悪役令嬢と氷の騎士兄弟

飴爽かに

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戸惑い

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熱くなった体を冷ますためにも、少し駆け足で階段を降りた。
頭の中に浮かぶのは、酷いことを言っているのに寂しそうに笑うレイアの表情だった。

「わっ!」
階段につまづいて、手すりに掴まっていた手が離れる。
スローモーションになる世界で、さっきレイアから離された手の平を見つめていた。

「おっと」
誰かに抱きとめられる。
白色の服と、その香りに期待が膨らんだのも一瞬だった。
「大丈夫ですか?ココ様。」

「…ロシェル。」
顔を上げると、ユーリアよりも完成された端正な顔があった。

「そんなに急いでなにかあったんですか?」
私はその質問には答えずに、先程までレイアに触れていた右手を見つめていた。
「手がどうかしましたか?お怪我なさいました?」
彼の手が確認するように上からそっと触れられる。
ロシェルは私が警戒していた人物だというのに、いや、警戒していたからか、優しく心配してくれるそのギャップに切なくなった。

確かに感じるその体温に、胸が苦しくなる。
やっぱり居るじゃない。
この世界にあなたの生み出した人達はこんなにも生きているじゃない。

「…ココ様?」

なのになんで、大切じゃないなんて言うの?
私にとっては宝物なのに。

「どうしましたか、ココ様」
ロシェルの手がそっと私の目から溢れた涙を拭う。
子供をあやすみたいな優しい声にその手を払うことができなかった。

ねえ私あなたに私の大好きな世界を否定されるのが1番つらいよ。
私が助けて貰ってた、夢を貰ってたそんな世界をあなたが壊そうとするのが1番苦しいよ。
どんなにこの世界に私が救われてたと思ってるの。どうして伝わっていなかったの。どうして信じてくれなかったの。


子供みたいなことを思って、子供みたいにぼろぼろ泣いた。

蹲っていきなり泣き出した私に、ロシェルは困って、指では拭いきれなくなった涙を自分のハンカチで拭ってくれた。

「どこか痛いのですか?」
「…違うの。」
喉が詰まって長く話せなくて、ううん、と首を横に振った。
ロシェルは私の横にしゃがんで、優しく背中を撫でてくれた。
その手が優しいものだから余計に涙が止まらなくなった。

しばらくぽんぽんと背中を撫でて貰っていた。
「本当にお怪我されているわけではないんですね?」
「ええ。」
「そうですか。…それなら良かった。」
その手がぽんと私の頭に乗る。
「…え?」
そう言って頭を上げると、今度は頭を優しく撫でられる。
「なんだか、ココ様が小さい頃を思い出しますね。」
記憶にないことに頭を傾げる。

「もしかしてココ様、ユーリアになにかされました?」
「ふふ…されるわけないじゃない。」
わざと少し笑わせてくれるロシェルの気遣いに胸が暖かくなる。

「そりゃそうですよね。ユーリアはいい奴ですからね。俺と違って。」
「ふふ。」
「そこは否定するところですよ。」
彼の手が確認するように、私の頬を撫でる。
「よかった。涙止まりましたね。」
そう言って頬から離れる手がなんだか名残惜しかった。

「壁打ち代わりにでもなれるならお話したいことあったら話してくださいね。」
そう言って、ロシェルは、私を部屋まで送ってくれた。
泣き腫らした目でリリアの見送りに行っても、心配されるだけだから、後で手紙を書くことした。

レイアとの話がどうだったか絶対に聞かれるのだから、内容を考えるのにも手紙がちょうどいいだろう。

ロシェルに撫でられた頬をなでながら、窓の外から城の門を出ていく馬車を見つめた。
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