悪役令嬢と氷の騎士兄弟

飴爽かに

文字の大きさ
14 / 25

リリア姉様の来訪

しおりを挟む
室内のテーブルや椅子のセッティング、飲み物やスイーツの内容はどうするかなど、慌ただしく侍女たちが話している。

なにか近々会議があったかしらと考えてみても思い当たらない。

王宮の廊下を歩いていると忙しそうにしているノア殿下と鉢合わせた。
「あら、ノア殿下、何かお忙しそうね。」
「ココ、ちょうど良かった。明日の予定は何か入っているか?」

「明日?何もないですけれど。」
「よかった。実は明日急に、ミレサ王子とリリア王妃が国の資源や政治資金について相談に来るそうなのだ。」
「明日ですか?まあ、姉様はいつも急ですわよね。」
「あぁ。なにやらクォーツ帝国の近くを通る予定があるから、ついでに寄ることにしたそうだ。」

天真爛漫でわがままな姉らしい。

「明日出来ればココも出席してくれないか?」
「もちろんいいですわよ。姉様の来る理由も半分は私の顔を見たいからなのでしょうし。」
「よかった。クォーツ帝国からの資源の輸入などの話もするから兄さんも立ち会うのだが、最近は身体が特に弱っているようでな、私も来るように言われているんだ。」
「そうなのですね。」

概要を説明し終わったあと、困ったように視線を揺らす。
「しまったな。明日は、レイアを城に呼んでしまっているんだ。」
その言葉を聞いてバッと彼の瞳を見つめる。

「レイアを呼んでいるんですか?」
「あ、あぁそうなんだ。でもこうなったらレイアには予定をキャンセルしてもらうしかないな。」
もう既に私の公認の仲とは言え、気まずそうに彼は言う。

「いいのではないですか?」
「え?」
「姉様の話もずっと立ち会っていないと行けない訳では無いでしょうし、レイアには他の部屋で待ってもらっていてはどうでしょう?」

チャンスが舞い降りてきた。レイアと話す時間を作れるかもしれない。
「レイアだって普段はなにか街での仕事があるのでしょう?2人の時間を作ることは簡単ではないはずよ。」

押しが強い私にノア殿下がたじろぐ。
そう彼は私が怒った時も言い返さない程押しに弱いのだ。

「そ、そうだろうか…」
「そうですわ。それに、城に来るだけで景色やスイーツで彼女を楽しませることができますわよ。」
「…それもそうだな。せっかくのスイーツを無駄にしてしまうのも心苦しいし…」

折れてきたノア殿下にこくこくと頷いてみせる。
「レイアだって、ノア殿下が忙しい間を縫って時間を作って下さってること分かっているはずよ。…お呼びなさったら喜ぶはずよ。」
そう言うと、ノア殿下は少し考えてから頷いた。

ユアン殿下も会議に出るということは、ロシェルもついて出るはずだ。
ということはその間に私が会議を抜け出たら、誰にも邪魔されずにレイアと2人きりで腹を探り合う話ができる。

明日が運命の分かれ目。
大丈夫。絶対に全部うまく成功させてみせる。

当日、ドレスの着替えを済ませると、早くに城についた姉様が私だけに先に挨拶に来た。

「ココ、ご機嫌よう。夜会ぶりね。元気にしてた?」
「ええ。元気でしたわ。」
「そうだ、これをあげようと思っていたの。」

そう言って彼女が手渡してきた物を受け取る。
手の中には、蝶の繊細なモチーフのついた水晶でできたイヤリングだった。

「イヤリングですか?」
「そうよ。水晶の飾りのものってこの国にいたらたくさん増えるけど、私は重くて好きじゃないのよね。」
「そうなんですね。…」
太陽にかざすと光を反射してキラキラと光る。

「あら、ココ今ちょうどイヤリングしていないじゃない。会談に付けていったら?」
「最近は、付けていないんですの。ノア殿下が派手なのがお嫌いらしくって。」
もう婚約解除するのだから、彼の好みは気にしなくてもいいはずなのだが、彼のそう言う意思はなんとなく聞いておいてあげたい気持ちがある。

