ふぁ……それいじょ……っんぁあ――こわれ……」

 途切れそうになる意識を必死で繋ぎとめながら懇願する。どろどろになった欲望が全身に行き渡り、強く瞑った目尻から涙がこぼれ落ちた。

「っ……相変わらず煽るのがうまいな?」

 煽ってない――文句は言葉にならない。

 喘ぎ声すらまともに出せず、ただ呼吸をすることに精一杯だった。

「っ千章――」

 少し苦しげな律の声が遠くで聞こえた。

「……――――っ!!」

 ギリギリで堰き止められていた欲望が一気に解放される。叫んだつもりの俺の声は音にならず空中に霧散した。

 目の前が真っ暗になる――。



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