悪役令嬢と氷の騎士兄弟

飴爽かに

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可愛い弟

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私は会談が終わってから数日、部屋からあまり出なかった。

私の様子を心配して何度も来てくれるユーリアに体調が悪いと嘘をついているうちに、それが本当になってベッドに寝込んでいた。

考えないといけないこと、やらないといけないこと、たくさんあるけれどともかく、
「…疲れた。」

1人呟いて天井を見た。
水晶の散りばめられた部屋の天井はいつも綺麗だと思うのに、今日初めて煩わしいと思った。

痛む頭にため息をつきながら、なんとか体を起こしてテーブルに載せていたノートにペンを添える。
誰が何を考えているか、どんな行動をとろうとしているのか、ノートにまとめようと思ったけどやめた。

まだこの物語の人、キャラクター達を深く理解していないのにこんなのを書くのは、彼らをなんとなくのイメージに決めつけてしまう気がした。

コンコン。
ドアがノックされる。
「どうぞ。」
「お体は大丈夫ですか?ココ様。」

そう言って入ってきたのはロシェルだった。
窓から入ってくる日差しが白銀の髪色に反射する。

「…綺麗ね。」
「え?」
頭痛でぼんやりとする頭で、思ったことがそのまま口から流れ出ていく。

「いや、髪が綺麗だなと思ったの。…あなたって思ってたよりずっと優しくて綺麗な人よね。」
「え?ちょっ、ココ様?」
「この間、私が泣いてた時もずっとそばにいてくれたものね…」

私が自分でも何を言っているか分からないくらいぼんやり話していると、ロシェルが慌てた様子で後ろを振り返った。
私もロシェルと同じように扉の方を見てみる。
そこには、

「ユーリア…」
立ちすくんで、ロシェルと私を見ているユーリアがいた。

「ユーリアも来てくれてたのね。」
「ココ様、泣いていたってなんのことですか?…私の知らないところで兄とそんなに親密になることがあったのですか?」
「…?」

ショックを受けたというような、裏切られたというようなそんな表情を浮かべていた。
今のぼんやりとした頭ではそれがなぜなのか理解できなくて、首を傾けて答えを問うように、ロシェルの顔を見あげた。

ロシェルは困ったように髪をかきあげる。
1度私を見たあと、ユーリアに向き直る。

「ユーリア、それは…」
「兄さんには聞いていません。」
「…ユーリア。どなたの前の会話だと思ってんだ。」

ロシェルがそう言うと、むっとした表情になったユーリアが踵を返して部屋を出て行った。
その反応が可愛くて、思わず笑みが零れてしまった。

「末っ子、可愛いわね。」
あははと笑いながらそう言うと、ロシェルがため息をついた。

「未熟者ですけどね。」
そう言いながらお見舞いに持ってきた花を花瓶に生けてくれる。

「でも可愛がってるんでしょう?」
「それは…そうですね。」

なにかを思い出すように遠くを見つめたロシェルが言う。
「そういえば、ノア殿下も2番目の弟だからか、ユーリアと似ているところがありますよね。」
「…そうかしら。」

「そうですよ。」
そんなロシェルの声を聞いているとまた眠たくなってくる。
ぱたんとベッドに仰向けに倒れる。

「…おやすみ、ロシェル。」
「ふふ、はい。よく休んでください。いい夢を。」

遠くなっていく意識の中で、ロシェルがシーツを掛けてくれる姿が見えた。



次に目覚めた時はもう夕方だった。
「…よく寝た。」

のそのそベッドから起き上がって、窓を開ける。
最近部屋にこもっていて、外も見ていなかったなと思った。

テーブルの上には、白紙の便箋と、水晶の飾りのついたペンが置いてある。
私が侍女のエリスに持ってきて欲しいと頼んだものだった。

「そろそろ書かないといけないのよねぇ。」
姉のリリアに書く手紙だ。
レイアとどんな話をしたか事後報告しなくてはならない。
でも、本当のことを書く訳には行かないから、さすがに誤魔化して書くしかない。

うんうん唸りながら結局、レイアは優しくて可愛い子で、仲良くなったというような旨の話を書いた。

テーブルの隅に置かれていた2通の封筒に気がついた。
私への宛名が書いてある。

「なにかしら。」
1通は、水晶が散りばめられた高価そうな綺麗な封筒で、もうひとつは、真っ白でなんの飾りもない封筒だ。

高価そうな封筒から開いてみた。
「あ、写真できたのね。」
中から出てきたのは、クリスフォード兄弟を撮ったパンフレットの表紙用の写真だった。

神々しく綺麗な写真が出来ている。
「いいわね。」
これで表紙を見て手に取ってくれる人は多くなるだろう。

もう一通を手に取る。
表には私への宛名。裏には、誰がこの手紙を出したのかが書かれている。
裏に書いてある名前を読んで、思わずその手紙を取り落とした。

「レイア・フローレンス」
そこには彼女の名前が書かれていた。
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