「そうなの?へー、あなたそういうの律儀に聞いて気にしてあげるところ昔から変わらないわよね。」
「え?」
「というか、ノア殿下って意外とそういう所あるわよね。派手なのが嫌いって、ユアン殿下と真逆の性格してるわね。」
そう感心したようにリリアが言う。
ユアン殿下と真逆ならば、そのユアン殿下の気に入らないところがあるリリアにとって、ノア殿下は息が合うのでは無いかと思った。

夜会で少し口に出していたことを詳しく聞きたいと思ったが、それは次の機会にしよう。
今はそれどころじゃない。

「ねえ姉様、お願いがあるの。」
「あら、なあに?」
「会談の間、途中で私に席をはずすような提案をしてくれないかしら。」
「…どうして?」

私はノア殿下と婚約解除を本格的に予定していること、新しく婚約者になるかもしれないレイアが今日城に来るから、話す時間を作りたいということを簡潔に伝えた。

「なるほどね。いいわよ。やっぱりあなたしっかりしてるわよね。そしてこの国が誰よりも好きよね。」
「ありがとう。…そうかしら?」
「そうよ。普通なら、婚約解除するのだから、相手のことも国のこともどうでもよくなるわよ。」

「…普通なら、そうなのかしら。」
でもキラキラ輝くこの国は私の大好きな物語の場所だから。

「席を外せるようにしてあげるから、後でどうなったか教えてね。」
すごく面白そう。そう呟いた彼女は確実に私の修羅場をエンタメとしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『嫌われ令嬢ですが、最終的に溺愛される予定です』

由香
恋愛
貴族令嬢エマは、自分が周囲から嫌われていると信じて疑わなかった。 婚約者である侯爵令息レオンからも距離を取られ、冷たい視線を向けられている――そう思っていたのに。 ある日、思いがけず聞いてしまった彼の本音。 「君を嫌ったことなど、一度もない」 それは誤解とすれ違いが重なっただけの、両片思いだった。 勘違いから始まる、甘くて優しい溺愛恋物語。

転生賢妻は最高のスパダリ辺境伯の愛を独占し、やがて王国を救う〜現代知識で悪女と王都の陰謀を打ち砕く溺愛新婚記〜

紅葉山参
恋愛
ブラック企業から辺境伯夫人アナスタシアとして転生した私は、愛する完璧な夫マクナル様と溺愛の新婚生活を送っていた。私は前世の「合理的常識」と「科学知識」を駆使し、元公爵令嬢ローナのあらゆる悪意を打ち破り、彼女を辺境の落ちぶれた貴族の元へ追放した。 第一の試練を乗り越えた辺境伯領は、私の導入した投資戦略とシンプルな経営手法により、瞬く間に王国一の経済力を確立する。この成功は、王都の中央貴族、特に王弟公爵とその腹心である奸猾な財務大臣の強烈な嫉妬と警戒を引き寄せる。彼らは、辺境伯領の富を「危険な独立勢力」と見なし、マクナル様を王都へ召喚し、アナスタシアを孤立させる第二の試練を仕掛けてきた。 夫が不在となる中、アナスタシアは辺境領の全ての重責を一人で背負うことになる。王都からの横暴な監査団の干渉、領地の資源を狙う裏切り者、そして辺境ならではの飢饉と疫病の発生。アナスタシアは「現代のインフラ技術」と「危機管理広報」を駆使し、夫の留守を完璧に守り抜くだけでなく、王都の監査団を論破し、辺境領の半独立的な経済圏を確立する。 第三の試練として、隣国との緊張が高まり、王国全体が未曽有の財政危機に瀕する。マクナル様は王国の窮地を救うため王都へ戻るが、保守派の貴族に阻まれ無力化される。この時、アナスタシアは辺境伯夫人として王都へ乗り込むことを決意する。彼女は前世の「国家予算の再建理論」や「国際金融の知識」を武器に、王国の経済再建計画を提案する。 最終的に、アナスタシアとマクナル様は、王国の腐敗した権力構造と対峙し、愛と知恵、そして辺境の強大な経済力を背景に、全ての敵対勢力を打ち砕く。王国の危機を救った二人は、辺境伯としての地位を王国の基盤として確立し、二人の愛の結晶と共に、永遠に続く溺愛と繁栄の歴史を築き上げる。 予定です……

【完結】捨てられ令嬢の冒険譚 〜婚約破棄されたので、伝説の精霊女王として生きていきます〜

きゅちゃん
恋愛
名門エルトリア公爵家レオンと婚約していた伯爵令嬢のエレナ・ローズウッドは、レオンから婚約破棄を宣言される。屈辱に震えるエレナだが、その瞬間、彼女にしか見えない精霊王アキュラが現れて...?!地味で魔法の才能にも恵まれなかったエレナが、新たな自分と恋を見つけていくうちに、大冒険に巻き込まれてしまう物語。

悪役令嬢のはずですが、年上王子が幼い頃から私を甘やかす気でいました

ria_alphapolis
恋愛
私は、悪役令嬢なのかもしれない。 王子の婚約者としては少し我儘で、周囲からは気が強いと思われている―― そんな自分に気づいた日から、私は“断罪される未来”を恐れるようになった。 婚約者である年上の王子は、今日も変わらず優しい。 けれどその優しさが、義務なのか、同情なのか、私にはわからない。 距離を取ろうとする私と、何も言わずに見守る王子。 両思いなのに、想いはすれ違っていく。 けれど彼は知っている。 五歳下の婚約者が「我儘だ」と言われていた幼い頃から、 そのすべてが可愛くて仕方なかったことを。 ――我儘でいい。 そう決めたのは、ずっと昔のことだった。 悪役令嬢だと勘違いしている少女と、 溺愛を隠し続ける年上王子の、すれ違い恋愛ファンタジー。 ※溺愛保証/王子視点あり/幼少期エピソードあり

悪役令嬢が睨んでくるので、理由を聞いてみた

ちくわ食べます
恋愛
転生したのは馴染みのない乙女ゲームの世界だった。  シナリオは分からず、登場人物もうろ覚え、タイトルなんて覚えてすらいない。 そんな世界でモブ男『トリスタン』として暮らす主人公。 恋愛至上主義な学園で大人しく、モブらしく、学園生活を送っていたはずなのに、なぜか悪役令嬢から睨まれていて。 気になったトリスタンは、悪役令嬢のセリスに理由を聞いてみることにした。

お転婆令嬢は、大好きな騎士様に本性を隠し通す

湊一桜
恋愛
侯爵令嬢クロエは、二度も婚約破棄をされた。彼女の男勝りで豪快な性格のせいである。 それに懲りたクロエは、普段は令嬢らしく振る舞い、夜には”白薔薇”という偽名のもと大暴れして、憂さ晴らしをしていた。 そんな彼女のもとに、兄が一人の騎士を連れてきた。 彼の名はルーク、別名”孤高の黒薔薇”。その冷たい振る舞いからそう呼ばれている。 だが実は、彼は女性が苦手であり、女性に話しかけられるとフリーズするため勘違いされていたのだ。 兄は、クロエとルークのこじらせっぷりに辟易し、二人に”恋愛の特訓”を持ちかける。 特訓を重ねるうちに、二人の距離は少しずつ近付いていく。だがクロエは、ルークに”好きな人”がいることを知ってしまった…… 恋愛なんてこりごりなのに、恋をしてしまったお転婆令嬢と、実は優しくて一途な騎士が、思い悩んで幸せになっていくお話です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

十年間虐げられたお針子令嬢、冷徹侯爵に狂おしいほど愛される。

er
恋愛
十年前に両親を亡くしたセレスティーナは、後見人の叔父に財産を奪われ、物置部屋で使用人同然の扱いを受けていた。義妹ミレイユのために毎日ドレスを縫わされる日々——でも彼女には『星霜の記憶』という、物の過去と未来を視る特別な力があった。隠されていた舞踏会の招待状を見つけて決死の潜入を果たすと、冷徹で美しいヴィルフォール侯爵と運命の再会! 義妹のドレスが破れて大恥、叔父も悪事を暴かれて追放されるはめに。失われた伝説の刺繍技術を復活させたセレスティーナは宮廷筆頭職人に抜擢され、「ずっと君を探していた」と侯爵に溺愛される——

処理中です...